表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
20/779

【10.5話】 ガウムドとメルディアと ※過去の話し※

※※お知らせ リリアのカラー画が届きました※※

いつもご愛読ありがとうございます。


リリアのカラー画が届きました^^


興味がある方は下記のリンクから

https://33307.mitemin.net/i471693/


勇者の血を継ぐ者 イラストTopページ

https://33307.mitemin.net/

リリアは父ガウムドも母メルディアも大好きだった。しかし、二人への接し方はだいぶ違っていた。リリアはメルと話をするのが大好きで、ことあるごとに背中にしがみついたり、膝に乗ったり、髪を手櫛ししてみたり、ほっぺたをつねったりもした。よく笑顔をみせた。

ガウムドに対しては違っていた。偉丈夫でめっぽう剣に優れ、村の作業も先頭に立って行うガウムド。その姿を少し離れてじっと見ているのが好きだった。リリアはガウムドに対し、淡々とした表情とじっと見つめるような眼差しで言われた事に対し、小さく頭をふって答えた。しかしガウムドがリリアを褒めると、ちょっと目じりと口元に得意そうな表情を浮かべていた。



“あいつ、あのままデカくなるのだろうか?”ガウは村の巡回をしながらリリアが男の子と遊ぶのをみていた。

リリアは最近、ガウが作ったお手製弓と矢を持っては山を走り回っているようだ。

年のわりに、弓が上手くて、子供達同士遊んでも、動きが軽快で大したものだ。

最近、同年齢の男の子よりもスラっと背が伸びてきた。ガウはそれと共にリリアの俊敏さも失われると思ったのだが、そうでもないようだ。

メルは治癒魔法が使えるが、リリアは全然魔法を使えない。一度村に来る商人に、魔力測定器で計測してもらったが、魔力はほとんど無い、将来的も覚醒は見込めないだろうとのことだった。それをメルに言うとメルは

「女の子らしい幸せな生活ができる」と安心しているようだった。

“どうやら体つきは俺に似たようだ”ガウは思う。

何度か剣をリリアに教えてみたが、ガウはあまり期待していなかった。動きはよい、飲み込みも良いようだ。女の子にしてはそこそこだが、いたって普通としか言いようがない。

勇者の血を継いでいるからといってシェリフにしたら、1年と生きられないだろう。勇者の子孫を語れるのも俺の代までだろうか。



その日、ガウが巡回をしていると、リリアが男の子に混ざってチャンバラをしていた。ガウはその様子をしばらく見ていたが、リリアの実力は全く普通だ。悪くないが、相手がちょっと大きくなるとかなわない。勝っても負けても口を結んで淡々としている。ガウは巡回を続けた。


“…?”ガウが用事を済ませて自警団の使う詰め所の前を通るとリリアが大人用の木刀を持ち出し歩いていた。体に似合わない大きな木刀を担ぎ、ツカツカと歩いていく。何か決心したときのリリア特有の表情をしていた。



ガウが次に子供達とリリアを見ると “………” ガウは足を止めた。

見ると、リリアが男の子達を全員打ちのめしている。リリアは面白くも可笑しくも無いといった表情にちょっとだけ得意そうな表情を浮かべ肩で息をしながら、子供達がひっくり返っている側で、先ほどの木刀を肩に担いで立っている。よく見ると鼻血を拭った跡が顔に筋を作っていた。



次の日ガウはリリアを呼ぶと、子供用の手造り木刀を渡して、稽古をつけてみた。

“…どうしたことだろう”

リリアは教えた通り真似て木刀を振るうのだが、どうみてもパッとしない。昨日のあれは何だったんだろうか。

「リリィ、お前昨日、ガキ共に勝ったろ」ガウが言うと、ジッとガウの顔を見上げながらコクコクと頷いて見せた。ちょっと得意げだ。

「見ててくれた?」っと言ってるようだ。

「… 昨日の木刀持って来てみろ」ガウが言うと、リリアは家に戻ってどこからか木刀を担いで戻ってきた。ちゃっかり自分でしまっていたらしい。

「よし、振ってみろ」

リリアは教わった通り木刀を振る。

「………」リリアの素振りはぱっとしない。っというより最早木刀に振り回されているといった体だ。ガウは不思議で仕方がない。昨日はシェリフの子供だって混ざっていた。どうやって勝ったのだろうか。

「打ち込んでみろ」ガウが手の木刀を前にかざす。

“よっ”といった感じでリリアは木刀を振りかぶって打ってくる。

「カコ… カコ…」全くダメだ。振っていない。持ち上げて物を重みで落としている程度。

“娘を買い被ったか”そう思うとガウはちょっとイラっとしてリリアに声を荒げた。

「どうした!そんなんじゃないだろ! もっと強く早くだ!強く連続して打て!」

リリアは打ち込みをやめて、キュっと木刀を握りなおすと、ちょっと口をとがらせて木刀の先をだらっと下げて、横に構えて見せた。

“ダメだ、基本すらできていな”っとガウが思った瞬間だった。

「パッコン!」

リリアが予想以上のスピードで打ち込んできた。ギュっと腰を返し、横殴りに腕全体で打ち込んできたのだ。ガウが驚いていると、木刀に振り回されながらもその勢いを使って、トトっとステップを踏むと、また、ギュっと大きく腰と体を返して打って来る。

「パッッコン!!」形はメチャクチャだが、剣先が早くて強い。打ってすぐ、キュッキュとステップを踏むと、一度ぐいっと上半身をひねってから素早く踏み込んで

「へい!」っと呼吸を切りながら打ち込む姿はまるで鞭がしなって飛んでくるかのようだ。

「おぉ!リリィ! そうだ、もっとやれ、打ってこい 好きに振り回してこい」

ガウがそう言うとリリアは「はっ、やっ!」と、リズムよく木刀を振りこむ。

しばらくリリアは夢中になってガウめがけて木刀を振り続けた。

リリアはメルと会話している時のような表情をしていた。

水汲みに出てきたメルはその様子を見つめていた。



その夜、リリアが寝ている傍らで、ガウがメルに言った。

「リリアは… シェリフに向いている」

メルはリリアを見ると答えた。

「どうせなら私に似てくれたら…」申し訳なさそうだった。

リリアはスウスウと寝息をたてながら寝がえりをうった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ