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おとろし  作者: 青蛙
に・警告標識編
17/17

3





 彼等から噂の場所を聞き出してから、アッキーが居るだろうと思われる部室の前に着いた時、昼休みは残り20分を切っていた。


「『オカルト対策研究会』……ここ、だよね」


 まだ出来たばかりだからか教室の扉の上にあるプレートの表示は『第三多目的室』となっており、代わりに扉の窓にマジックインキで『オカルト対策研究会』とでかでかと書かれた紙が貼り付けられている。


「失礼します」


 この扉の先にアッキーがいる。

 彼に会ったら、まず謝らなきゃならない。そう考えて少し気が重くなったが、取手に手を掛けて扉を開いた。


「………あれ?」


 しかし、反応が無い。

 扉を開けたと言うのに、誰の反応も無いどころか人の気配すら感じない。


「アッキー? ……誰もいないのかな」


 部室の中は適当に並べられた椅子と机、そしてほとんど中身がない棚が並んでいるだけでがらんとしている。これと言って特別なにかある様子も無く、若干模様替えしただけの多目的室といった感想が頭に浮かぶ。


 だが、一つだけ。

 部屋の奥の窓際に置かれた机の上に、何枚かの紙が無造作に置かれているのに気がついた。近寄って見てみると、それはガリ版紙に印刷されたこの町の地図らしい。幾つかの地点に赤ペンで丸が付けられている。


「これは」


 その内の一つが、先程他クラスの彼等から聞いた場所と重なった。

 学校の裏手にある雑木林の、住宅街の方に面した細い通り。住宅街がすぐ側にあるにも関わらず、いつも人通りの少ない場所。


「まさか、もう行ってるのか?」


 そんな筈は無い。学校の裏手と行っても目的の場所までは距離がある。休み時間の間に調査に行って帰ってこられるほどの余裕は無い。

 だとしたらアッキーは何処に行ってしまったのか。


「そうだ、顧問の先生は」


 誰だったか思い出せないが、アッキーは部活動の申請をする紙にちゃんと顧問の名前も記入していた。もしかしたら、顧問の先生なら何か知っているかもしれない。

 部室の中に何か資料は無いかと戸棚や机を漁っていく。やはりまだ見た目だけ作っておいただけなのか、大抵のものは空のものばかりだ。紙やファイルが入っていても、ほとんどはまっさらなガリ版紙だったり何も入っていない空欄のファイル。


「これは違う、これも違う、これ、は……あ。あった」


 やっと目的のプリントを見つけて、記入されている名前を確認する。


「ええと、顧問『芳賀』。あれ、ウチの担任だ」


 芳賀先生はうちのクラス担任をしている。そして、先日の臨海学校の時に猟銃を持って山に入っていた先生の内の一人。


「……あれ、なんでだ?」


 そういえば、何故先生達は猟銃なんて持ってきていたんだ。なにかを知っているような素振りだったけれど、そこは聞けずじまいだった。むしろ、僕とおとろしさんの事について彼は困惑していたような様子で。


 この、学校がおかしいのか?


 確か芳賀先生と学年主任の先生は、校長がどうだとか不満を口にしていた。校長は何か知っていたのか。もしや、猿の化け物に生け贄として僕らを……いや、それならわざわざ免許も取らせて猟銃なんて持たせるわけがない。


「あぁ、いや、今は兎に角アッキーの事だ。先生に聞きに行かなきゃ」


 顧問になってくれている芳賀先生なら、アッキーの居場所について聞いているのではないか。万一居場所を知っていなくとも、流石に今やっている事ぐらいは把握しているだろう。あとはそこから居場所を予想して探しに行けば良い。

 とりあえず先ほど見つけた印の付けられた地図をスマホで撮影し、出した資料を全てもとの場所に戻して部室を出る。そして職員室に居るだろう芳賀先生の元を訪れた、のだが―――


「小寺なら今日は早退したぞ。体調悪くなったってさ」

「………え?」


 彼は、既に学校に居なかった。










 結局、流石に理由も無く早退する事も憚られ、アッキーに謝ることも出来ないままに放課後になってしまった。

 おかげでその日の授業はまるで集中出来ず、頭の中は心配な気持ちでいっぱいだった。なにしろ、彼が学校を休むなんて事が今まで無かったから、きっと余程の事があったのだろうと気が気で無かった。


 近頃の彼は父の生業の事もあって少しばかり責任を感じすぎている節がある。だからこの間の事件でも危険を省みずに森に突っ込んでいったのだろう。だから、きっと今回も彼は自ら危険に突っ込んでいくに決まっている。

 彼にはストッパーが必要なのだ。だのに彼の父親は、彼の行動を肯定するばかりで危険に飛び込むことを咎めなさすぎる。正行さんの事は尊敬しているが、全てに同意しきれない部分があるのはきっとそういう所が原因だ。


「とりあえず、話に聞いた場所に行ってみよう」


 きっと彼は学校を早退してからずっと調査に出ているはず。彼が調査したと思われるポイントや、噂で聞いたポイントに行けば彼に会えるかもしれない。


 スマートフォンを取り出して、地図アプリで目的の場所へのルートを確認しつつ、学生カバンを背負った僕は学校を飛び出した。






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