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夫婦仲良く異世界転生したので生産を楽しみます  作者: 牧野りせ
転生したら旦那に囲われました
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素材を登録しようの裏側で~シン視点~

お越しいただきありがとうございます。


誤字報告ありがとうございました!おかげさまで更新の日は毎回アクセスが1000を超えるようになってきました!わ~い!沢山の方に楽しんでいただけるように頑張ります!

 

 俺が異世界転生した先の国の名前はテララと呼ばれている。地図で言えばアルフォーリア大陸の右上に国土と持つ王国で、50を超えた王が統治する国とあってとても住みやすいので気に入っている。


 建国して二千年、一度も血を絶やさない王家を支えるのは七候と呼ばれる七つの侯爵家。こちらも建国以来王に仕えるというのだから恐れ入る。


 八年前から各国に出現しだしたという転生者。親切なことに必ず王城のどっか(これは国によって城のどこに出てくるか違うらしい)で年に一度春の朔の日出現するらしい。


 そう。【出現】である。


 肉体を構成するべき母を持たず、転生前のあちらの世界の肉体でもなく、光と共に出現するのだ。


 そんな転生者をこの国では王族と七候が後見人として保護し、生活のサポートを行っている。


 かくいう俺自身も七候のカリッサ家で保護され、当主アレクサンダーの命によりその嫡子クリストファーがお世話係をやってくれている。


 当主は50を超えているので息子の方が気後れせず何でも相談できるだろうという配慮らしい。単純に気遣いのできる当主家に引き取られたのはありがたい限りだった。


 そんなカリッサ家は次男ダニエルが同じ七候のマルマラス家の三女ヴィヴィアンとの結婚で沸き立っている。またそれに伴う準備でてんやわんやだ。


 そんなカリッサ家から結婚祝いに嫁となるヴィヴィアン専用馬車の発注を受けた。何でも結婚後二人は領地に引っ込むため夫人が一人で出歩く用の馬車がいるらしい。その馬車が完成したため納品にやってきたというわけだ。


 「やぁ、シン!最近姿を見ないからどうしてるかと思っていたよ。」


 「仕事をもらったらそりゃあ籠るに決まってるでしょう。」


 テンプレのような金髪に空色の瞳はキラキラ王子さまのようである。そんな男が爽やかな顔でこちらを見る。嫌な予感しかしない。


 「隠密王子は掌中の珠を囲い込んで離さないと社交界にまで届いているぞ。」


 なんか増えてないか?


 「……。」


 その二つ名にも噂にもげんなりだ。まぁ、そんな噂一つで守れるのならその醜聞も甘んじて受けるか。


 「何だ否定しないのか?まぁ、いい。積もる話は玄関ではなく中でしようじゃないか。」


 「……その珠と作った渾身の馬車だ。ほら。」


 腰のウェストポーチから出したのは指輪が入っていそうな木製の箱である。


 クリストファーは箱を玄関の馬車留まりに向かって開けると馬の無い馬車の本体が出現する。


 この箱はマジックバッグと同じ仕組みであるが、収納できるのはたった一個だ。実はこの箱は俺が考案したものだ。数が少ないから常用には向かないが大きなものを人にプレゼントするのに向いているし、枠が一つなので錬金術師の弟子でも製作可能とあって生産と供給のバランスが取れた社会に優しいアイテムである。


 「これはまた……なんと優美な馬車だ。」


 生産ギルドの裏庭に出したものとほぼ同じ。一つ違うのは家紋が入っていることだろう。


 「この木は白檀か?これほど木肌が美しければ白い馬にひかせたくなるな。」


 外装を触りながら漏れる言葉にニヤリとしたくなる。


 「中も確認してくれ。降りたくなくなるぞ。」


 子供の様にはしゃぐ外見王子を宥めたのは言うまでもない。


 「この座面もクッションもいいな!」


 「走りもいいぞ。今までの様に跳ねない。」


 「本当か?」


 「実際に乗ってみるといいさ。」


 見ていた車体の前にマジックバッグからもう一台、今度はゴーレム馬をつないだ馬車が出てくる。


 「あっちは二人乗りだがこっちは四人乗りか……。中もあの座面とクッションが完備とは。だがシンよ。なぜこの馬車にも我が家の家紋が?」


 「なんだ?いらないか?侯爵は喜ぶと思ったんだが?」


 「確かに最近父上は移動が辛いと言っていたな。」


 「せいぜい宣伝してくれ。」


 「ああ。これ以上ないほどやってやる。手始めに街を一周でもしようじゃないか。」


 いたずらっ子の表情を浮かべたクリストファーは御者を呼び、俺たちは乗り込むと馬車は滑るように走り出した。


 「これは確かに跳ねないな。これまでの物とは違う。」


 「ああ。ロサのおかげで探してた素材が手に入ったんだ。」


 「サス……といったか?前から言っていたな。何から作ったんだ?」


 「フゥジィだ。」


 「森の厄介者か。あれは何も活用法がなかっただろう。」


 「そうだ。あの植物を素材へと昇華させた。その座面にもクッションにも同じ素材で作られている。今日登録したから午後からでも騒ぎになるだろうよ。」


 「フゥジィなら森の浅いとこにでもどこでもある。採取には特殊な道具も費用としないし、ある程度の子供でも刈り取り可能になるだろうな。」


 「そうだ。貧民の子供でもこれは持ってこれる。生産者は作るのは好きだが材料を採取するのは好きじゃない。そんなことする暇があれば作る方がいいからな。したがってギルドに依頼が飛び交う。」


 「おまけにこれほどの物が作れるなら貴族は注目せずにいられまい……。大きく金が動くな。」


 「そうだ。フゥジィだけじゃない。木も動く。布も。それから馬もだ。人間新調するなら根こそぎやりたがるからな。馬はカリッサ家の得意分野だろう?」


 「なるほど。外の青の染料は?あれはどうなんだ?」


 「あれはツキミタンポポの花からとった染料だ。現状入手はほぼ不可能だな。」


 「ほぼ?」


 「最近郊外に家を買ったんだ。」


 「それは我が家にも情報が入っている。農業区の人もまばらな場所だろう?確かあそこはどこかの子爵家の放蕩息子が突然農業をやると言い出したものの一週間で癇癪起こして手放した物件だったと思うが。」


 「どんだけこらえ性ないんだ放蕩息子。ま、その庭に自生していたんだ。」


 「自生?だが刈り取ればそれまでだろう。これまでだって発見した場所で栽培しようにも成功したことがない。王城の庭師長の悲願なのは誰しもが知っているほど人間では扱えぬ稀な植物だろう。」


 「それは俺も知っている。王に重用されて城内でもかなりの発言力と聞くな。はっきり言って要因がわからない。同じ土地で育たないというのなら土地の条件ではないんだろう。……彼女はロサというんだが、ロサは召喚士だ。」


 「またマイナー職を選んだな王都でも両手に余るほどしかいない冷遇職だろうに止めなかったのか?」


 「それ以外を選ぶ女じゃないからな。」


 「まさか確信していたのか?だからレイドで卵だけを?」


 そこまで言ってクリストファーは目を見開く。そんなに驚くことだろうか?


 「72年連れ添った女だ。理解していないなどありえないだろう。」


 思えば72年なんてあっという間だ。結婚して蜜月を迎えて間もなく娘と息子を授かりジェットコースターのように子育てをして巣立つ頃にはトントンと子供たちは結婚しあっという間に孫ができて毎日が賑やかだった。その孫も結婚してひ孫が生まれた時は人生が感慨深く隣にいてくれる人に感謝したものだ。またあの楽しい日々を分かち合えると思えばこれからの人生心が弾む。

 

 「ななじゅうにねん……。それほどいいのか?五年も待つほどか?他の女は考えなかったのか?新しく生まれ変わったのに?飽きないのか?」


 「質問が多いな!たかが五年だろう。十年はかかると思ってたんだがな……。大体今更ひよこのような女を相手にする気にはならない。それならロサの新しい姿を想像する方がよっぱど楽しい。大体生まれ変わってくると決まっているのに待てないほどこらえ性の無いやつは誰とも付き合えんだろう。」


 「そ、そういうものか?」


 「そういうものじゃないのか?多少待つくらいが丁度いいだろう。女は支度に時間がかかる生き物だからな。」


 「ふ、はは!違いない。」


 「……話を戻すぞ。そのロサの従魔が今4体いる。俺が卵をやったフェンリル、ケットシーのほかにバロメッツと地のドラゴンだ。」


 「バロメッツにドラゴン!?まて、そんなのどうやって従魔にしたんだ。早々ホイホイいるような魔物でもないんだぞ。伝説級といっても過言ではない。ドラゴンを従えるって聖女の資格も持つというのか!?どんな女性なんだ……。」


 「バロメッツはツキミタンポポとフェンリルに誘われてきたようだ。ドラゴンは……経緯はわからんが魔力切れを起こしているところをフェンリルたちが見つけて連れてきた。幼体でその時はただのもぐらにしか思っていなかったんだが、それ以来ロサになついて付きまとっていたんだがついに契約することになった。おそらくどちらかが作用しているんだと思うんだが……結果的に言うとツキミタンポポの栽培に成功している。」


 「なんとまぁ。規格外な……。」


 「本人はそれほど貴重なものだとわかっていない。ただの綿花が取れる花としか思っていないからひたすら布を織っている。そろそろ部屋が埋まりそうだ。ドラゴンだってただのもぐらだと思っている。」


 「それほどまでに栽培していると!?ならば悪いことは言わん。すぐに農林海で栽培登録した方がいい。多少面倒でも存在を明確にした方が余計なトラブルは防げる。貴族が押し寄せるようならこちらに問題を投げてくれて構わない。それから余計な人間を寄せないためにも近隣の土地は買い上げたほうがいいだろうな。私有地と断言できれば不法侵入というだけで見回りの騎士が動ける。まぁ、ドラゴンがいれば守りは大丈夫だと思うが人には人の世界の掟があるからな。」


 「わかった。」


 「そうだなぁ……。明日の夜は空いているか?確か父上も在宅のはずだ。彼女を守る意味でも顔合わせはしていた方がいい。守るものを知らねば手遅れになることもある。」


 「ああ、すまない。迷惑をかける。」


 「何を言う。迷惑より利益の方が大きいからな。」


 悪童の様に笑いあっていると馬車は元の侯爵鄭に戻ってきた。ゴーレム馬だけ回収し本体はそのまま置いてきた。


 「さてさて、午後になってからのロサの反応が楽しみだな。」


挿絵(By みてみん)

ご覧いただきありがとうございます。


やっと生産だけじゃなくて話が動いてきたとぞ!!とか思いつつ。

前回もお知らせしましたが、このお話の設定イラストなどを話しのあちこちに貼りたくりました(笑)もしよろしければ読み直してみてくださいませm(_ _)m


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