【7.5話】 人々の生活と魔物
この大陸には文明圏を離れると色々なものがいる。大型哺乳類、昆虫、動く植物、魔物。
魔王が魔物達を率いて、人間界を滅ぼし世界征服を目論む類の考えはどうやら人間達のかってな価値観だとするのが最近の有識者間での説。
魔物を研究する学者の話では、知能や利害関係によっては協力する、主従関係が構築される可能性は否定しないが、種族を超えて目的意識を共有することは限りなく否定されている。生命に強い憎しみを持つゾンビ種や魔法の命令によって動く魔物、動物的に本能を持っていて捕食する魔物、自分たちのテリトリに入り混んできた敵とみなされた時以外は人間側から近づいて攻撃等しない限り、基本的に戦闘にならないと考えられている。
数の多い魔物はそれだけ、個体の能力は弱く、人間種が大勢で立ち向かわないとかなわない能力の魔物は個体数が限りなく少なく、ダンジョンの奥、廃城の奥などで滅多に人間と関わらない生活をしている。
天、地、水、風、火等、あらゆる物に貯められたエネルギーがあり、そのエネルギーが移動して調和を保っているとの考えで、魔物の全体の生命エネルギーがあると考えた時に、それらのエネルギーの流れの一部の構成質とされ強い個体は生まれにくく、弱い個体は数が生まれることによりエネルギーの消費と保有のバランスで世界の均衡が保たれていると信じられている。あらゆる条件の変化により、一時的にそのエネルギーが強くなったり、一部変化が起きる時期があると考えられている。
伝説の勇者の書に魔王を倒した、魔王からの世界の半分をあげる申し出を勇者が断ったと語ったとされる記述があるが、周辺に一番影響力のある、何等かの元凶を断ったといった事であり、魔王として下々の魔物に命令をしていた、あるいは崇拝を受けていたという事は無く、その個体その物に魔王としての自覚があったか、別種族からみて、その個体を自らの王だと思っていた可能性は低いと学者述べている。
当然その魔王なる物と人間の勇者間に会話が成立したとは考え難い。
現状では文明地を離れ、冒険者のように自ら危険を冒し財宝を取りに出るか、掃討目的で未開の地に入らない限りは調和の中で全てが生存していると考えられている。
したがって、現在では魔王が魔物達を率いて、人間界を侵攻するといった事は無い。
現在この大陸では個の能力は低くとも知能が高く文明を築いた人間種族が一番怖い存在とされているが、国、人種、利益、宗教、商売間の戦争のため、一般的には魔物が襲ってくるとか、魔王を倒すとか、それどころではない。
人々の脅威としては周囲の魔物より、戦争、盗賊の襲撃、人さらい、狂的精霊使い、狂魔術師団、一部の黒魔術師の人間実験等の方がよっぽど身近で切実な問題。
特に戦闘や小競り合いの後は、無念の骸から大量のゾンビ、スケルトン等が出現し、憎悪を食らう魔物のたまり場となり、周辺の町村に大きな脅威になっている。
調和学者、神学者、魔物学者等、ほとんどの学者は人間種が一番この世界の恐怖と結論付けている。




