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なまえのないきみへ  作者: 燈/銘花
4/7

The man who go out his hometown

何も分からない世界で出会った、何も分からない状態の少女。

彼女に外の世界を見せることを約束し、リルはまた街に出る。

城下の街並み、新しく店を開こうとする男などいろんなものを見せていく中、リルはルカに同居の申し出をする。

そして、ルカにも少女を紹介することを決意。紹介して最初に行ったのは『名づけ』だった。

目を開けると、そこは俺の部屋だった。


「すごい体験しちゃったよ…」


ルカはさっきまでのことが信じられないようだ。

まあそうだろう。最初は俺自身夢かと思ったぐらいだし。


「俺も、まだあの世界についてはわからないことが多いんだが…」


とりあえず、現実に引き戻さねば


「だよねぇ…まるで私たちの街みたいなのもあったし…ってかそのものだったし!」


そう。ルナの世界は、間違いなく俺が見せた風景で出来上がっている。


「そうなんだよな…たぶん、俺がルナに見せた風景で出来上がってるんだよ。」


「リルが見せた…ってどういうこと?」


「ああ、そっか。、まだ言ってなかったっけ。」


すっかり、言ってある気になっていた。


「この、耳飾り。ここからルナはこの世界を見ているんだ。」


「へぇ…本当に何でもできるんだね、ルナは…」


感嘆のため息を漏らしながらルカが言う。


「ああ。本当に、ルナには驚かされっぱなしだよ…」


俺が今まで見たことのない魔法ばかりだ。

あれはもはや魔法の域を超えている気もするが、おそらく先天的な魔力の違いなのだろう。

どうして、彼女があの世界に一人でいるのかは分からないが。


「あっ、私そろそろ戻らなきゃ。みんなを心配させるわけにもいかないしね。」


確かにそうだ。そうなんだけど…一応婚約してるはずだよな…


「そうだな。じゃあ、また明日。」


でも、ルカの方からそんな風に言われたらこう答えるしかないよなぁ…


「うん!じゃあ、また明日!」

笑顔で答えてルカは帰っていった。

うん、なんか、こう…ね。



次の日。

いつものように街に繰り出していくわけだが。

昨日までは無かった、でも何なのかすぐにわかるものがあった。

それは、少し大きなテント。

テントの前には看板があり『売ります、買います。格安で!ヒラソルの出店』

とある。

ちゃっかり買取まで格安にすんなっての。


「またあいつか…まさか一晩でここまで…」


流石にこの行動力には驚いた。ルカも店に行くときに見たのだろうか?

そんなことを考えていると、中からあいつが出てきた。


「あっ!今度はお一人で来てくれたんですか?」


「ああ…来たというかお前の行動力に驚かされていたところだよ。」


思わず苦笑してしまう。

本当に、昨日は小さな出店だったのに…


「お褒めに預かり光栄です!まあ、これまで何度もこういう作業はしてますからねぇ」


言いながら、品物を並べていく姿はまさにベテランの行商人だった。


「すごいな、本当に。こういうスキルは羨ましいよ。」


そう言うと、ヒラソルは不思議そうにこちらを見た。


「あら、そうですか…これはスキルっていうよりも慣れですよ?…王子?」


突然、小声で正体を見抜かれた。


「なっ、お前…!」


「あ、やっぱりそうでしたかー」


何食わぬ顔で言ってくる。小声でってことは、隠してるってこともお見通しかよ…!


「はぁ…こんな風にばれるなんてな。びっくりだよ。なんでわかった?」


「そりゃ、わかりますよ。この国の上位にいらっしゃる方々のことは調べましたからね。」


そりゃそうか…この国で商売していこうってんだしな…


「で、その人たちを見ていったらあらビックリ。この店に来てくださってたじゃないですか!ってわけで…」


まあ、わかってしまうのも無理はないだろう。

だが、まさかこんなにも早くばれてしまうとは思わなかった。

流石は行商人、とでも言ったところか。


「流石だな…だが、一応こうして変装してきてるんだ。黙っておいてくれよ?」


そう、念を押すとヒラソルは軽く笑いながら、


「そんなのわかってますよ。せっかくここで商売させてもらってるのに、そんなことで撤去なんて嫌ですからね。」


と言う。


「ははっ、それもそうだな。」


「言わないでおいてくれるのはありがたいし、この店のことは不問にするよう言っておくよ。」


「それはありがたい。今後ともご贔屓に!」


全く、こう言わないと何されるかわかったもんじゃない。


「じゃあ、俺はもう行くがやり過ぎるなよ?あんまり安く売り過ぎると周りの店から反感買うからな?」


「それもそうですね…程々にしておきます。」


苦笑いを浮かべながらヒラソルはそう言った。


さて、ルカの居る店に向かおうかな。

昨日のこともあるし、しっかりルナの今後についても話しておかないと。

…といっても、そのルナが俺の耳飾りから見てるんだけどなぁ。

店のドアを開けると、いつも通りのルカが待っていた。


「いらっしゃ…あ、今日も来てくれたんだね!」


「ああ、やっぱりここが街の中でも一番落ち着くしな。」


…周りの視線が痛い。

ここの男性客の何割がルカ目当てだっていうんだ…?下手したら貴族の夜会に出た時よりにらまれてるかもしれないぞ…


「それじゃあいつも通り…コーヒーとミートパイ貰おうかな。」


「うん!じゃあ適当な席に座っててね~」


店の中はもう賑やかで、適当なって言われても座れる場所が殆どない…

とりあえず空いていた席に座り、注文したものが届くのを待つ。

両脇からの『オイオイどういう関係なんだよぉ…』って言う感じの視線がすごい。

もう、怒ってる時の衛兵よりも凄い覇気を出してるんじゃなかろ―か?

そうこうして待つ事数分。


「お待たせしました!当店特製コーヒーとミートパイです!」


うんうん。何時見ても美味しそうだ。

だが、この様子だとルナのことについて話してる余裕はなさそうだな…

仕方ない。また、ルナに街を見せて回ろう。リルと話せる時間はここだけの物じゃないし、ここでもし二人で長話なんてしようものなら周りの今にも襲い掛かってきそうな迫力のお客さん方に『ちょっと裏の空き地に来てもらおうか』的なノリで呼び出しを食らいそうだ。


「さて、今日はどこを回るとしようか…?」


と、思案しながら歩くルートを考える。

この国は比較的治安がいいが、暗い部分が全くないわけでは無い。

そんな部分を、今のルナに見せるわけにはいかない。

いつかは、見せなければならないだろうが。

だがしかし、それは今ではない。


「今日は、花畑に行こうかな。少し遠いけどとても綺麗だ。」


《今日はお花畑なの?楽しみ!》


と、頭の中にルナの声がした。


…これは、テレパシー?


《ルナもこの魔法が使えたのかい?》


《うん!この魔法楽しいもん!》


《そうか。こうやって外でも話せるのは楽しいな。でも、他の人に使っちゃだめだぞ?》


《わかってるよ!だって、他の人はこの魔法使えないもんね!》


《ああ、そうだ。流石、ルナは良い子だからよくわかってるな》


《えへへ、褒められちゃった。勝手に使ったりしないもん!》


《よし、じゃあ今日も色んなものを見に行こうな!》


《うん!》


今日いきなりルナがテレパシーを飛ばしてきたのにはびっくりした。教えても居ないし、自分から使ったわけでもないからだ。

…先に、魔法は他の人に使わないよう言っておくべきだった。もし、他の客にテレパシーを飛ばしていたら…怪奇現象か何かだと思われるかもしれない。


「危なかった…」


あやうく営業妨害だ。



そして、美味しくミートパイとコーヒーを頂いた俺は、花畑に向けて歩き出した。

道中、ヒラソルの店のチラシが見えた気がするがそこはノーカウントでいこう。

彼の行動に一つ一つ反応していてはキリが無さそうだ。

歩くこと三十分から一時間ほど。目の前には見渡す限りの綺麗な花々が広がっていた。


《どうだ?綺麗に見えるか?》


《うん!赤、青、黄色…紫とか橙色のもあるね!》


《よく見えてるようで良かったよ。しばらくこの辺りを見て回ろうか。》


道順に従って歩いていくと、季節の花々が出迎えてくれた。

同じ花でも、赤いものや青いものなど色が違ったりしており、色彩豊かな花畑が作られている。


「これは…魔法か何かで色素をいじったのか?」


どうしても、気になってしまう。

園芸などにはてんで疎いので、何がどうしてこんなにきれいな花畑が作られるのかが想像もできない。

すると、


「はっはっは!さてはお兄さん、園芸の初心者だね?」


と、横からいきなり現れたおじいさんに思いっきり笑われてしまった。


「はい…全然わかりませんね。」


「こういう花たちはね。人類の努力と英知の結晶なんだよ」


どこか誇らしげに、おじいさんは話す。


「これ、魔法で作ったわけじゃ無いんですね…?」


「ああ、もちろんさ。何年も、何十年もかけて、こうして綺麗な花畑を作れたんだよ。」


「その花たちを『魔法で作った』なんて言ってしまい…申し訳ない。」


「いやいや、良いんだよ。魔法のように綺麗に見えたってことだからね。」


そう言っておじいさんはニヤリと笑った。


「あの…やはりあなたもこのような園芸などを?」


「やってるとも。しっかり手入れをしてやらんといかんからね。どれだけ年をとっても、この知識だけは忘れないともさ。」


蓄えた髭をいじりながら、これまた自慢げに話す。


「やはりそうでしたか…いつか、貴方の育てられた花も見てみたいですね。」


「また機会があったら見れるかもしれんさ。チャンスは案外いろんな所に転がってるぞ?」


「そのチャンスを見逃さず、いかに活かせるか…ですね。」


「ほう、若いのにわかってるじゃないか。なら、きっとお前さんならできる。がんばりなよ。」


そう言って男性は去ってしまったが…


「名前、聞きそびれたな…」


せっかく知らなかったことを教えてもらったのに、ちゃんとお礼も言えなかった。


「また機会があれば…みたいなことも言ってたし、この花畑によく来てるのかもな」


そう、呟いていると


《リル、本当に分からないの?》


とルナに言われてしまった。


《ルナはわかるのか?》


《勿論。ここでは超有名人だもん。》


《ここでは?って、どういうことだ?》


《リル、いつになく察しが悪いよ?》


《うーん、本当に分からないんだ。ヒントは無いか?》


《じゃあ、入り口に行ってみればわかると思うよ?》


《入り口?じゃあ行ってみるか…》


そして、入り口に戻る。

そこには、大きくあの男性の写真があった。

下には、こうある。


『オルド=フラウ この花畑の管理者であり、植物研究会の第一人者でもある。様々な花の品種改良などに成功、各季節でしか見られなかった花々をあらゆる環境に耐えうるように交配させるなどして、植物学会に革命を起こした。この時代にありながら魔法を一切使わない思考プロセスも、多くの支持を得ている。』


「……超有名人じゃないか」


写真はこれまで何度も見たことのあるものだった。

記憶を掘り返してみれば、城にも招かれていたことがあるかもしれない。

いや、たぶんある。


《ね?わかったでしょ?》


《ああ。ぐうの音も出ないな。》


全く、なんで忘れていたんだろうか。こんな超有名人を…


《最近疲れてるんじゃない?私でもわかったのに…》


《いや、何か忘れてる気がするんだ…》


《だから、オルドさんのことじゃないの?》


《違うんだ、もっと、こう、大事なことを…》


何か、あったはず。

そう思って、もう一度説明文を見る。

すると、見落としていた文があった。

それも、最近追加された一文のようだ。

そこには、こうあった。


『多くの支持を得ている。    昨年末、惜しまれながら病死。七十九歳だった。』


《……なあ、これって》


《……見なかったことに、しようか。》


《あははは…》


《ははは…》


そのあとすぐに、俺達は逃げるようにその場を去った。

一体あのオルド氏が何者なのかは考えないようにした。

ルナが珍しく震えた声を出していたのには驚いた。

だが、他では出来ない体験ができたと思う。ある意味で。

これもまたルナの成長につながってくれればうれしい。


「…後でルカにも話してやるかな。」


《うん!きっと腰抜かすくらい驚くよ!》


うん。もう怖がってもいないみたいだし、大丈夫だろう。

さて、どんな風に話してやろうかな…



だが、その次の日に話すことは叶わなかった。

別段大きなことがあったわけではない。

ルカが、風邪をひいてしまったのだ。これまでずっと働き通しだったのが祟ったのだろう。

それを聞いて、予定は昨日の話をすることから見舞いに行くことになった。


「ルカー、大丈夫か?」


「うん、今はだいぶいいけど移すわけにいかないから消毒ね!消毒!」


ルカ自身、マスクを付けて布団に入って完全防御態勢をとっている。


「ああ、たぶん大丈夫だと思うよ。それより、はい。」


来るときに買っておいた花を花瓶に生けておく。


「わあ、綺麗…わざわざ買ってきてくれたの?」


「こんなものしかなくてごめん。今日知ったもんで…」


「ううん、すっごく嬉しい!ありがとう!」


よかった、喜んでくれて。


「でも!やっぱり移すわけにはいかないからね。今日は早めに帰ることをお勧めするぞ!」


なんだかんだいつものテンションだが、こちらを気遣ってくれているのだろう。


「うーん、できればずっとここに居て看病してたいんだけど…」


「だめだよ?それやったら間違いなく私リルに風邪移すもん。王子なんだし、しっかり体調管理しなきゃ!大丈夫、すぐ治すから。」


そう言われてしまっては、もうここに留まる口実が思いつかない。


「うーん、だめかぁ。なら、早く治るように今度薬でも持ってくるよ。」


「ありがとう。でも、それまでには治しちゃうから!」


その後少し話は出来たが、長話をするのも体に悪いだろうし、今日は早めに退散することにした。


その帰り道…


《そういえば、ああいう軽い病気なら魔法で治したりもできるけど…》


「それは、ダメ。」


《あ、やっぱり?》


「それだと何もかも魔法で解決しちゃうことになるし、いきなり治ったりしたら周りも不思議がるだろ?」


《うん。何となくダメかなー…って感じがしたの。》


「それでオッケー。正解だよ。自分たちで何とかしないといけない時があるからね。」


《いつもリルは魔法で何とかできてもしないもんね。それってそういうことだったんだ。》


「うん。魔法じゃないとできないこともあるけど、そうじゃないことは出来る限り自分たちの手でやらなきゃ。」


《出来ることを自分たちで…そうだね!私も魔法だけじゃなくて、できることあればいいのになあ…》


「きっとあるよ。何もできないなんて、ありえないんだから。」


《うん、そうだよね!リルでもできることがたくさんあるんだし!》


ぷっぷー、と聞こえてきそうな笑いを混ぜながらルナが言ってくる。


「おい、それはどういう意味だ!」


《あはははー》


「あははじゃないぞ全く…」


それだと俺にできることが無いみたいじゃないか!割といろいろ仕込まれてるんだからな!


「だけど、これからどうする?」


《うーん、まさかこんな風になるとは思ってなかったからね…どうしよっか?》


「そうだな…今日はたまには真面目に仕事でもしてみるか。」


《たまには⁉》


「まあ、いつも真面目にやってはいるんだぞ?ただ、いつもよりしっかりやってるところをみせてやろう。」


《うう…何もできないみたいなこと言わなきゃよかった…》


「はっはっは。たまにはこういう、裏事情もみておくといい」


《むーーーーーー!》



場所は移って、城内。仕事部屋。

そこでは、どよめきが収まらなかった。


『おい…どういうことだ?』


『あれは本当に王子か?』


『いや、もしかしたら影武者を立てたのかも…』


おい。お前らはそんなに俺が仕事をしてるのが嫌か。

そんなにおかしいか!」

気にしていても仕方がない。今は今後のためにもやれるところまで一気に進めなければ。


『こんなことを言っているのに何も仰らないだなんて…』


『本当にリベルタ様なのか?』


…本当に、好き勝手言いよるな。


『待て待て。今は静かにしておこう。』


集中集中。


『あ、ああ。そうだな。』


『だが、もし偽物だったら…』


『いや、仕事の出来は確かだし、本人のはず…?』


「お前ら好き勝手言い過ぎだ!集中できん!」


「「「あ、リベルタ様だ。」」」


一体どんな評価基準で人を見ているんだか…


「わかってくれたならいい。もう少し違う評価基準を持て!」


「「「了解でーす」」」


「ったく…じゃあ仕事に戻るからな?」


『仕事に戻る…⁉』


『いつもなら抜け出される場面だぞ…?』


『やはりどこかおかしいのでは…?』


「ヒソヒソうるさいわ!おかしくないから安心しろ!」


「「「了解でーす」」」


「全く…」


そこからはうるさくなることは無かったが、俺は見逃さないぞ。ギルバード。お前衛兵の裏に隠れてずっとクスクス笑ってやがったな!

何で仕事してるとこんなに周りが騒がしいんだ…!


《ぷっくくくく…》


ルナ!お前も笑ってんじゃないぞ!


《ぷぷぷ…周りからあんなに言われるなんて、リルっていっつも仕事サボってたんだね?》


「さぼっちゃいない。必要最低限度ギリギリまでしかやっていないだけだ。」


《じゃあ、サボりにならないギリギリのラインをひた走っていたわけだ。》


「まあ、そうなるな。」


《だから、周りの人たちこんなにびっくりしてるんだね。》


「…そうなるな。全く、失礼な話だが。」


《あながち間違ってないから強く否定できないんでしょ?そうなんでしょ?》


「さーて、仕事仕事。」


《あっ。逃げた。》


今日のうちに今後の余裕も作っておこう。

そうすれば、きっとこれから自分の時間も増えるはずだ。



そうして、時間は過ぎ…


「はぁ、疲れた…」


ベッドに倒れ込みながら思わず声が漏れる。


《何時間やってるんだと思ったよ…》


「ああ…さすがにやり過ぎたかもしれない。」


まさか、衛兵たちに気が狂ったと勘違いされて仕事をストップさせられるとは。

しかも、『残りは自分たちがやっておきますので!』

だなんて。片付けくらい疲れててもできるわ。


《途中から私が何言っても聞いてくれないし…ちょっと心配したよ?》


「お前もか。」


《うん。流石に、いつものリルからは想像もできない姿だったもんだから。》


「そんなにか…」


《間違いないね。》


「じゃあ、今日も寝ますかね。」


《そうだね。じゃあ、おやすみ。》


「ああ。おやすみ。」



次の日、時間に余裕を持たせておいたこともあってちゃんと薬を持っていくこともできた。

ルカは『本当に持ってきたの⁉市販の奴で大丈夫なのに…』と言っていたが…

どっちが効くのかはよく分からないが、早く治ってくれることを祈るばかりだ。


《ルカ、早く良くなるといいね。》


「ああ、そうだな。でも、どうやら本当にただの風邪っぽいし大丈夫だと思うぞ?」


《そっか…それならよかった…》


心底安心したような声を漏らすルナ。


「本当に、心配だったんだな…」


《そりゃそうだよ!ルカの風邪が治らなかったらただでさえ少ないリルの友達がさらに減るんだから!》


おい、そりゃどういう意味だ。


「…………ほう?」


《…ゴメンナサイ。》


「よろしい。あと、ルカはもう『友達』じゃないしな。」


《そうだねぇ…!えーと、『奥さん』…でいいのかな?》


「ああ、まあそれでいいや。」


《あー!適当に流さないでよ!》


「ま、細かいことは気にするな!今日も街を見て回るかな!」


《話を逸らすなー!》


あぁ、ガキンチョの言葉なんて聞こえないなぁ。

今日も、平和だなあ。


そして、それからさらに二日後にはすっかり元気になっていた。

様子を見に行った瞬間に


「完全復活!心配かけてごめんね…?」


なんて言ってきたんだから、問題なさそうだ。

例の幽霊の話なんかはとても驚いていた。実際に会ってみたいとも言っていたが、あれは後になって効いてくる。普通に話せていただけに、怖い。

そして、この数日で決まってきていたことがあった。

ルカとの、式の日程だ。

その話をするとルカは顔を真っ赤にしながら驚いていたが、嫌そうな顔はしていなかったのが分かっていても嬉しかった。

日程はおよそ来週から再来週。昼から夕刻にかけて行われ、披露宴などはしない方針のようだ。そのあたりは第二王子であることや、兄の手回しがあったようだが。


「い、いよいよなんだね…!」


唾をのみ込む音が聞こえてくるのではないかと思うほどに緊張しているルカは、見ていて可愛い。


「まあ、今すぐじゃないわけだしそんなに緊張しないで…」


とは言っていたが、頭の中に響くルナの


《ルカの顔がまだ赤いけど…!風邪じゃないよね!大丈夫だよね⁉》


の声に何と返答するかに困った。

お前は人をからかえても知識が足りなすぎるんじゃないか?というか知識が限定的すぎる!


「そ、そうだよね…とりあえずお仕事行かなきゃ!」


「ああ、そうだな。体には気を付けろよ?」


「大丈夫!風邪引いちゃってた分も働かなきゃ!」


そう言ってそそくさと店に出ていく。


「いりゃっしゃいましぇ!」


…嚙み噛みじゃないか。


《あんなに舌噛んでたらそのうち口から血を吐きそうだよ…》


ルナにこんな事言われてるぞ?確かに俺もそう思うが。

まあ、元気になったのは本当みたいだし、良かった良かった。


さて、そこから我が家は忙しくなった。

第二王子の結婚と言うこと以上に、『俺』が結婚することが驚きらしい。


『まさか、あの王子に相手ができるとはねぇ…』


『それなら俺達にもワンチャンあるんじゃないか?』


『ああ、それは俺も思ってた。』


『俺、あきらめてたけどちょっと本気になってみようかな…』


なんて話がちらほら衛兵たちの間で囁かれている。

一体俺の評価は城内でそうなっていたんだ?


『リベルタ様かぁ…私ちょっと狙ってたんだけどなぁ…』


『私はクヴェル様のほうが好みかなー。できる男って感じで。』


『あー、それわかるわー…でも、リベルタ様はなんか凄い優しそうだし…』


云々。

そうそう。そういう話を聞きたいんだよね。

しかし、兄さんはやはり他人目に見てもできる人なんだなぁ…


《…嬉しそうだねぇ。ルカに伝えとこうか?》


「なんか誤解されそうだからやめておいてくれ。」


《そうなの?まあそれなら黙っとくけど…たぶん大丈夫だよ?》


だとは思うけどいいイメージ付かないだろ!


「とりあえず、『評判はいい』程度にしといてくれ。」


《はーい。》


さてルナの戯言はさておき、まずは来たる日までの分の仕事を終わらせなきゃな…


「えーと、まずはこれか…」


物価安定、城下での大きな問題は特になし、犯罪も少なく、他国との戦争の予兆も感じられず…って、平和すぎやしないか…やること少なくて助かるけど。

多分…いや、間違いなくいつもより仕事少ないし。


「これは、たぶん兄さんが裏で何かしらやってくれたのかな?」


《だと思うよー。私から見ても前に仕事真面目にやってた時と同じくらいの量に見えるもん。》


「だよねえ…これだから頭が上がらないんだよ。」


全く、兄さんには敵わない。こんなことしてくれていたなんて知らなかったから、周りに口止めしてたんだろう。


「さて、じゃあせっかくの厚意には甘えておこうかな。」


ってか、何気にこの書類の山も内容分かりやすいように整理されてる…


《至れり尽くせりだねぇ…》


「ああ、ありがたい限りだ。」


ここまで周りが動いてくれるとは思わなかった。後でお礼を言わなきゃな。




『あの王子からお礼を言われたんだが…』


『なんと⁉お前もか…いつもの仕事を少し張り切ってしまっただけなんだが…』


『おお、俺もだよ。まさかリベルタ王子にあんな美人さんがなぁ。』


『そうそう、俺ぁもう嬉しくて嬉しくて…!』


『泣くなって。言葉では喜んでるのに顔が怖いぞ。』


『だってよお…俺だってあんな嫁さん欲しいよ…王子は元々皆から好かれてたし、俺もそうだけど…

これだけは…!』


『納得いかない?』


『いや、納得いきすぎて腹が立つ。』


そんな兵士たちの特訓中の会話を…ルカは聞いてしまっていた。


「リル…!なんて良い人たちなの…!」 


先を越されて悔しいはずなのに《あんな美人で完璧なお嫁さんは羨ましい》だなんて…!


『まあ、お前にもそのうちいい出会いがあるさ。』


『ああ、ありがとよ。お前にもな。』


うん!きっとあるわよ!

ルカは心の中で叫びながらその場を後にした。



「むむむむむ…おかしい。」


《うん…おかしいね。》


リルとルナの二人は、書類を前にして唸っていた。


「明らかに、おかしい。」


《私から見ても、明らかだよ。これは何かあるね。》


そう。明らかにおかしい。

ここは第二王子の執務室で、今はその第二王子たるリルの結婚式が間近で。

こんなに…こんなに仕事量が少ないはずがないのだ。


「どうしてこんなに仕事が無いんだ⁉」


《その言葉はおかしいよリル!落ち着いて!》


「…ああ、そうだな…これじゃ仕事がしたくてたまらない狂人だ。」


だが、ここにある『今日の仕事』は厚さにしておよそ3センチ。

明らかに、日に日に仕事が減ってきている。


「なあルナ。これをどう思う?」


《新手の嫌がらせとか。》


「なるほど。その線で考えてみるか。」


《うんうん。で、最終的に何か事件が起こって、事件は執務室で起きていたーみたいな。》


「なんてこった…そんなことになったら仕事もできずにただ事件を見逃しているだけじゃないか!」


《そうとはかぎらないよ。まだ、できることがあるかも。》


「うむ。そうだな。して、何をするのが最善だと思われるかね」


《まず、この数十分で片付きそうな書類かな。》


「なるほど。目から鱗が剥がれ落ちてきそうな発想だな。」


と、そこで執務室のドアが勢いよく開く。


「あんたらは一体どんな会話をしてるのよ…」


「あ、ルカ。いらっしゃい。どうしたの?」


「どうしたのって…最近店に来なくなっちゃってたから様子を見に来たのよ。何かあったんじゃないかってね。」


「ん…あれ?そんなに行ってなかった?」


「そりゃもうこの一週間全く!前は二日に一回は少なくとも来てたのにいきなり来なくなるから心配してきてみたら…」


「そんなに行ってなかったのか…ルカとの結婚式のために早く仕事やろうとしすぎたのかな。」


《うーん、でも最初に見た時の量は結構あったし…まだ終わらないと思ったけど?》


「リル…あなたまさか本当は気づいてないの?」


「…え?」


「お城の人たち、皆であなたのために色んなことをしてくれてるわよ。その仕事量も、お城の方々の努力の賜物!」


「あー…何となく気づいてはいたからお礼を言ってたりはしてたんだけど…」


「なら遊んでないでやっちゃいなさいよ…聞こえる私は外で笑わないようにするのに必死だったんだよ⁉」


あー、確かにいきなり笑いだしたらおかしな人だな。


「まあ、そうだな…パパッとやって、久しぶりにあのミートパイを…」


とそこでルカが手を出してストップをかける。


「と、なるだろうと思って持ってきましたー」


「おぉ…準備は完璧だったというわけか。」


《これじゃ事件は執務室で起きちゃうね…》


「もう事後だ…気にしてはいかん。」


「その意味不明な会話をやめなさい!」


うーん、最近人気の刑事ドラマの名セリフだとルナが言ってきたのでやってみたのだが。

意味不明らしいぞ?本当に人気なのか怪しいな…

まあ、パパッと済ませてティータイムとしますかね!



「やり始めて十分もかかってないじゃない…」


《まさか全部目を通してあって確認のハンコ押すだけなんてね…》


「ここまでやってもらってるとなんか申し訳ないな…」


「まあ、せっかくのご厚意なんだからありがたく頂いておこうよ。ほら、冷めちゃうよ?」


「ああ、そうだな。じゃあ、いただk…」


《それ、食べてみたいな…》


「…こういう時にそれ言うかね。」


もうちょっとこうさ、空気ってもんがあるでしょ…⁉


「…でも、ここじゃ食べられないな。」


「じゃあ、あっちの世界なら大丈夫じゃないかな?」


そういうこと言わなくていいから!

ルカの優しさが今はおれのこころをえぐってるよ…


《ほらほら、ルカもそう言ってくれてるし。ね?》


「ああ、そうだな…じゃあ、入り口作ってくれ。」


《はいはーい》


目の前の空間が歪む。

その先はこちらからは見えないが、あの世界が広がっている。

いろんな体験をしてきて、リルの世界はどうなっているのだろうか?


「よし、じゃあ行こうか」


「うん!」


そっと足を入れると、もうそこには別の世界が広がっている。


「何度見ても、信じられないな…」


「うん。こんな魔法、聞いたこともないもんね。」


「普通はあり得ないんだけど、ルナの魔法の力はそれほどすごいってことなんだろうね。」


「流石に、国の宝なんて言われてるだけあるよね…」


なんて話をしていると、向こうからリルがこちらに駆け寄ってくる。


「何の話してたの?」


「ん?リルの話だよ。」


「ああ、どうやってこんな凄い世界を作ったのかなーってね。」


「うーん、どうやってかぁ…」


何やら考え込んでしまうリル。


「なんか、『こんな世界があったらいいなー』って考えてたらできてた!」


「………」


何の説明にもなっていない!

だが、逆に言えば何かを望んだらそれを作り上げてしまうほどの膨大な魔力を持っているともいえる。それこそ、世界を一つ作ってしまうほどの…!


「で、それはまだ制御できていない、と。」


「あー!今絶対リル私のことバカにした!」


「まだまだリルはガキなんだなーって思っただけだよ。」


「ほらやっぱりバカにしてる!」


いや、ただの魔法的観点から見たルナへの評価であってそのものの評価ではないぞ。たぶん。


「まあまあ二人とも、向こうの時間は止まってるけどこっちは進んじゃうんだから…」


そう言ってミートパイを取り出す。


「冷めちゃう前に食べないとな…ほら、これがルナの分。」


「おお…見ただけで美味しそうなのがわかるよ。こんなの持ってきてもらえるなんてリルが羨ましいよ!」


「はっはっは、そうだろうそうだろう?食べたかったら頼むんだぞ?」


「むぐぐぐ…」


「もうリルってばいきなり大人気ないなぁ…」


「いやいや、ルナにはいつも振り回されてるからね…ここで一発分からせておかないと。」


「むぐぅ…」


悔しそうに呻くルナ。これが、人質ならぬモノ質だ!


…何やってるんだろう、俺。


「まあ、ミートパイならまた作って持ってこれるし、ね?」


「そうだね!また次も食べたいなぁ…」


「任せて!腕によりをかけて作ってくるから!」


そこからは、よくルナの世界に行って一緒にルカの作ってきてくれるおやつを食べることになった。

…主にルナが食べてしまうが、こんな時間がとても幸せだった。

ずっとこんな時間が続けばいいのに、なんて漏らすと、ルカは決まって『それじゃあリルには旦那さんとしてこれからもっと頑張ってもらわないとね』なんて言って笑うのだった。

そして月日は流れ、ついにルカとの結婚式がやってくる。


目の前には花嫁衣装に身を包んだルカ。

一応、第二王子の結婚とあって人もあふれるほど押し寄せている。

大体の人が形式的な挨拶をしていくが、何人かの女性はルカを鼻で笑っているように見えた。あの家の方には後で直接話を聞きに行くとしよう。

ルカが残念がっていたのは、リュミエール義姉様が出席なさらなかったことだ。

城の中で何度か会っていたそうだが、今日は体調がすぐれないだとか。

兄様は来ているのが少し不思議だが、おそらく薬を飲んで良くなっているのだろう。

…もしくは医療魔法の使い手を呼んだのかな?

まあ、そんなこんなで俺がルカとの契りをかわし、周りの大人がはやし立ててきたり酔っぱらってたり酒臭かったりして大体は終わっていった。

結局、市民の方々はお酒飲みに来ただけでは?違うことを祈りたいけど…酒税の見直しが必要かもしれない。


式が終わると、兄様がこちらに手招きしてくる。

あれは…『一人で来い』のサイン?

オラリオン王国軍の指揮に使われるサインで呼び出す…つまり、それなりの案件だ。

少しの緊張を感じながら、兄様に近づく。

そして、兄様はこう言った。


「早くこの城を出たほうが良い。」


と。

話によると、リュミエール様は体調不良でもなんでもなく、ルカを暗殺する手はずを整えていたらしい。

リュミエール様は子をお産みになることがもうできない。

ルカが男を生み、第二王子が正当継承権を得るのを恐れたらしい。

彼女は、ゆくゆくは自分の娘にこの国の王女となってもらいたいのだろう。


「だからって、そこまで…それに、そんな話聞いたこともありませんよ!」


思わず声を荒げてしまう。そんな権力争いでルカが殺されてたまるか!


「残念だが、事実だ。俺もつい先ほど襲われた。」


そう言いながら出してくる右手には、深い切り傷があった。


「そんな…!」


すぐに治癒魔法を使いながら、案を出す。


「兄様の『修復』で義姉様はどうにかならないのでしょうか?」


「残念だが、無理だ。彼女は『壊れた』のではない。『狂った』んだ。権力に。」


「壊れてないから、修復できない、ってことですね。」


「ああ。これまでの戦争相手国にはまだ交渉の余地があったり、国民からの反対で気持ちが揺れてい

たりしていたからそこに付けこんで『修復』することができたが、今回は…」


そう言う兄様の顔は苦痛に歪んでいた。

自分の愛した人が、自分の弟の妃を殺し、それを止めようとするなら婿である自分さえも殺しにかかってきたのだ。


「だから、早く逃げろ。この国の郊外に一軒家を匿名で買っておいた。あそこならまず見つからないだろう。父上からその地域の所有権を俺に譲ってもらっているしな。」


その辺りの事前準備は流石としか言いようがない。

だが…


「他国に、逃げたほうが安全では?」


「残念だが、隣国から雇われた暗殺者だ。他国のほうが危ない。」


そういうことらしい。


「では、今夜中にその場所へ向かいます。座標を。」


「ああ、頼む。イー890―48124―ハだ。すぐ発ってくれ。」


「わかりました。兄様もお気をつけて。」


「ああ。俺はまだこんなところで死ねないからな。」


すぐにルカに駆け寄る。


「あ、リル!これすっごく…」


「行くぞルカ。話は動きながらする。」


ルカを抱えながら部屋を出ていく。

去った部屋からはなにやらざわめき声が聞こえるが、きっと兄様が上手くまとめるだろう。

今は、ルカを守らなくては。


「…リル?どうしたの?」


「今、ルカは命を狙われている。だからこの城を出て暮らさなきゃならなくなった。」


「そんな…!せっかく一緒に居られると思ったのに…!」


命を狙われてることより、そっちの感想が先に出てくるのはすこし嬉しいが、不安でもある。


「そこは大丈夫、一緒に暮らせるから。あと、ルカは絶対に死なないことを今は考えて。」


「うん、わかった。」


外に出ると、荷馬車が用意してあった。

御者は…見た顔だ。


「まさか御者にもなれるとはね。でも、よろしく頼む。」


前に座っているヒラソルに声をかける。


「一応世界中回ってますからね…じゃあ行きますよ!1キロ3ゴールド!」


「金取るのか⁉」


その叫びはむなしく夜の闇に消えたが、馬車の中にあった兄様からの手紙によるとすでに払ってあるらしい。

そして、向こうでしばらく困らないだけのお金、服、そして鋏が用意してあった。


「髪…切ることになるけど大丈夫?」


と聞くが早いか、ルカはばっさりと髪を切り落としていた。


「大丈夫!邪魔だったし!」


着替えはお互い見ないことを取り決めて完了。

お金は財布に入れて、着ていた服は馬車に放置。

最後にこの馬車は崖に落として馬は逃がしておく算段らしい。

そして家の鍵、土地代等は払っておいたという至れり尽くせりの文の最後に端書があった。

Ps もし俺や父上に何かあっても生き残って、お前がこの国を元に戻してくれ。リュミエールは思った以上にこの計画をよく練っている。


「兄様…父上…」


今は無事を祈るしかない。



明け方には例の家に着いた。

ヒラソルは『協力しちゃったからもう怖くて向こうには戻れない』などと言ってこっちで店を構え始めた…大した奴だ。

家の中には一般的な家具がそろっており、よく見ると奥のほうに赤ちゃん用の遊具も見える。


「「………」」


なんかもう、準備が良いとかじゃなくて元々この家をプレゼントしようとしてたんじゃないかって気すらしてくる。


「兄様の考えを予測するだけ無駄かな…」


そう、いつも何を考えてるのか予想もつかない。


「ん…?」


ふと、設置されていた机を見ると、見取り図が置いてあった。

二階にはちゃんと一人一人の部屋が用意されているらしい。

…子供部屋まで。


「余計なお世話だっての」


とぼやくが、ここまでされてしまってはまだまだ兄様には敵わなさそうだ。


「んじゃ、見てみますかね…」


見取り図に沿って見てみると、部屋には使い勝手の良さそうな机などが揃っていた。


「こりゃ、絶対に前々から画策してたな?」


流石にあの状況ですぐにここまでの用意は出来ないだろう。

ともなれば、以前からこの場所を作っていたとしか考えられない…

こんなことまでしていたなんて、一体どれだけ気を使ってたのやら…


「今はこの厚意に甘えるしかない、ってね。」


せっかくの厚意にはちゃんと甘えて、仕事とかは自分でさっさと探さなきゃ。

甘え過ぎはよくないもんな。うんうん。


「リルー?どこ?」


下からルカの声がする。そういえば見取り図見せるの忘れてたな…

下に降りて、お互いに自分の部屋を確認したり。

外に出て、近くの市場を見て回ったり。

市場にはもうヒラソルが馴染んでいてびっくりしたり。

ヒラソルの実家がここから近くてもっとびっくりしたり。


色んなことがあったが、すぐに仕事も見つかった。

このまま、平穏な日々が続くことを切に願う


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