生産ギルドに来ました~シン視点~
お越しいただきありがとうございます。
昨日の更新沢山の方々に読んでいただけたようで行幸でございます!楽しんでいただければこれに勝ることはありません。
今日は三か月に一度の生産ギルドで行われる合同著作登録日。
自主制作の物や新発見の素材やその用法などの知的財産を守るためにあるこの制度。登録だけならジャンル別で週に一回手続きができる。しかし、その場合は現物と書類を納めて終わりで、登録の可否は後日発表となる。
しかし、三か月に一度ギルド本館と裏の広場をフル活用しての登録会がある。この日ばかりはジャンル関係なくすべての登録が一度にできるので多種多様ジャンルで活動している者にとっては便利な日である。
おまけに決められた時間内に持ち込めば登録の可否が昼には判断され、午後からは製作発表会に変わるので商品の宣伝にはもってこいなのだ。この日ばかりは製作する側だけでなく事業主やうまくいけば貴族の目にも止まる。
なのでわざとこの日に合わせて製作している者も少なくない。
俺はこれまで木工ばかりだったのでわざわざこの日に合わせることはなった。むしろ人が多くなるから避けていたわけだが、ロサと暮らすようになってから彼女の活動の範囲の広さを考えるとこの日がいいだろうと思った。
そんなわけで今日登録を目指す新しい馬車をギルドの裏にある広場に駐車したわけなんだが周囲からの視線がすごい。
まぁ、それはそうだろう。
この世界の馬車は基本木製で着色などしない。木の地肌の模様や色を生かすか、何日も染色剤に付け込んで年単位で乾燥させて素材を作る。しかし、後者の場合は施設の広さと人員、コストがかかるため実質そんなことするやつはいない。完成するころには依頼主すら忘れているだろう。
それだというのにこの馬車は美しい白檀の木肌に細かい彫りで蔓薔薇の模様が彫られ、さらにその彫りが薄い青で染め抜かれている。
この青はツキミタンポポの生花を絞って作った染色剤で塗装したものだ。魔力が作用するのか、どうやらこの染色剤は水に強いことが分かった。
そもそもこれまでツキミタンポポ自体がレア素材だったのでそんな花を染色剤に使用など勿体ないことするやつはいなかったわけだが、あの家を購入しロサの従魔たちの働きにより余るほどあるのでやりたい放題である。まぁ、ロサはこの素材の重要性を知らないからここぞとばかりに活用している。おそらく本人はこれが基準とすら思っている危険性がある。
転生してからほかの男に取られないよう、ロサの制作意欲にかこつけて家に閉じ込めていたが、今日いろんなものの登録が可能になれば必然と彼女は注目されるだろう。
そうなると彼女の事を取り込もうとする貴族が群がるのは目に見えている。最悪彼女の身が危ない。
(テルプロスト家に頼んでみるか……。)
そんなことをぼんやり考えながら停車した馬車から降りてロサを馬車から出すべく扉の方へと回り込む。ドアノブを掴んで開ける。
この世界でドアノブといえば、馬車でも室内用の水平レバーを下に捻るあの形なのだがやはりこの馬車のデザインにそれは武骨な気がしてのであちらの世界にある車のような形のフラットなドアノブにしてみた。これはロサが発見したバネのたまものである。もちろんこの製法も登録申請案件である。
「さ、ロサついたよ。」
扉を開けて片手を差し出せば小さな手が差し出される。中腰でこちらにやってくるロサはトレードマークのグラデーションがかった髪をツインテールにして青いリボンを付けている。本人が言うには『合法ロリなんだから可愛くしても許されると思う!』ってテレカクシのようなこと言ってたけど、別にロリじゃなくたってリボンくらいつければいいと思う。可愛いことに変わりないんだし。
おまけに今日はユメの毛から紡いだ糸で綿のようなのにきらめいてるシャツに袖なしのロングジャケットにホットパンツに二―ソックス。それだけでも男の視線を集める危うさがあるのに、貴族がいるかもしれないなら足が見えるのはまずいかもしれないって透けるほど薄い生地でスカートのようなものを合わせてる。
それはきっと配慮なのだろう。しかし!!そのスカートのせいで太ももの部分がシルエットになり、ふくらはぎがうっすら透けて男の想像力を掻き立てながらも自覚せずにはいられないこの背徳感!はっきり言おう!ただただエロい。見えそうで見えないってのが一番エロい。
馬車自体も目立っていたが、この高価そうな馬車からどんな人物が出てくるか周囲も気になったのだろう。人が集まってきた。そんな奴らが扉が開いたとたんに目の色を変える男どもに誘われるようにさらに注目し始める。
(っち。)
そんなことに気づかないロサがぴょんと降りたのでその身を掬うように受け止めて片腕に乗せて足を生地のわだかまりと自身の腕でロサの足を隠す。
あ、ギルド職員のやつが足をチラ見しやがった。何赤くなってんだコイツ。ロサの足は俺の(と言ってもいいはず)だ。腹立ちまぎれにガン飛ばしながらこの馬車と新しい乗合馬車に関する登録書類を手渡す。もちろん乗り合い馬車の車体も隣にマジックバッグから出しておく。確認も済んだので手はず通りに分かれて中での登録申請に行かねばならないが……。
今日は普段出入りしているやつ以外にも人が多い。ここいらでちょっとロサは俺のだってアピール(マーキングともいう)をしておくか。
わざと甘えるようにその柔らかな頬に自身の頬をすりすりとこすりつけるとふんわりと甘やかな花の香がする。そんなつもりはなかったのだが思わず耳朶をそっと食む。
「ひゃっ」
しまった。可愛い声をよその男どもに聞かせてしまった。まぁ、だがこれでいい牽制にはなっただろう。不思議がるロサにそっと囁いで耳の後ろに吸いついた。
(ああ、この香りに酔いそうだ。早く俺だけのものになればいいのに。)
このままでは場所もわきまえずに襲ってしまいそうだ。さすがにそんなことをしては四度目の約束をしている俺でも嫌われそうなので手がやましい動きになる前にロサを解放した。
ギルドの二階の家具系登録会場に向かうため階段を上っていると上から声がかけられる。
「シン~そんなにアピールしなくても誰もお前の嫁取るようなやついないって。」
「しばらく巣穴から出てくる姿を見ないって冒険者ギルドで噂になっていたがこれほどまでに夢中になってるとは思わなかったな。」
視線を向けるとケラケラ笑っているユリウスと何故か何度もうなずいているガイラがいた。
「手を出すような輩は闇討ちする。」
「ヤメロ。隠密王子が言うとシャレにならん。郊外に顔のつぶされた死体が上がったら真っ先にお前を疑いたくなるじゃないか。」
「まぁ、あの様子ではそれも仕方ないだろうよ。」
「それより二人ともどうしたんだ?ガイラはまだしも、ユリウスがこっちのギルドに顔出すなんて珍しいじゃないか。」
ユリウスは生粋の冒険者で生産とは無縁の男である。ガイラは武器を手製する派なのでわからなくもないがそれでも武器の登録は5階なのでここではないはずだ。
「今日はユリウスが新しい家具を買うって言ってな。」
「どうせなら物珍しいものがいいじゃん?なんかないかなぁって来てみたんだよ。それに今日ならお前も嫁連れてくるだろうと思ってさぁ。」
「は?」
「だってこっちに転生した日以来会わせてくれねぇんだもん。話してみたいのにさぁ。」
「見るな、話すな。減る。」
「嫉妬深い男は嫌われるぞぉ。後で一緒に飯食おうぜぇ。」
「夜なら……。この後納品なんだ。」
「了解。」
「ちなみにどんなの見に来たんだ?」
階段を登りきって登録の受け付けの方なしを向ければ二人も後ろからついてくる。
「ん~ソファかなぁ。俺すぐ酔って寝るから寝心地良くて大きいやつにしようかと思ってさぁ。」
受付の職員にいくつかの登録用紙を渡すと別の職員に登録の実物を配置する場所に案内される。
「なんだ。それならいいのがあるぞ。」
「いいの?シンが作ったの?」
「正確には俺とロサだな。」
「なんだ惚気かよぉ。」
「ソファだがベッドにもなる優れものだ。」
「え、何それ何それ!」
指定された場所に一人掛けソファ、二人掛けのソファでありながら引き出し式でベッドになるものと三人掛けソファでありながら背を倒してベッドになるもの、もちろん普通に二人掛けと三人掛けののソファも出して並べる。
「なんだ。普通のソファじゃん。」
「まぁ、座ってみろ。」
『!!』
「何だこれめっちゃ座り心地いいじゃん!」
「これほどのものは貴族の屋敷にもないぞ。」
「ちなみにこっちは下のここを引っ張るとベッドになる。三人掛けのこっちは背を倒すとベッドになる。」
簡単に説明しながら実際に見せると周囲からどよめきが広がりあっという間に人だかりができる。
(よしよし。いいアピールになったな。)
なんせこのソファと馬車の座面に使ったポケットコイルはロサの制作担当だった。一個一個のポケットを縫うためにかなりの時間を要したらしく、本人はしばらく作りたくないと言っていたし、そのおかげか生産のレベルがこれらだけで10も上がったと言っていたからずいぶんたくさん作ったはずだ。しょっぱなからこれだけの注目を集めれば彼女の苦労も報われるだろう。
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シンさんヤキモチ爆発回でしたww男性のヤキモチっていいですよね!(好みによる)
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