生産ギルドに来ました
お久しぶりです!更新遅くなってすいません!
「今日は馬車預けないの?」
爽やかな朝の空気に街特有の喧騒が混じっていよいよ王都の中心に来たのだと実感する。すでに何度か中心地には来たことがあるものの、大概家の事をしてから出かけるのでどうしても午後から夕方になってしまうのである。
馬車を操るシンに御者台の後ろにある小窓からひょっこり顔を出して話しかける。
「今日はこのままこれを試乗車にしてもらうから生産ギルドに裏付けするよ。」
「じゃぁ、シンはずっと馬車についとくの?街に出たついでに納品に行くって言ってなかった?」
「この馬車はギルドに預ける。そうすると職員が一日管理してくれる。」
試乗したい人はギルド職員に名乗り出れば御者として試したい人とマッチングしてくれるらしい。聞けば馬車を新調したくて色々見に来る貴族は乗り心地を、定期的に街を流している乗り合い馬車の運営者や個人購入などは操作の利便性を試してから購入を検討するものらしい。
「そうなんだ?じゃぁ、そっちは気にしなくていいんだね。」
「俺は馬車預けて二階の家具系登録会場に行くから……。」
「私は一階の調理系登録と三階の素材系登録、四階の衣料系登録に行って登録用紙と現物を提出すればいいんだよね?」
もうこの話は両手両足で数えても足りないほどした。なのでついつい食い気味に返事をしてしまう。ついでに言うと……。
「それから、その間にシンは別件の納品に行くから今日は一日ギルドから出ないで、お昼は一回の食堂で食べる。んで、知らない人にはついて行かないし、製品に関しての問い合わせはその場で返事をせず後日にする事、特に貴族相手の時は気を付けること。……でしょ?」
もう耳タコである。……とは言うわけにもいかないので話を先回りしてみる。
「それより……。中心地に入ってからすごく見られてる気がする。」
「はは。そりゃぁ、これだけ細工が入ってる馬車はそこらの貴族の物より上等だし、第一他にはないから珍しいんだよ。」
「つまり走るだけで話題になって広告になると!シン商売上手ぅ~!」
「おまけに試乗で町中走り回ってくれたらもっと宣伝になる。」
鷹揚にうなずくシンはちょっと楽しそう。
そうこうしているうちに馬車はギルドの裏門から入って広場のような場所につくと、テノールヴォイスの職員に誘導されて馬車を止める。
扉が開かれてスッと手が出されたので小さな手を重ねる。
「さ、ロサついたよ。」
ついつい嬉しくなってステップを無視してピョンと降りる……はずだったのに何故かシンの片腕に支えられて抱きかかえられてしまった。
あれ?ついたら別行動ではなかったのか?なぜ私は抱っこされているのか。解せぬ。
頭の上にたくさんのクエスチョンマークを浮かべていると、誘導してくれたテノールに声を掛けられる。
「ようこそお越しくださいました。馬車の登録用紙をお預かりします。」
にこやかな青年に好感が持てるなぁと眺めていると青年と視線が合っらので愛想笑いをしてみる。すると向こうは頬を染めてからなぜか今度は顔を青くしている。表情の忙しい人だなぁと観察していると、シンから出された書類を受け取って中身を確認しているらしい。
「書類不備はございません。登録に関する審査が午前中に終了予定です。午後からは展示、試乗になります。終了時に馬車を引き取りに来ていただければその間は自由にしていただいて構いません。本日はギルドあげての登録イベントですのでどうぞお楽しみください。」
若干早口で説明すると用紙を持って早足でいなくなってしまった。
「シンさん、シンさん、抱っこされてたら私登録に行けないよ別行動じゃなかったの?それとも一緒に行くの?時間大丈夫なの?」
行動予定に変更でありますかっ!大佐!?ぐらいの心境で確認してみたのになぜかシンはふんわりと笑って私の頬をそっと撫でた。
後ろにお花が飛んでるよっ!人が見てるんだよ!ちょっと恥ずかしいじゃん!ってどこからか黄色いお声が聞こえましたよ!
「シン……?」
「うん。予定通り別行動だよ。」
とか言いつつ今度は頬ずりされて耳たぶを食まれた。
「ひゃっ!」
何事ですか!!って目を白黒させてる私にはお構いなしでシンは建物に向かって歩き出すし、周囲の人がどよめいてモーゼの海割りみたいに人が避けていく。
「ちょっ!シンさん!?」
離れようと試みるけど頭の後ろをがっちり支えられてて抱っこから逃げられない。
「ちゃんといい子にしてるんだよ。」
腰に来るような囁きの後にチュっとリップ音を立てられてもう一度頬ずりされる。あまりの出来事に何も言えず口をはくはくさせていると床に降ろされた。
「じゃぁ、いってくるね。」
それだけ言うとシンは踵を返して階段の方へ歩いて行ってしまう。
ちょっと待って!!こんな状況で残されたらだいぶ居た堪れないんですけどぉぉぉぉぉ~!!
シンさんちょっと暴走……。
甘々回……のはず……。