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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【80.5話】 侵入者リリア

「…… んん…」

リリアはそっとベッドから起き上がると、部屋の扉を静かにすり抜けて宿屋のトイレに行った。リリア達、冒険者組はベッドを並べてギュウギュウになって寝ている。


昨日、トロールを撃退したリリア達。全員廃屋で一晩をすごした。気の休まらない夜だったが、野宿よりはよっぽどまし。オフェリアも何とか調子を取り戻した。

今日は昼過ぎにはようやくまともな街に宿をとれた。街壁外には兵士が陣を敷き、街中も兵士が多い上、家の無い難民が路上で生活している。教会は難民ではちきれそうだ。

リリア達は宿を三部屋取った。それぞれの家族に各一部屋とリリア達と藁君に一部屋。教会の状態を見たら、ちょっと家族をあそこに一泊させるのは気の毒。

こんな状態で宿は高いのかと思っていが、難民化している人達は宿に泊まれる状態ではないようで、値段も中の様子も普段と変わらないようだ。



リリアがトイレを済ませて食堂を覗くと商人か旅人か人がいる。リリアと一人と目が合った。

「おい!お嬢ちゃん、この辺の人間じゃないな、どうだ一緒に」声をかけられた。

「いいわ、ちょっとお邪魔しようかしら」リリアもテーブルに着く。せっかくなので色んな人と話をしてみたい。


「そうかい、じゃお嬢ちゃんはルーダリアからここを抜けてフリートまで行くのかぃ。どうりで恰好が違うと思った」

リザードマン二人、オーガ一人、プリースト一人のパーティー。強烈肉弾戦パーティーの中に座ったリリア。リリアは発泡酒を口におしゃべりする。

「用事と旅がてらね。ボッドフォートって大変な土地でびっくりしてるわよ。ところで、皆さん冒険者なの?商人には見えないし… 傭兵か冒険者か…」リリアが質問する。

「俺達は… 何でも屋ってところだな」

「傭兵はやってねぇよ、危険で拘束時間の長いわりに儲けが大してない」

「俺達は移動しながら運び屋のような事をしてる。荷馬車なんか確実に襲われるからな、貴重な物を確実に足で運ぶんだ」


「ルーダリア来たことないの?おすすめよ。治安はここより良いし、ポート・オブ・ルーダなんて景気良くておすすめよ… あたし?… あたしも似たようなもんよ。普段は荷馬車の護衛をしながら、行く先々で出来るバイトしてるよ。ルーダリアは良い土地よ」

ルーダリアの宣伝も兼ねるトーク


何かのはずみでリリアが勇者の話しになる。

「あたしが国の勇者なのは本当よ。ギルド証?見せるけど、そこには書いてないよ。でもルーダリアの勇者リリアよ」

もし本当ならと驚かれた。リリアには斬新な反応。

ルーダリアで勇者と名乗ると、空気か、税金泥棒か、笑い者的な反応で笑い話として盛り上がる。ここでは妙に感心され、戦闘のオールラウンダーなのかと尊敬の眼差しを受けた。嬉しいが、くすぐったいような感じでトークのリズムが狂う。

後で考えたら、ボッドフォートはフリート領に入る。フリート帝国の勇者イズムに影響されているのか。



リリアが適当にトークを切り上げて、部屋に戻る。

「遅い時間まで食堂に人がいるのね」リリアは呟くが、よく考えてみたら今日は自分達が疲れ過ぎて早い時間から爆睡モードなだけ。

「ギ…」

案の定部屋は真っ暗で全員爆睡中。リリアも忍び足でベッドへ…

“バキ!”「ぅぐっ…」

目からスターダスト!暗闇で何者かに顔面を殴られた。まさかの事態、想定外。

“バッチン!”二発目が飛んできた。

「皆!大丈夫、侵入者よ、侵入者!」

慌ててドアを開けて明かりを取ろうとするリリアに後ろからもう一発。

「敵?」「侵入者?」「皆大丈夫?」

メンバーが慌てて起きて来た。爆睡中だったにしては素早い。

「早く明かりを!」「同士討ちに気を付けて!」騒ぎになる。

「助けて!あたしやられちゃう!」暗闇で殴られ続けるリリア。



明かりが点いた。ペコが指先で火を灯す。

「リリア、あなた… よく見なさいよ」

「なに… 驚いたけど… 安心した」

「大騒ぎしてぇ…」

皆からの冷静な反応。

よく見るとリリアを殴りつけているのは藁君。

「ちょっと誰なのよ、藁君に変な命令与えたの」リリアが怒る。

「私だけど… 変ねぇ、この部屋の侵入者からこの五名を守れって命令したのに」ペコが言う。

「ペコの命令が悪いのよ」鼻血を拭くリリアをアリスが手早く治癒してくれた。

「藁君が個人的にリリアに恨みでもあるんじゃない」ペコが答える。



「リリア、大騒ぎしていないで寝るわよ」すっかり落ち着いた。オフェリアが言う。

「いや、あたしじゃないでしょ。ペコでしょ」

誰のせいとかどうでもよい、皆さっさとベッドに戻る。

「あたしじゃないし、ペコ… じゃなきゃ藁君よ…」

リリアが呟くと藁君からチョップされた。

「ちょ、今の見た?見たでしょ!藁君がチョップしたよ」リリアが力説。

「リリア、いい加減にしてよ、皆疲れてるんだから…」ペコに怒られた。


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