タオルがペラペラは許せない
お越しいただきありがとうございます。
なんと感想をいただきました!ありがとうございます!ロサを気に入ってくださる方がいるとしれて嬉しいです。作者として我が子達を褒めていただけることほど喜ばしいことはなく!まだまだがんばります!
食事を終えてサロンに移動するとロマンスでグレーな執事さんが箱を持ってきた。
それはこの屋敷に訪れたときにお土産としてお渡しした品である。
「若旦那様、若奥様。こちらの品をお二人からお預かり致しております。」
恭しく扱われた箱はローテーブルに置かれると嬉々とした奥様が箱に手を伸ばす。
「早速開けさせていただくわね。」
そういってかけられたリボンを解くと包装を丁寧に開いてはこの蓋を開けてでてきたのは。
「まぁまぁ。フワフワだわ。」
「こんな生地は初めて見るな……。」
「そうですね……。昨日完成したばかりの生地ですから。」
若夫婦の反応にそう答えるとひどくおどろいた顔をされる。
「昨日完成したって……。」
「はい。なのでまだ商業登録もしてないので、新技術と言えなくもないですかね。」
もちろん帰りに商業ギルドで申請する。審査自体は定期だが申請はいつでも受け付けていて、もしも内容がかぶったときは先に出したもの勝ちなのである。
実はこの世界タオルと呼ばれるのはあるが、正直あれは手ぬぐいではないかと思う。
と、言うのも自分たちがよく知るパイル生地じゃなくてペランペランの綿生地なのだ。
従って非常に吸水性が悪い。何枚あっても水分取れないし、長い髪の毛はお風呂のたびに絞ってから拭いているし、洗濯物も多い。困る!あれをタオルなんて認めない。許せん。
昔なんかのときにインターネットな先生で検索かけたことがあるので織り方は知っていた。
何でも疑問に思ったら調べるって大事だよねぇ。どこで役に立つかわからない。いやぁ、生まれ変わってから役に立つなんて。
「とても吸水性に優れていますし、赤ちゃんや子供の肌にも優しいですからぜひご使用ください。」
ってなわけで、異世界初のタオルは大分喜ばれた。なんでも春には赤ちゃんが生まれる予定なんだとか。若奥様お腹目立たないな!異世界はそれがデフォなのか!?
まったく妊婦とも思えない腹に驚愕しているとサロンの入り口が開かれて、老齢な男女が入ってきた。それに気づいたクリストファーさんとシンが立ち上がったので私もソファから飛び降りる。
老紳士はその年齢を感じさせない優雅仕草で隣のご婦人をエスコートして近くにやってきた。
「シン、久しいな。」
「お久しぶりです侯爵。引退されると聞きましたがお元気そうで何よりです。」
「なぁに、そろそろ妻とゆっくり田舎に引っ込んで生活したいと思ってな。」
クリストファーさんがあと15年もすればこうなるであろうと思われる紳士。どう見ても親子だろう。会話の内容から言っても。ということは。
「まぁ、あなた。本当は領地の馬が気になって仕方がないんでしょう?」
そういいながらグレーのドレスを品よく着こなすご婦人は紳士がエスコートする腕をつねったが、紳士にはきいていないらしい。そのまなざしが愛妻家だと語っている。
「シンからとてもいい馬車を贈ってもらったからな。あれなら領地までの移動も楽そうだ感謝するよ。」
「気に入っていただけたならよろしゅうございました。」
ちょっと余所行きなしゃべりのシンは新鮮だなぁって会話を眺めていると、ふと紳士と視線がかち合った。
「ところでシン。そちらが噂のご令嬢かな?」
噂ってなんだ。夫人じゃないから嬢なんだろうがご令嬢というほど育ちはよくないですよ。
「侯爵、婦人、彼女は転生者でロサと申します。……私の妻です。」
まだ妻じゃないよぉぉぉ!や、まだってのもなんかおかしいけどさ。入籍してないよね!?っていうかこういう場合ってどう言えばいいの?元妻っていうと不仲っぽくなるし、でも結婚してないし。
「ロサです。侯爵様、侯爵夫人様にはお初にお目にかかります。転生者ゆえにもの知らず故不調法とは存じますが、若輩者にご指導賜れれば幸いにございます。どうぞよろしくお願いします。」
思いつく限り馬鹿丁寧にしゃべって右足を引いて腰を落とす。今はスカートなので両手で裾を広げるのも忘れない。異世界テンプレなご挨拶。
「まぁまぁ、珠玉はとてもかわいらしいお方なのね。私はアデラと申します。こちらは夫のアレクサンダーですわ。息子のように思っているシンの妻なら私の娘も同然ですわ。仲良くしてくださいましね。」
そういってアデラさんは私の手を取るとそのままするりとローラさんの横にある一人座りようのソファに腰かけると、なぜかそこの膝にちょこんと乗せられてしまう。
おかしい。なぜこうなった。早業過ぎませんかアデラさん。
どうしたものかと思って、きょとんとシンとアレクサンダー侯爵、クリストファーさんを見上げると、三人は苦笑するだけで何にも言わない。
これはあれだ。長いものには巻かれておけってやつだ。知ってる。こういう時は年長の女性に逆らってはいけない。
「そういえば、ロサちゃんはたんぽぽとバロメッツの他には裁縫に使えるようなものはないの?」
ゆったりとお腹を撫でた若奥様がこれまたおっとりと申された。若奥様!ローラさん!あなたこの状況何とも思わんのですか。あ、思わないんですね、知ってました。
「そうですね……そのタオルはお隣のシルクシープの毛を使ったんですがそれはまだ取引が終わってないので……。そろそろ新しい素材が欲しいところですが。」
その会話を聞いたアデラさんはタオルを一枚手に取ってしげしげと眺める。
「まぁ、とてもふわふわだわ。これは?」
「それはシルクシープの毛で織ったパイル生地で作ったタオルです。」
「お母様、ロサちゃんが作った新しい生地なんですよ。なんせ昨日完成したばかりだとか。」
そうなのだ。お貴族様の手土産なんてなに渡したらいいかわからなくて困ったが、異世界でタオルといえば新素材の鉄板。しかし、そんな日用品を渡して失礼じゃないかと心配もしたが杞憂だったようである。
「なるほど、ではロサちゃんは縫製師なのですね。それなら新素材はぜひみつけたいところですわね。」
タオルをローテーブルに戻したアデラさんはそのままなぜか私の頭を撫でる。なぜ。
「私もそう思いますわお母様。……それなら不死蝶か花蜘蛛を探したらどうかしら?この世界の裁縫師は最初にそのどちらかを捕まえて飼育して材料を入手するの。」
「蜘蛛と蝶ですか?」
異世界生産テンプレきたぁ!
「うちのお針子さんたちも飼育してて、専用の温室があるの。そんなに凶暴ではないから扱いやすいし、与える餌で糸の色が変わるのも面白いのよ。」
なるほどそんな生き物がいるのか。
「花蜘蛛の上位種は宝石の欠片を食べてとてもきれいな糸を吐くそうですよ。まだ私もお目にかかったことはないけど。」
「お母様でも見たことがないなんてとても貴重ですね。」
貴重な素材……。
ちょっと期待を込めてシンを見上げてみれば、ポンポンと頭を撫でられる。
「そろそろ近くに冒険にいくのもいいかもね。」
おお!いよいよ冒険解禁ですか!!
昆虫はそんなに得意ではないけど蜘蛛は益虫ですからね。顔さえじぃぃぃっと見なければ大丈夫です。蝶だって実は可愛い顔してないもんね。
何回冒険者ギルドのカードを見ようとも私自身のスキルに攻撃の何かは全然ついてなかった。
かわりに調教と獣魔の愛っていうのがついてたけど。
私愛されてるわぁー。私もあの子達大好き!
思わずニコニコしてしまう。
新しい子が加わるとか楽しみすぎる。
聞けば花蜘蛛の餌はその名の通り花で、不死蝶は宝石なんだけど、クズ石のように削った後のかけらや粉でもいいらしい。それに、実は大気の魔力を体内に保持する性質があるから食事も多くは必要ないらしい。
お針子さんが温室に飼ってるってことはサンルーフを専用にしてしまおうかな。
どんな子がきてくれるか楽しみだ。
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