笑顔ならちゃんと笑ってほしい
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早速更新日落としてしまいました。ごめんなさい。
なんとキーボードの「w」「←」「↓」キーが絶不調です。キーボード買い換えかなぁと悩んでるところです。いつも以上に誤字多めです!(たぶん)ごめんなさい!
ギルドの偉~い人に呼ばれました。なんとなく理由はわかってます。でも反省はしてません。だって知らなかったんだもん。いろいろ。
ついでに言うとあんまり怒られるようなことはないと思ってる。だって目の前のソファに座っている赤毛の髭もじゃなおじさんは笑ってる。ついでに言うとなんかニヤニヤしてる。これは怒られる気配じゃない。たぶん。
「いやぁ、やっとお目にかかれたってわけだ。なぁ?シン。」
「余計なこと言ってないで仕事してくださいギルマス。」
「何だよつれねぇなぁ。一緒にレイドやって命預けあった仲じゃなぁか。」
「変な言い方やめてくれませんかね。たった一回じゃないですか。」
「薄情な奴だなぁ。緊急呼び出しで何度か一緒に仕事してるんだぞ?」
「そうですか初めて知りました。」
シンとギルマスさんのポンポンと放たれる会話に二人の様子を伺いつつ……仲いいなこの二人。シンが笑顔で誰かに嫌味を言うこと自体珍しいものが見れたと私はちょっと楽しいが、冒険者ギルドだけで時間を取るわけにいかない。なんせこの後は白山羊の糸紬へ行かねばならない。
ご老人の一日の終わりは早いのだ。彼が就寝する前に用事をすませておきたいのだ。
と、いうわけでここはあえて話の腰を折らせてもらおう。大丈夫。下の方には折らないから水平からちょっと上向けるだけだ。
「あははは。二人とも仲良しだねぇ~。」
「おう!嬢ちゃん分かってくれるか。」
「ロサ……。」
赤毛の髭もじゃさんは朗らかに答えるがシンは何か残念なものを見る目でこっちを見返す。なぜだ。解せん。
「それじゃぁ、自己紹介と行こうか。俺はオルトスっていうんだ。一応ここのギルドでマスターと呼ばれてるが……まぁ、気安いおっちゃんだと思ってくれ。」
素早く立ち上がった赤毛は芝生の様に刈りこまれている。伸びたままの無精ひげがアンバランスにも感じたがこれがこの世界の一つのファッションなのかもしれないとあえて見ないことにした。
日に焼けた頬には一筋の傷跡。
「これが気になるか?よく子供らに泣かれるんだ。」
すでに慣れっこなのかその表情はからりとしたものだ。
「たぶんケガじゃなくて……お鬚が怖いんだと思います。初めまして、ロサです。……痛くないんですか?」
触れていいのかわからなかったが目をそらす方が失礼だと思った。
「ん~冬になると少しな。……そうか、髭の方が怖いのか……傷跡が怖いのかと思って髭を伸ばしてたんだが。」
後半は明らかに独り言だ。自分の髭を確かめるように撫でながら反対の手で傷をなぞっている。
「治せないんですか?」
「毒混じりの傷と手当てに時間がかかったせいで消えないんだ。体なら勲章だって残すんだがな。無駄に怖がらせるから申し訳ないんだが。」
顔は笑っているのにその目にはあきらめのような色が混ざっている。相手を思いやることで自分が傷つくことから目をそらしているようにも感じた。恐怖や侮蔑の目で見られて傷つかない人なんていないのに。
「慣れたからって傷つかないわけじゃないと思う。」
突然頓珍漢なことを言い出したからだろうオルトスはきょとんとした顔で首を捻った。
「ユメ、ここにきて。」
それは自然に出た言葉だった。召喚士に呼ばれた従魔は音もなく現れると主たる者の足にその額をこすりつけて来訪を知らせた。その薄紫のもこもこの毛の中には自分の場所と言わんばかりに呼ばれてもいないもぐら体形の地竜、ダイチの姿もあった。
『姉さま呼んだ?』
主にだけ聞こえる声でつぶらな瞳がロサをとらえた。
「この人ね、シンの友達なの治してあげれるかな?」
『簡単よ。任せて!』
午前は呼ばれたのに特に仕事がないまま返されてしまったが、今度は役割があるのだと嬉しくなったユメは主に褒めてもらいたい一心でいわれた通り目の前の男を癒した。褒められたい一心で。ちょっといつもより力を込めて。大盤振る舞いに。
まるで真綿で体を包まれるような、ふんわりと柔らかな感覚が一瞬だけやってくると、急に体が楽になった。常にぎしぎしときしんでいた膝の違和感がなくなり、現れた魔物を反射的に見たが敵意がないことと額の印が従魔だと知らせてくれた。
反射的に動いた体の捻りにいつもなら引きつるような皮膚の不快感がなかったことに気づいた。次いでそっと顔の傷にも手を当てたが凸凹とした感覚がない。
「せっかくの笑顔なら目も笑ってくれないと子供は怖いと思います。」
「そうか、キミのバロメッツだね?」
先ほどと違って細められた瞳の奥に陰りがない。これで良かったと内心安堵したが相手にそれを気付かせないようにすぐにユメに視線を落とした。
「うちの三番目の子です。バロメッツのユメです。」
『初めまして兄さまのお友達さん。』
ユメの言葉が聞こえるロサには伝わったが、オルトスにはメェメェ鳴いているようにしか聞こえない。
「三番目の子……。そういうことか?」
後半はシンに視線を向けていたから何か確認したかったんだろうが、ロサにとって従魔は弟妹である。家族として扱っているからそう表現したのだが何かおかしかったろうか?
もしや、この世界の召喚師はそれほど愛情を傾けないのかもしれないと思ったらちょっと悲しくなった。
自分のそのスタイルがおかしいということなのだろうか?不安になってシンを見上げればなぜか微笑まれた。でもその笑みが楽しいものではなく、彼が困惑を含んでいることを他人が気づかずとも長年連れ添っていたロサは気づいた。
優しく頭を撫でられたことから、今は追及してほしくない話題なのだと感じた。だからあえてにっこり笑ってからユメの背に乗るダイチに手を伸ばした。
ギルマスの言ってることがわかりませんと言わんばかりに……実際その言葉の真意がわからなかったわけだが……。
「それから、こっちの子が四番目で地竜のダイチです。」
その言葉にオルトスは明らかに反応して視線をこちらに向けた。
「マジか!うわぁ~地竜の幼体とか初めて見た。こりゃもぐらにしか見えねぁな。」
そう言いつつも決して手を出さないあたりはさすがベテラン冒険者である。
『もぐらとは失礼な!人間は勉強が足らんぞ!』
明らかにキューキューと憤慨と言わんばかりに鳴きだしたのでちょっとオルトスは身をのけぞらせる。
「なんて言ってるんだ?」
「人間は勉強が足りないって。」
笑いを含みながら言うと、シンもオルトスも「違いない」と笑った。
「よし、俺の確認はできたから問題ない。あとは二人の後見侯爵家からサインもらって王城に出してもらえばいい。侯爵にはこちらから出しておくか?」
後見侯爵家とはなんぞ?
よくわからなくて再びシンを見上げる。
「明日会う予定だから俺が持っていくよ。ありがとう。」
書類を受け取ったシンはそれをマジックバックへと入れた。
明日会うなんて聞いてませんよぉ~。
ちょっとジト目で見上げたものの、当人はどこ吹く風で「じゃ、いこうか。」と促して、オルトスには片手で合図を送るとそのまま階下を目指してしまった。
私ろくに挨拶してませんけどぉぉお!?
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