笑うならちゃんと笑ってほしい~シン視点~
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唐突にロサがユメを呼び出してしまった。
ギルマスの用事があるのは地竜だというのはわかっているだろうになぜバロメッツのユメなのか。
結果的に呼び出されたユメの頭の上に噂のもぐらが乗っていたので結果オーライだろう。
で、なんで呼んだのかというとどうやらギルマスの顔にある古傷を治してやりたかったらしい。それは単なる親切心で、子供に嫌われるといって笑う姿はこちらが見てても痛々しい。
だがそれは彼の言う額面通りの話ではないことを俺は知っている。
いつもクエストに誘ってくれるユリウスとガイラから聞いたことがある。まだ俺がこちらの世界に転生する前に王都がスタンピードに襲われたのだという。幸いにして発見が早く、また対応が早かったので被害にあったのは農業区だけだったらしい。
その当時の名残か、王都の発展は農業区の反対の王城区の向こう側に発展していったため農業区は年々廃れていっている。王家としてもこの流れを何とかしたいようだがうまくいっていないのが現状だ。
あの古傷はその時のスタンピードで負った傷だという。
仲間をかばった時にできた傷で、その時にパーティを組んでいた連中からは感謝するものであり、住民からは英雄の証ともいえる。そして本人にとってはスタンピードを忘れないための戒めらしい。
スタンピードは魔獣が増えすぎたときにその縄張りを広げるためにおこる現象である。しかもそれは一個の強い個体が行うのではない。まるで魔物全てが統括された軍隊の様に役割がある。それらが波のように押し寄せてくる。スタンピードによって国が滅びることだってあるほどだ。
そんな現象を英雄と呼ばれようと一人の男の手でどうにかできるものではない。
では彼は何を戒めているのか。
それは弟の死だという。
当時まだ新人だった彼の弟は王命に従い騎士として出撃していた。かの人物は四男で歳も離れていたこともあり大層可愛がっていた。「お前は四男で家の事を気にしなくていい。剣を持って戦う必要もない。好きなことをすればいい」と。
そんな弟は何を思ったか突然騎士になるといいだした。もちろん兄は反対、父すら渋った。しかしそれの後押しをしたのは家と反対勢力の貴族。実力も何もない青年を八百長、裏口入学のびっくりの試験なしで入団させた。
もちろん弟は政権争いなんてわからなかっただろう。関わらせていなかったのだから。結果、騎士団では見習いとして扱かれこき使われるのに実力はあがらない。そんな若者がスタンピードの中にあって何ができたというのか。その先は想像に難くない。
スタンピードが終幕を迎え、英雄と呼ばれた彼にもたらされたのは最愛の弟の死であった。
酒を飲んでは俺のせいだとこぼしていたことは有名な話らしい。俺もレイドの後の打ち上げで絡まれて散々聞かされた。最初は痛ましいそれも一晩聞かされればお腹いっぱいというものだ。
男にとって傷は勲章だとよく言うが、大きければ大きいほど傷というものには意味がある。とかく男はそういったものにこだわりたがる。
傷の癒えたその頬を唖然とさする男に視線を投げてやる。
(もう、いいんじゃないか?もう十分だよ。)
お前が苦しむのも、俺が聞かされるのも。
きっとそれを言われたのも俺だけではないだろう。次の時には晴れやかに笑っていた。
そうだ。笑うならちゃんと笑った方がいい。本人にとっても周りにとってもそれが健全ってもんだ。
ちょっと安堵した俺には気にも留めずユメと大地の紹介が始まり、和やかな雰囲気となっていると、不意にオルトスがこちらを見て「そういうことか?」ときいてきた。
ロサにとってペットは愛玩ではなく家族だ。だからこそ従魔は弟妹なのだ。だからオルトスの言葉に彼女は何の引っ掛かりもないのだろう。
いや、そもそも知らないのだから引っかかるはずはないのだ。
『転生者には子供ができない』
なんてこと。
隠しているわけじゃない。でもわざわざ話そうと思えないことで後ろめたく感じる。そして、あまり知られたくないと思ってしまう自分もいるのだ。
つまり、オルトスは従魔は子どもの代わりかと聞きたいのだろう。
そんなつもりはないが、まぁ、ある意味家族という枠組みという意味では同じだろう。出来ることならこのまま平和であってほしいと思わずにはいられない。
だが当の本人は後見貴族に明日会いに行くことの方が気にかかったらしい。軽く睨まれた。
やばい。話すの忘れてた。
ご覧いただきありがとうございます。
主人公たちにやらせたいこといっぱいなのに文章が追い付かない未熟さ……。もっと精進したいと思います。どうぞ気長にお付き合いくださいませ。よろしくお願いします。