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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【17話】 贖罪

式典が終了し、ルーダ・コートのギルドに戻ったリリア。ギルド・ルーダの風には体験入ギルドで一緒だった、ニャン子とピョン子が加わっていた。例のギルドはガチ過ぎて二人には合わなかったらしくウロウロしていたところ、このギルドに雇われたらしい。二人はサービス業には天才的に力を発揮するので、コトロにしたら酒場経営に最高だ。コトロがリュート演奏し、二人が「ニャン」「ピョン」を連発しながらお酒を振舞う。盛況で結構だが、見方によってはリュートよりニャンピョンが人気を博している。


それはともかく…

リリアは帰って早々コトロと大喧嘩になったのだ。

遺跡探検に出たかったリリアだが、リリアがいない間にコトロが勝手にリリアを派兵に登録していたのだ。勝手に登録したことと、自分達はいかない事を問い詰めたら、自分達は酒場の方が稼ぎになり、リリアが派兵にいくことでリリアもかなりお金が出る上に国の戦争に参加することでギルドの点数になるというのだ。

かって過ぎると腹が立っている時にニャンとピョンが

「リリたん、怒りっぽい時はカルシウムニャン」とか

「リリたん、平和的解決がキーピョン」とかメッチャ腹が立つコメントを吐く上、

コトロがバトルソングとか歌いだして、下手にリリアを高揚させるので、大喧嘩になったところをお客に取り押さえられたのだ。


何だかんだで派兵の件は了承したリリアだったが、とにかく大騒ぎだった。

ちなみにお客さんには「演奏より喧嘩の方が面白い、毎晩やってくれ」と好評だったらしい。



そんなわけで、派兵の日まで何日か空くので、時間調整が簡単なキャラバン護衛のバイトに出たリリアだったが…




夜空の星々の数が増えだした頃、ルーダリア王国に登録されていない小さな村の小さな宿屋の扉が開かれた。

女主人と村の顔なじみの男達が扉の方を振り返ると、髪の毛を振り乱し、男の子を背負った女が戸口に立っている。肩で息をしながら細かく震えている。赤黒くなっているのは血だろうか?

“不気味なやつだねぇ”

そう思いながら、戸口に歩みながら女主人が声をかける

「食事かい?宿かい?」

男達も酒を口に運ぶのを忘れて、異様な姿の女を見ている。女はちょっと顔を上げ、何かうめき声のような声を出したが、何を言ったのか全然聞こえない。

“なんだいこいつ、浮浪者か?気狂いか?”そう思いながら用心深く女に近づいてもう一度声をかけた。

「食事か宿か知らないが、金持っているなら、中へはいっといでよ」

「…かい… あ…すか?…」女は男の子を背負いながら何か呟いた。女主人はちょっと女の顔をのぞき込んだ。

「む…に教…い …りますか?…」擦れた声で女は言うと、少し顔を上げた。

髪が乱れていてわからないが、狂人の目ではないようだ、鋭く力強い目。

「教会かね?村に教会かね?」女主人は大声で聞き返す。女は黙ったままコクコクと頷いた。

「あるけどこんな時間に教会はやってないよ、泊まるならウチが宿屋だ」と言いながら女を眺めて…

よく見ると女は左肩をかなり深く切り下げられていて、大量の血が流れて黒く固まっている。全身擦り傷だらけだ。そして負ぶっている男の子は…


女主人は一瞬驚いた表情をしたが、直ぐに優しく言葉を投げかけた。

「教会と言えるほど大きくはないがここを出て進むと、鎮魂できるファーザーがいるよ。案内してあげるけど、その前にここで汚れを落として、何か飲んでおいきよ」

女は黙ったまま小さく頭を振った。

「… わかった案内するから、終わったらここに戻ってきたら泊まれるよ。少しなら薬草もある」そう言うとお客にお店を任せて、女の先に立って宿を出ていった。



小さな教会というより家に祭壇があるといった場所。案内されなかったら外からは気がつかなかったかもしれない。小さな祭壇の上で、キャンドルの温かい炎に包まれて男の子は清められ、手を組んで眠りについている。とても顔は安らかに赤く照らされている。

厳かな鎮魂の儀式が終わったのだ、これでゾンビやアンデット化することはないだろう。



その側でテーブルに座り、出された葡萄酒にもチーズにも手を付けず、震えながら泣くリリアの姿があった。かなり長い間ファーザーはリリアの傍らでその姿を見守っていた。


「あの子は弟さんかね?」長い沈黙の後の静かな声。

「…」リリアはうつ向いて頭を振る。

「あの子のご両親は?」

「……… 盗賊に… 襲われ… ウルエの森の中で…」絞りだす様にいう。

「…お嬢さんは護衛かね?… よくウルエからここまで…」尋ねられて黙ってリリアは頷く。

「人を傷つけたのは初めてだったのかね?」リリアはこの問いかけに小さく頷く。

「……襲われて… 必死で… 気がついたら… あたし以外皆… でも、あの子は、ロイはまだ息があって… とっても明るいおしゃべりな子で…」震えながら続けるリリア。

「… とにかくあの子だけでもと思って… 背負って逃げたんですけど… まだまだあたしを追ってくるんで… 逃げても逃げても諦めないんです… 背負ったままでは上手く動けなくて…」ここまで話してリリアは震えながらしばらく沈黙した。

部屋の隅では、リリアの体を拭こうと持ってきたタオルを片手に修道女が身動ぎもせずリリアの話を聞いている。



しばらくの沈黙の後に再びリリアは声を絞りだした。どうしても話さなくはならない。

「ロイはずっと背中で、こわいよ、こわいよって… この子だけでもなんとかしたくって…でも、気がついたら… いつの間にか背中で… それが悲しくて…… でも、ファーザーあたし……」ここまで言うとリリアは一度息を切って、両手で顔をおさえながら張り詰めた声でファーザーに訴えた。

「あたしちょっと安心しちゃったんです… いざとなったらロイを置いて逃げられるって!!」

一気に言うとリリアは大声で泣きだした。

「安心しちゃったんです… あたし安心したんです」泣きながら何度も叫んでいた。


「お嬢さんの今の声、気持ちは神がお聞きになり、必ずあの子にもご両親にも伝わっておる。皆お嬢さんに感謝しておるだろう」落ち着きを取り戻したリリアにファーザーは優しく言うと祈りを捧げた。

修道女はリリアの言葉をじっと聞いているようだった。

祭壇では安らかなロイの顔がキャンドルに照らされていた。


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