人混みの先に
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登録すべきものの提出が終わってそろそろお昼も間近に迫っていた。
シンはお昼どうするんだろう?時間が読めないから遅くなるようなら先に食堂で食べててほしい。とは言われていた。
貴族が相手だと向こうの予定や気分に左右されるから判断が難しいらしい。
「食堂で食べてって言われたけど……。」
当の食堂はレシピ登録会場になっているので全面的に今日は利用できないらしい。
「ほかの人が出したレシピを食べるのも有りよ?でもレシピ購入考えている人が押しかけて人がごった返してるからゆっくり座っては食べれないけど。」
そう教えてくれたリン姉はレシピ担当の人にとっ捕まって引きずられて行ってしまった。さすがにこの人々の中を入っていくのは勇気がいる。それにどうせ食べるなら座ってゆっくり食べたい。
そんなわけでどうしたものかとちょっと考える。
シンとは生産ギルドから出ないと約束してしまったわけだし。勝手に出回るのもよくなかろう。そのうち戻ってくるとは思うけど。
ぼんやりとそんなことを思いながら壁の花にでもなろうと身を寄せて今後について考える。
まずは冒険者ギルドで従魔登録をする。じゃないと罰則貰うのは怖い。自分だけに迷惑かかるなら自業自得だがシンやリン姉に迷惑かけるわけにいかない。この世界が犯罪者に対してどういう扱いをするのかはわからないが身内に肩身の狭い思いをさせてはいけない。
なんせ向こうの世界ではやばかった。本当の犯罪者なら仕方ないが公務員とは別の自称警備員とか警察だとかいう人たちがないことないことに尾ひれはひれ付けて犯罪者と同姓同名ってだけでえらい目にあった人を知っているし、ある疫病が流行った時に看護学生が旅行からその病気を持ち帰り同居の祖母にうつした。というニュースの後学生の自宅と学校は誹謗中傷の嵐でパンクし学生は退学を余儀なくされ、両親は仕事をなくし、父親は自殺したとおば様方が騒いでいた。本当かどうか私に確認するすべはなかったが。
そんなわけで向こうの世界では自分の在り方にずいぶんと気をもんだものだ。家族が増えればなおさらだ。昔はそういうの気にするの公務員だけだったのに。恐ろしい世界になったと何度念仏唱えたことか。まぁ、それはおいといて。
そんなわけで手続きは早いに越したことはない。
それから商業ギルドで土地の購入だ。これはお金がかかるから現在無一文の私としてはシンに要相談だ。あの家を買ったときに言われたが、あの家周辺は王都が籠城戦をした時のために設けられた農業区画なのだが100年ほどそんな事態にはなっていないものの都市開発するわけにもいかず変わらず置かれた結果すたれて土地暴落でかなり安いと言っていたので何とかなると信じているが。
それから農林海ギルドでの登録もした方がいいらしいのでそっちにもいこう。
あとは白山羊の糸紬に行って商談。これはシンに同席してもらった方がいいだろう。勝手もわからないし本人にも事前にそういわれていたから問題ないはず。
片手で予定を確認しているとずいぶん突発的に増えたなぁって思っているとギルド中に響くんじゃないかというくらいの大きな音で『カーン!』と金が鳴らされた。
同時に人々が一気に動き出す。うごめく人の波に飛び交う怒号がすごくて壁に寄っててよかったとややドン引いた私は悪くないと思う。
お祭り騒ぎと聞けば楽しいかもしれないがこれは誰か圧死する人が出るんじゃないかと冷や冷やする光景だ。
これは巻き込まれたらたまらん。今の私は小さいのだ間違いなく命に係わると思う。かに歩きでじわじわと正面玄関に移動を開始した時だ。
「キミが噂のシンのパートナー?」
済んだ少年の声が降ってきて声の方を見上げれば茶色の瞳にオレンジの髪をした青年が人のよさそうな笑顔で私の前にいた。
好青年よ。どうせ声かけるならもっとタイミングがあったと思う。周りがうるさい中正直声かけられても何と言ってるのか聞き取りにくい。何よりかに歩きという間抜けな姿を人に見られたのかと思うと恥ずかしい。
そもそも噂ってなんだ。私が噂なのかシンが噂なのか。出来れば後者でお願いしたい。そもそもパートナーとは?何か特別なシステムでもあるのか?パーティ的なことか?でも何も言われたことないしな。
「えっと……パートナーかどうかは知りませんが今お世話になってるという意味ではそうかもしれません。」
とても歯切れの悪い返事だという自覚はある。しかしシン本人不在なのに勝手にどうこう言えないのだ許してほしい。
「そうですか。彼のパートナーだというのなら仕方ないとも思ったのですが、あまりにも愛らしいお嬢さんでしたので諦めきれず声をかけてしまいました。」
「はぁ……。」
なんなんだこの人。
「あの、失礼ですがシンのお知合いですか?」
「あーいやいや、そんな。彼は有名人ですから知り合いなど……おっと。」
何かの拍子でよろけた青年は人波に消えてしまった。
「何だったんだだろうあの人。」
何がしたかったんだろうナンパにしては名前も言わなかったな。や、いう間もなく人並みに飲まれてしまっていた。たまにいるよなあんな人。祭りのときとかね。
呆気に取られて見送っていると後ろから腕を掴まれる。
「ロサ!」
「はい。」
反射的に返事をした。見なくたってわかる。
「シン?どうしたの?」
「あ、いや。思ったより人が多くて焦った。これじゃ食堂着けないだろうから、昼は外で食べよう。」
なぜかしどろもどろなシンに内心で首を捻りつつも私は素直にうなずいてみる。午後のことを相談しなければいけないのにこんなにやかましいと話なんてできないだろう。
促されるままに外に出るとさっと抱き上げられてしまう。
「あの~シンさんや。今朝も言いましたが私は歩けますが。」
「迷子になったら困るだろ?」
「や、それなら手を繋げばよろしいのでは?」
「それだと今日は人が多いからうっかり離れた時が困るだろ?俺を安心させると思ってそのままでいて?」
そういわれてしまうと拒否できないから困りものである。まぁ、嫌じゃないからまた困ってしまうのだが。
シンの左腕にちょこんと座らされて視線が合えばにこりと微笑まれてしまえば大人しく収まっているしかない。
「ロサは何か食べたいものある?肉?魚?」
「ん~と。どっちでもいい。まだ街のこと分からないからシンにまかせてもいい?」
「わかった。ちょっと話がしたいから個室のある所に行こうか。」
いうが早いか。シンは人波を縫ってすいすいと歩きだした。周囲の視線など全く気にすることもなく。居た堪れない!居た堪れないですよ!
ご覧いただきありがとうございます!
なんも進展してないな……と思いつつ。ひとまず50話目指してまだまだ頑張ります!
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