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夫婦仲良く異世界転生したので生産を楽しみます  作者: 牧野りせ
転生したら旦那に囲われました
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人混みの先に~シン視点~

お越しいただきありがとうございます。


誤字報告誠にありがとうございます!毎度毎度申し訳ないです。ぜひウォー〇ーを探せ感覚で指摘していただけるとありがたいです!(ヲイ)



 馬車の納品を終えて、程よく新作の宣伝にもなったところで上機嫌でロサの待つ生産ギルトに急いで戻る。もう時間は昼のてっぺんを過ぎているから先に食べているかもしれない。


 そんなことを思いながら戻ると、ギルドの正面玄関は人でごった返していて、入る人と出る人で波の様に寄せては返している。これは中に入るのは骨が折れそうだ。


 大人しく列に並んでみたが待てど暮らせど先へは進まず、様子を見れば並べば順番に入れるというわけでもなさそうなので諦めて隠密スキルを発動させて人波を掻き分ければ、意外と出入口に近い壁際にロサを発見し、近づこうにも人に押しつぶされてなかなか進めない。スキルを発動しているせいでこちらに気づく気配もない。


 すぐ目の前にいるのに近づけなくて焦れていると見知らぬ男がロサに話しかけている。彼女の様子からも知人の類ではなさそうだ。


 そもそもほぼ家で過ごしていたロサが知人などできようはずもない。そうなるように仕組んだのは他ならない俺自身なのだから。


 余計なものが近づけないようにしていたというのに、ここにきて俺以外の男が視界に入るなんて許せるはずもなく、殺気を込めてその男を観察すれば、男は早々に立ち去って行く。


 なりふり構っているほどの余裕がなくて、多少離れていても手を伸ばしてロサの腕を掴む。


 「ロサ!」


 今すぐにでも抱き寄せたいのに人の波がそうはさせてはくれなくて、何とか近くまで引き寄せればキョトンとしたロサがこちらを見上げてくる。


 そうだ。べつにロサがさっきの男に特別な視線を向けていたわけじゃない。むしろ彼女の態度をおもえばちょっと不審人物に対する警戒すらあった。


 それなのになんと狭量なことだろう。


 (男の嫉妬ってみっともないよな……。)


 数刻前まで共にいたはずの気の置けない友人たちとのやり取りを思い出す。恥ずかしさと焦りで挙動不審になりながらなんとかロサの言葉に返事をする。


 とにかくその場を誤魔化すように個室で食事のできそうなところを思い浮かべる。もちろん他の奴に取られないように抱き上げるのを忘れてはいけない。


 ドレスコードの無いような店で気軽に個室を使えるところなんてわかるのは一軒しかなくて、空いているかどうかを置いてとりあえずそちらに足を向ける。


 ちょうど昼時ともあって賑わいを見せる食堂というにはこじゃれていて、貴族向けのレストランというには気安いその店は王都の商業区本通りから一本入った場所で知る人ぞ知る名店って話だが俺は普通に人気の名店だと思ってる。


 冒険者と思しき男性が出て行ったのを見届けて店の中に足を入れると見知った店員がこちらに寄ってくる。


 「いらっしゃいませぇ~お二人様ですか?」


 「ああ。上の部屋空いてるかな?」


 「一番狭いお部屋ならご案内できますよ~それ以外となるとお待ちいただきますけど……。」


 「いや。それでかまわない。」


 「二名様ご案内で~す。」


 店員は奥に声をかけると入って右の衝立を避けて「こちらへ」と声をかけてから先行して歩き出す。衝立の奥には細い階段があって二階へと上がっていく。


 通されたのは四畳ほどの窓もない部屋で二鉢の観葉植物とその間に掛けられた一枚の絵だけが視界を慰める。


 「今日のランチは?」


 席に着くより先に案内してくれた店員に問いかける。


 「本日はミノタウロスの煮込みかケートスの蒸し焼きとなっております。」


 「じゃぁ、俺はミノタウロス。ロサはどうする?」


 「シンがミノタウロスにするなら私はケートスにする。」


 「かしこまりました。ただいま込み合っておりますのでしばらくお待ちくださいませ。」


 そういうと、店員は一礼してでていった。


 二つある椅子の片方に座ると、ロサもまねるように向かいの席に腰かけた。備え付けの水を木製のカップ二つに注いで差し出しながら、離れていた間の出来事を訪ねる。


 「で?登録はちゃんとできた?」


 「できた……と、思う。特にこれがだめとか言われてないし。」


 「じゃぁ、生産ギルドカード見てみて。」


 促すと素直に洋服の襟もとから首から下げたギルドカードを出してじぃぃっと見ている。と、何かに気づいたようにギルドカードを指してこっちを見ると口をはくはくと動かしている。


 「一番下の数字がガンガン桁が増えてる!!なんで!?」


 ギルドカードにはそれぞれのギルドで稼いだ金額が自動で振り込まれるようになっている。店によってはクレジットカードの様に使うこともできる優れものだが、ギルドカードで払ってばかりいると野盗やら下らん冒険者に狙われるようになるので俺はあえて現金派である。


 「それはギルドが口座として預かっている金額。今その数字が動いているのは午後から素材やレシピとして登録したものを買ったやつがいるってことだな。まぁ、素材に関しては報奨金が含まれるからそれなりの値段行くとは思う。」


 「こわっ!カード怖っ!誰かに見られたらどうするの!?」


 「その項目は血の持ち主とギルドの上級職員が特性の道具を使ってみないと見れないから問題ない。」


 「そんなに発展してるのこの世界!?銀行も真っ青じゃん!」


 「や、ギルドには特別な技術があるんだけど……その辺は関係者しか知らないから俺も知らない。」


 「へぇ。すごいねぇ。」


 なんていいながら高く掲げたギルドカードをぷらぷらしながら眺めている。


 「あのね、シンさん午後から行きたいとこあるんだけど。あ、あとね、聖女様?桜ねぇちゃんだった。」


 「は?え?さくちゃん?あのえぐい聖女が?」


 「や、その聖女だと思うけどこの国って聖女一人しかいないんでしょ?だとしたらそのえぐい?聖女の事だと思う。」


 「じゃぁ、その旦那のトノさんって……。」


 「ヒメ兄さんみたい。」


 「うわぁ。」


 「え、なんかまずいの?」


 「まずくはないけど……。」


 そう。まずくはない。俺自身は関わることがそんなになかったから特に何かあるわけではない。ほとんどの聖女被害者は貴族階級の男たちらしいし。あまり詳しくは知らないがかの夫婦の後見人である貴族は万年胃痛持ちになって悩まされているのにその胃痛を治す薬を作ってるっていうのがその聖女だというのが皮肉な話だ。


 これは早いうちにうちの後見人にも報告したほうがいいだろう。


 「んでね、行きたいところってやつにも関わるんだけど、どうやらもぐらだと思ってたダイチは地属性のドラゴンなんだって……。」


 「あぁ、あのモグラ……。」


 知ってた。そんな気してたよ。あえて口にはしなかったけど。ドラゴンでなきゃ温泉掘ったり地下室作ったりするほどの知能持った魔物なんていないだろう。


 「だから早く冒険者ギルドで従魔申請出した方がいいよって桜ねぇちゃ……今はリン姉ちゃんだけど、そう言われたから早く冒険者ギルドに行きたいんだよね。」


 「確かに従魔申請のこと忘れてた。早い方がいいとは思うからここを出たら行こうか。」


 この世界の聖女の基準はスキルの属性とかではない。ドラゴンが認めた乙女の事を指すとされている。まぁ、まだこの世界において手を出していないから正真正銘乙女(処女)なわけだが……。


 「ロサが聖女?」


 「そんな大層なもんじゃないのにねぇ~。」


 本人はいたって他人事のようだ。聖女の妹ってことより本人が聖女ってことの方が問題だっていうのわかっているのか?いや、きっと考えてない。あえて面倒を避ける為にわからないふりをしていると見た。


 「で、行きたいのは冒険者ギルドだけ?」


 「あ、あとね。ツキミタンポポだけじゃなくてもっと植物増やしたいから家の周りの土地買えないかなぁ?今日はいったお金で足りないかなぁ?」


 「そうだなぁ。あの辺りは地価が崩落してるから金額的には問題ないと思うし俺も出すよ。ちょうど同じこと考えていたからちょうどいい。」


 あのあたりの土地は国が商業ギルドに委託販売している土地だから入手は可能だと思う。もしかしたら侯爵から手回ししてあるかもしれないし。


 「購入する場所も決まっているし、ここからなら冒険者ギルドよりも商業ギルドが近いからそっちから行こう。」


 「わかった。あと、ね?農林海ギルドでツキミタンポポの農作登録?ってのした方がいいよってゴートさんに言われたからそうしようかなって思ってるんだけど……。それにゴートさんがツキミタンポポの布を買い取る専属契約できないかって話されたんだけど。」


 「農林海ギルドは明日に回そう。ゴートのじいさんとこは夕食ついでに顔を出してみようか。ロサはその契約どうしたい?」


 「ゴーシュさん相手ならいいと思う。あの素敵空間に自分の作品置いてもらえるなら嬉しい。でも正直価値とかわからないから価格交渉とかどうしたらいいかわからない。」


 「あ~……それはそうか。わかったその辺は俺が話をするよ。」


 ツキミタンポポの価値をわからないロサには難しいだろうからここはおせっかいでも干渉したほうがいいだろう。


 そんな話をしているうちに食事が来たので一度話を中断して舌鼓を打つことにした。


 あ~うまぁ。


 に、してもロサといると人生退屈しないなぁ。待ち続けた五年なんてあっという間に埋めてしまいそうな濃さだな。


 そんなことを思いながら小さくなった愛しい人に手を伸ばす。


 「ロサ、ここについてる。」


 小さい体は思ったより不便だと何かの時にぼやいていたから、ほっぺたについたケートスのかけらもその延長なんだろう。指先でとってやるとぺろりと舐めたらロサの動きが止まる。


 今更こんなことで動揺するなんて……と思わなくもないが日本人だったころはこんなこと恥ずかしくて自分にはできなった。どうやら自分も相当はしゃいでるな。と、自覚してしまうのはしょうがないってことにしておこう。


挿絵(By みてみん)

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