【51話】 正義と性技
リリアは徒歩で国境を渡ろうとしていた。
昨晩、馬車は無事に国境を越えフリート領に入った。国境近くの村外れまで来たらリリアと数名の護衛はお金をもらって解散。荷馬車は闇の中に消えていった。取引相手には会わせないようだ、特に会う必要もないし、下手に知りたいとも思わない。
相場の4倍近いバイト料を貰ったリリア。
「リリア、腕はいい、名前と所属ギルドを覚えてくぜ」とジャックは言って去って行った。
村で一泊したリリアは朝から徒歩で国境線に向かった。
小さな村で荷馬車等の移動は全くない。旅行者、冒険者も少なくリリアがルーダリア側に戻るには一人で向かわなければいけないようだ。
正規ルートの街道に出て誰かと一緒に国境を越えたい、一人で緩衝地帯を通る気にはなれない。街道に向かうのはここからではかなり迂回のようだ。どうやらリリアが一泊した村から緩衝地帯線伝いに歩くと、小さい道だが最短距離で街道の国境監視所に出られるようだ。
村人も使う道のようだし、無謀と言う程危険ではなさそう。
リリアは草むらを進む。少しだけ道が出来ている。
緩衝地帯の柵が立てられているが、お粗末なもので簡単に乗り越えられる程度の上、所々壊れていて、シカ等は通行のフリーダムを獲得している。
緩衝地帯線だと思って歩いているリリアでさえ、私有地の牧場かなにかの柵と疑いたくなるような代物。
「あらぁ… 何だこれ…」リリアは呟きながら、水筒の水を口にする
小道を辿ってきたが、緩衝地帯の柵が大きな川に繋がっている。
見ると、川は緩やかにカーブして、柵を超えて少し川沿いに歩くと、また柵を超えてこちら側に戻れるようだが…
リリアは見回すが、橋があるようでも、渡船があるようでもない。
地図を見直すが、ピッと直線的に道が描かれているだけで、詳細がわからない。
今朝、地図を売った宿屋のオヤジの顔が思い浮かぶ…
「結構高い地図だったのに…」不満だが、地図がいい加減なんてよくあること…
「ちょっとだけなら… 柵を超えようかな…」
でも、自分はルーダリアの公認勇者、もし、緩衝地帯線破りがフリート側に見つかったら出来心では済まされない気がする。
変なところで勇者の名が邪魔をする…
リリアが思案していると丘を下って監視兵らしいのが二人やって来た。
「とりあえず、こっちに来い!」と言われて兵士達についていくリリア。
事情を話したら、「とりあえず…」だ。どこか抜けさせてくれるのだろうか?
取り方によっては「とりあえず…」とは、合理的な説明は出来ないが言う事を聞け!と受け取れる。用心に越したことはない。
丘の上に木造の小屋が並んでいる。監視所というより、仮眠所といった程度。
「あの少しの距離なら通してやる、装備して川を渡るのは大変だ」とは言っている。
小屋に立ち寄る必要あるのだろうか…
何か… 兵士達の視線… まぁ、巨乳リリアにはいつもの事…
「さぁ、入れ」
小屋に半ば押し込まれるように入る…
「 ぅ……」
中には数名、全裸の兵士と二人の女性がベッドで… 女性は嬌声を上げている…
リリアは逃げようとするが、要領よく二人に抑えられた。手慣れた確信的犯行…
「ちょ… 何すんのよ… やめなさいよ!… 兵士なんでしょ! こんな事して許されるわけ?」抵抗するリリア。
「おまえ、通して欲しいんだろ、金とは言わねぇよ… ちょっと楽しませてくれたらいいんだよ」
「こいつ、いいじゃねぇか。農民じゃねぇな、冒険者か?楽しもうぜ!」
「そいつは上玉だな!終わったらこっちの女と交換しよう」
かってな事を言いながら、リリアを押さえつけて襲う。
こんな連中こそ、遠慮なくぶっ飛ばしてやるべきだ。が、女性二人の安否もある。
暴れて抵抗するが、意外に冷静なリリア。リリア自身は弄ばれない自信はある。行為に及ぶには男も裸にならなければいけない。隙が出来るはず。
しかし、リリアさえ逃げれば良いわけではなく、加減を考えないと、大問題になりかねない。
掃討したら終わりの魔物の方がよっぽど可愛らしい。人間相手が一番恐ろしい…
「こいつ、往生際が悪いな てめぇ、大人しくしやがれ!」
リリアは首を締めあげられ、押さえつけれる。
「ベロベロにしちまえ!」誰かが言うと押さえつけられて幻想薬を口に流し込まれるが、抵抗するので、顔に浴びせられるような感じ。飲まなくてよかった…
「ようやく大人しくなったな、覚悟したか、女」
服が破れボロボロのリリア、正直男達相手に抵抗し続けるのは限界がある。
「背負った弓が痛いよ……… 本当よ、背骨が折れそう… ちゃんと通らせてくれるんでしょうねぇ。 剣?… 預かってなさいよ… 弓が痛いのよ!」リリアが言う。
少し幻想薬を飲んだのだろうか?ちょっと気分がふわつく感じだが問題無い。
女たちの嬌声が続く、反吐が出る思い。
リリアはゆっくり起き上がって、背中の弓をおろす。
ノーヘル兵士二人、全裸男四人… 女性二人を助けるには一瞬の勝負…
ノーヘルをぶちかませば、全裸達はなんとなるだろう…
リリアはゆっくり弓を握りなおすと膝立て姿勢になる。
「った! っは!」
弓でノーヘル二人をぶちのめす。弓で近接攻撃なんてあまり見ない、不意を突かれて床に伸びる男達。ローゼンさんからもらった軍で使う弓だ、頑丈で重量。もらった当時はリリアも筋力不足で扱いに戸惑った弓だ。
「お… おい…」全裸達があっけに取られている、無防備状態。勝負あったわね…
男達は全員床でのびている、当分この状態だろうが時間は無い、リリアの服もボロボロだが、支度を整えながら、女性二人に声をかける。
「大丈夫?大変だけど、ここにはいられない、とりあえず、シーツかある物を羽織って、ここを出るわよ」
ポーションを素早く一口飲むリリア、破れた服は後ででいいや…
「さっ、早く、薬もあるから、ここから離れて!」
凄い恰好の女性をとりあえず起こそうと手を差し出す。
「ちょっと、何してくれんのよ!余計なことしないでよ!」
女性達が怒鳴りだした、リリアには理解不能、パニック状態なのかな?…
「… 何って、助けに… ほら、逃げないと…」
「助ける? 誰があんたに助けをたのんだんだい!」
「余計なことして、明日からウチらどうやってここ通るんだよ」
二人共すごい剣幕でリリアに詰め寄る。
「だって… こんな… 許されるわけない…」リリアは目を白黒さている、どうなっているんだ?
「正義気取りかい?いい気なもんだね、よそ者が余計なことを」
「だって… 兵士が… 国民に… おかしい…」
「何がおかしいのさ!あんたここに毎日いて、ウチらの通行を何とかしてくれんのかい!あんたのやってる事の方がよっぽど邪魔なんだよ!」
リリアは怒鳴られ、ひっぱたかれ、突き飛ばされた。男につまずきひっくり返る。
「うぅ… ぐぅ…」男が起き上がりそうだ、時間が無い…
「か、かってにすれば!」リリアは逃げ出した。
「明日からどうしろってんだ!このバカ女!」
「おまえが1年間分体で払いな!」
リリアは罵倒されながら、小屋から離れる。
川を越えたリリア、森の中で服を着替える。リリア一人ならこんなにリスクを背負う必要は無かった。
リリアには何が何やらさっぱりだ…
勇者のお仕事となると混迷を極める。国民を守るとか意味がわからん。
まぁ、先ほどの女性はルーダリアの国民ではないのだが…
「父さん、リリアには勇者は向かないみたいよ」呟くとリリアは街道に向かって歩き出した。
森を抜けて再び草原に出る。柵にそって歩いていく、一造りの堅牢な建物が遼に見えて来た、どうやらもう少しで街道ルートに出るらしい。
見ると、リスが人間より自由に緩衝地帯を出入りしていた。




