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夫婦仲良く異世界転生したので生産を楽しみます  作者: 牧野りせ
転生したら旦那に囲われました
29/57

それは新たな発見です

お久しぶりです。


ブックマーク・評価ありがとうございます!!更新しようと星の数を目に停めて嬉しくてびっくりしてしまいました!5月までは更新が遅れてしまいますがちゃんとネタは作ってますので気長にお待ちいただければ幸いです。


 よろしくお願いします。

 「もうちょっと上、そうそのあたり。」


 うららかな午後の日差しを浴びて庭に立つ私は屋敷の屋根を見上げていた。


 ことの発端は今朝へとさかのぼる。


 いつものように朝食を済ませて紅茶を飲みながら日課となりつつある今日のスケジュールをシンに確認する。


 「今日はどうするの?」


 「ん~。今もらってる仕事がもう少しかかりそうなんだ。本当はどこか連れて行ってあげたいんだけど……。ごめんな。」


 どうやらシンは私が外出できずにいることが不服と思っているのだと勘違いしているらしい。


 そんなことないのに。


 スケジュール確認をするのは自分がそれに合わせて何をするか予定を立てるだけに過ぎない。


 一緒に出かけるといわれれば出発の時間までに外出着に着替えるし、出かける場所によってはそれに合わせた服装だってコーディネートしなければならない。


 逆に出かけてくると言われれば昼ご飯の準備の量が大分違う。だってシンは私の三倍ご飯を食べるんだから。そうなると材料だって分量変わるから逆算して料理にかける時間の配分だって変わるのだ。そうなると他の家事にあてる時間をどう変えるかも考えなければならない。


 出かけないと言われたら午後からやることを「急いでやること」「やらなければならないこと」「やりたいこと」の優先順位で何からできるか考慮する必要がある。幸い私に特に急ぐような案件はないので今はシンに関することを優先してあとは好きにできるからいいけど。


 そんなわけで一日の行動確認は必須なのだ。


 それにあちらの世界ではインドア派だった私が必要以上に出かけることがないのは知っているだろうに。おまけに近いうちに生産ギルドでレシピ登録をするために街に連れて行ってくれるって約束してるので必要なものはその時に調達すればいい。


 なので現状不満はないのだ。


 「お仕事そんなに難航してるの?」


 「ん~少しでも馬車の振動を減らしてほしいってことで色々試してるんだ。そもそもこの世界の馬車は簡単に説明すると、車輪二つを棒でつないでそれを前後に配して固定したうえに箱型の座席を置いた状態で衝撃を和らげる機構がないんだ。サス…衝撃を和らげるようにバネをつけたいんだけどこの世界にバネがないんだ。職人もいないし代わりになる材料が見つからないし、自分で作ろうにも鉄鋼のスキルがないし。」


 貴族や商人など多く長く馬車に乗ることがあるために腰を悪くしたり痔になる人も多いらしい。声を大にして言えないだけで……。まだ数回しか乗っていない私でも痛かったから日常となればつらかろう。


 「それなら座席のクッション材を変えて少しでも緩和できないかな?あと座布団やクッションを多めに配置して調整してもらうとか。」


 「ん~。もう少し色々考えてみる。」


 眉根を寄せていつもの2.5倍下がった眉を見ると、何とか力になってあげたいと元嫁としては思うわけだ。まぁ、すごく役立つ何かができるわけではないが……。


 そんなわけで、今日の午後からはクッションでも作ってみようとスケジュールを決めていそいそと午前中を過ごし昼食を終えるとすぐに部屋へ引っ込んだ。


 午後の陽気に誘われてフェルとクローは私の足元で丸まって昼寝を決め込んだらしい。フェルの上にぐて~って乗ってるクロがかわいい。


 そんな二匹を横目に長方形に切った生地にワンポイントで自分のサイン代わりにバラの刺繍を刺していく。思ったより出来が良かったので葉っぱを一枚足したら物足りなくて三枚まで増やした。そうなると全体のバランスを見て蔓を二本足してみた。


 と、言った具合にこれまで無駄に紡いで織って編んで縫ってを繰り返し培った裁縫師のスキルを遺憾なく発揮しまくってシュパパパパパパと手を動かした結果全面に青の蔓薔薇が見事に咲き誇っている。


 「そこはかとないやりすぎた感……。まぁ、いいか。かわいいし。」


 長方形を中表で二つに折り輪になった横の辺から二辺縫い合わせて袋状にして所で手を止める。


 「さて、問題は何を詰めるか……。」


 綿だと従来と変わらないだろし、布を詰めると固くなってしまうし……。う~んと唸ってふと気づく。まだ夕刻でもないのに部屋が薄暗い。


 「あれも切りたいんだけど今の私だと体が小さくて難しいよね……。」


 『主、何を切りたいのでしょう?』


 ピクリと耳を動かしたフェルがつぶやいた。


 「家を覆っている植物のせいで部屋が暗いから切ってしまいたいの。せっかく可愛いおうちなのに半分くらい絡まってるせいでおばけ屋敷みたいなのももったいないし。」


 『おばけ屋敷が何かはわかりませんが……。植物を切るなら某が。』


 「できるの?」


 『主がここのところがんばっていたの従獣である我らも魔法が使えるようになりました。』


 頑張っていた……裁縫師のスキルアップのことだろうか?確かに引きこもって色々試作してるうちにめきめきとスキルが増えてできることが増えると試してみたくなって実験してとやってるうちにスキルのレベルも上がってきた。


 つまりサブ職を上げると従獣のスキルもあがるということだろうか?


 「おぅ、ふぁんたじぃ。」


 『ふぁんた……?』


 「ううん、なんでもない。それにしても魔法が使えるなんてすごいね!」


 『某はフェンリルですので風と氷に特化しておりますゆえ、切るのはお任せください。』


 小さな体に反比例するほどの忠義ぶりにじ~んとしているとフェルはクローを乗せたまま器用に立ち上がると扉のほうに向かってしまう。


 慌てて追いかけて扉を開けると二匹と並んで庭へと向かう。


そんなわけで出てきた庭でフェルにどのあたりから切りますか、と問われできるだけ上から切ってもらおうと屋根を指す。


 「あのへんかな。」


 『あのへんですか。』


 「あのへん」

 

 『あのへん……?』


 モミジよりは大きいが大人よりは小さい手と短い子犬の鼻先が屋根を指すがいかんせん一人と一匹には体高差があるので視点が違う。どれだけ互いに位置を確認しても誤差が埋まらない。


 『おい、クローお前飛べるのだからあそこまでいって指標になれ。』


 『ちょっと面白い会話だったのですがね……。主さまのお役に立てるなら参りましょう。』


 「クローお願い。」


 『かしこまりました。』


 と、いう会話が数分前。


 で、今は切る目安となるためにクロに指示を出していい位置に止まってもらう。


 「フェル、あのあたりでも大丈夫?」


 『もちろんです。では……ウィンドカッター!』


 力のこもった言葉とともにフェルが短い両前足を馬の様に上半身ごと高く上げ、勢いをつけて地面にたたきつける。たしっとかわいい音と仕草にあわせて地面と両前足の接地点から風が吹きすさぶ。


 さすがフェンリル。風の初期魔法と有名なウィンドカッターでこの威力。


 思わず顔をそむけるとどさどさと砂袋でも落としたような音がした。切られた植物が落ちてきた音だろうとそっちを見て動きを止める。


 「うっ。なにこれ。」


 深い青緑枝葉がついているのに器用にくるくると巻かれたそれはさながらグロを巻く蛇である。


 「え?落ちて勝手にこんな風に丸まったの?気持ちわるっ。」


 植物と分かりつつ足先でつんつんと触れてみる。勝手に動かないのを確認してからとぐろの内側にある太い切り口を持ち上げる。


 「おんもっ!植物だから軽いかと思って持ち上げてみたけど意外と重いんだね。」


 なんとなく足元のフェルにそういうと口にくわえて走り出した。どうやら蔓を伸ばそうとしているらしいが小さな体よりも植物のほうが勝ったらしく弾かれていた。


ころころと転がる姿が可愛い。


 植物図鑑で調べたら植物名はフゥジィ。つる科の植物、春には青緑の花を咲かせる。繁殖力が強く森の厄介者といわれる。という記載があった。


 同時に生産ギルドでもらった裁縫師のレシピブックにはこの植物は載っていない。いくつかの蔓植物が載ってはいるので繊維自体が使えないわけではなさそうだが……。


 どうしたものかと考えているとふとガレージの方から声がかかった。


 「大きな音がしたけど大丈夫?ケガとかしてない?」


 どうやら思いのほか大きな音がしていたらしい。ガレージで作業していたシンがでてきたらしい。庭にいくつもの渦巻くとぐろに動きを止めた。


 「なにこれ。」


 「家を覆ってた植物切ったら勝手にこんなことになってる。何かに使えないかなぁって考えてるとこなんだけど。」


 しばしそれを見つめていたシンはおもむろに持ち上げてしばらく触っていた手が止まりこちらを振り返る。


 「こっちの切り口の方1メートルくらいもらっていい?」


 「いいよ。私が使いたいのは柔らかい先の方だから。」


 私の答えを聞いてシンはどこからか取り出した鉈をふるっていくつか切り取るとぶつぶつつぶやきながらガレージへと消えてしまった。何か突破口でも開けたのだろうか。


 「さて、これをどうしたものかぁ。」


 裁縫師ガイドマニュアルのようなものにつる植物の処置方法が乗っていたので試してみようととぐろを一つ抱えてキッチンへ向かう。

 

 大鍋でフゥジィの先から2メートルほどをどんどん煮て繊維を取り出していく。簡易的に10センチ四方に織ってみたが。繊維は固いしカーブが強くてゆがみがすごい。これは布地というよりもパピルスだろう。しかしゆがみのせいでちょっと触ると対角線上でさらに歪むといった具合で何かが書ける様子もない。


 確かにこれでは素材に向かないだろう。茹でた分だけなお硬くなった気がする。


 作業台に散らばったフゥジィの切端を集めてふと気づく。


 「短く切っても丸まるのね程よく弾力もあるし……。これってもしかして……。」


 まだ残っている蔓を滅多切りにしていく。


 ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン。


 『主ご乱心か……。』


 『体が小さいせいでやたらシュールに見えますね。』


 切ったものを茹でてざるに上げて乾かしてかごに集めてみる。籠の中に手を突っ込んで感触を確かめると籠を持って自室に急ぐ。


 袋状に塗った生地の口を半分ほど縫い進め糸をつけたまま表に返してフゥジィを加工したものを中に詰めていく。それから口を縫い目が表にでないようしっかり縫い糸を切る。


 「できた!これはなかなかいいかもしれない。」


 完成したクッションを抱いてムニムニと押してみる。程よい反発と指の間にフィットする。これはいい。抱き枕もよさそうだ。


 思わぬ本日の収穫にニマニマしながら針を動かし続けるのであった。



ご覧いただきありがとうございます。

できればここに設定とか空きこみたいと思いつつ多忙になかなかできず申し訳ないです。

できれば設定資料イラスト付きで描いて毎回載せたいのです(理想)ぼちぼちがんばりま~す。

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