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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【67話】 本当の所有者

「そんな訳で、ここは村の建物だから立ち退いて欲しいのよ」リリアがゴブリン・シャーマンに頼む。

リリア達三人が伐採場の建物まで来ると、ゴブリン達も出てきた。

食料をお土産に渡し、オルデロを通訳にして立ち退き交渉を開始。


ゴブリンは小柄な種族。妖精種に属するらしい。村を作って集団で生活する。

生まれてくるゴブリンは個体差が大きく、一般的には大人でも人間の15歳程度の背丈だが、十人に一人くらいの割合で筋肉質で大きな者、また三十人に一人程度の割合でシャーマンと呼ばれる、魔法や精霊を呼び出せるような能力を持つものが生まれる。また、稀だがエルフの様に知能の高い者も存在する。その他の平均的ゴブリンが特に愚鈍ではないが、教育システムの様な仕組みを持つ文化が無いので人間の価値観から見ると知力に偏見を持たれる。また、敵や侵入者と集団で戦うが、敵わないとみると潰走する傾向にあるので、卑怯な生き物という印象を持たれている。

今回、建物を占拠しているゴブリン達はこのさらに奥にあるゴブリンの集落から出てきてこの二年以上ここに集団で暮らしていたらしい。


さて、建物に案内されてリリア達はゴブリン・シャーマンと交渉中。他のゴブリン達も興味津々集まっている。

「ただで食べ物をくれるわけもないので、何かと思えば、おまえは食べ物を貰って住み家を明け渡せるか?っと言ってるぞ」オルデロが通訳する。そりゃあそうだ。

「だって、ここはもともと村の人間が建てたのよ?そもそも無条件で出ていくべきよ」

「ここ二年以上、我々がここに住んでいる。昔は人間の建物だったが今は我々の建物だ!っと言ってるぞ」

「今はね。でも、もともとここは人間の建物でしょ。返すべきよ」

「もともとの話しをするなら、ここは我々の土地なんだ!建物を今使ってるのは我々だ!っと言ってるぞ」

「土地は誰の物でもないでしょ」

「何を言うか、昔はあっちの森に流れる川から、向こう側の丘を越えた山、この森全部我ら一族が住んでいたのを、人間がやってきて我らを追い払い、道路を通したんだ。道路を通したら、旅人を襲うとからと森の奥に追われ、森に棲んでいたら、木を切るのに邪魔だと山奥に追われた!もともと我々の土地を後から人間が来て、今は人間が使っている!っと言ってるぞ」

「道路なんて100年以上前の話しでしょ、時効よ。それに土地の所有は勝手に名乗れないわよ」

「道路は100年前、建物は10年前、我らが住んでいるのは2年前、おまえに都合の良い時間だけ遡って話をするわけにはいかない。人間も勝手に住み、勝手に自分の土地と名乗っている。死体を漁り、奪ったとたん自分の物としている。おまえは10年前の所有者、100年前の所有者に返すか?死体になった者が死体にした者、それを死体に変えた者、そんな事を気にして返すか?っと…」

「言ってるんでしょ!わかったわよ…」

何だが哲学的になってきた。村の教会が最終学歴のリリアには脳味噌が脱臼しそうだ。

そしてダメを押された。

「良いか、我々は妖精類だ。神が生まれ、神が世界を創り、事柄を司った。その助けをするために我ら妖精が生まれた。人間より何千年も先に生まれたのだ。精霊界に残った者もいれば、我々のように神から森を与えられ住む者もいた。我ら神から森の所有者とされているのだ。おまえらここ千年ばかり数が増えたからってのさばりやがって。たかが100年で自分の物とか言い張るな。何が国王の命令により土地を治めに来た!だ。神より国王が偉いのか?国王は神から土地を与えられたのか?違うだろ、神から森を与えられたのは我らゴブリン族をはじめとするトロール族やスプリガン等だろう!違うのか?俺達の肌を見てみろ!緑の色、森の色。神はおまえら人間に森を所有しろとは言ってないのだ!」

すげぇ全うな理由すぎて、リリアには太刀打ちできない。オフェリアも助け船を出してあげたいが、これに勝つ理屈が無い。オルデロも何か言いたげだが同じような心境なのだろう。今思えば、武力行使がいかに単純な方法だったか…


「退去しないと、村から人間が来て、退治されるのよ」オフェリアが口を開いた。

「ちょっとぉ!オフェリア」リリアが声を上げる。力で劣るゴブリンに対してこのセリフは脅迫めいて、結局武力行使と変わらない気がして使いたくなかった。

リリアがオフェリアを見ると、“だって他に方法ある?”といった表情。

確かに…

犠牲者が出るよりはましか…

この言葉にはゴブリン達も黙り込んだ。リリアがその事前交渉に来たのだと言う事を少し理解したようだった。



ここでいったん交渉は休憩に。

「リリア、どうするの?立ち退きは無理そうよ」オフェリアが言う。

「… もう一つだけ案があるんだけど…」リリアは答えるが明らかに脱力している。

オフェリアとオルデロが顔を見合わせる。

昼食にしようと三人でその辺に座り保存食を食べようとしていたら、ゴブリン達がやってきた。

聞くと食料を貰ったし、昼ご飯を用意したからリリア達も呼んでくれるというのだ。

リリア達はゴブリン達の食事にお呼ばれ。リリア達が小屋に近づくと香辛料の良い香りがしていた。


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