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負けイベントは序盤あるある


 頬を引き攣らせながら振り返る。背後の立派な植木に深々と刺さるククリナイフを一瞥し、餝は冷や汗を流した。

 全く意識していなかったこともあるが、直前までこの刃物の飛来に気が付かなかったことが堪らなく恐ろしくなり、脚が大きく震えた。

 餝の勘は間違っていなかった。どうやら、目の前の存在は、友好的に接することが出来るような人種ではないらしい。


「私、待つよりも待たせる方が好きなの。お早く出て来なさいな。でないとーー」


「ひゃいっ!」


 餝は、言われるよりも早くその場で立ち上がると、ピシッと敬礼までしてみせた。

 側から見ればふざけた態度であるが、生憎今の餝にふざける余裕はなく、ただただテンパっているだけである。

 右手を額に当てながら左手では服の端を強く握った。じわりと滲む手汗が、服に馴染んで幾分か気が晴れた。


「あ、あはは……どもぉ〜……」


 黒衣の人物は、やはり女で間違いないようだった。

 黒衣の女がこちらを向いたことと、それを正面から見据える事が出来る状況になって、漸くその顔を拝む事が出来た。

 鋭い視線と底冷えする様な雰囲気を纏った恐ろしく美しい女だった。

 目深く被った黒いフードからは、青紫色の髪が覗いており、鋭い視線を発する瞳は、月の様な黄金色であった。その見た目は、明らかに日本人離れしていた。

 月の瞳に睨みつけられた餝は、下手くそな作り笑いで曖昧に誤魔化すしかなかった。


「あら、珍妙な格好のお嬢さんね」


「ち……?ーー珍妙とは失礼な!そそそそりゃ引きこもりだけど、ネットで流行は抑えてるもん!結衣も可愛いって言ってくれるもん!」


 餝の姿を見た瞬間、存外にも警戒を解いた黒衣の女に、餝は思わず食ってかかる。

 奇抜なファッションで批判を買うならまだしも、無難な流行ファッションで文句を言われる筋合いなど無かった。

 たが、ここは異世界であり、美的感覚が違う可能性は十分にある。そこをがん無視している辺りが餝らしい。


「貴女の方こそ、全身真っ黒で喪服ですかって感じなんですけど!?そんな人にセンスを問われる謂れはない!」


 折角警戒を解いてくれたのだから黙っておけば良いものを、言われたら言い返す、やられたらやり返すの精神が久々に刺激されて、余計なことまで突っ込んでしまう。

 餝は、元来我慢が苦手な方であり、ここ数年塞ぎ込んで暗くはなっていたが、虐めに対して屈する事はなく、いつも倍返しをしていた。

 しかし、ある時餝の仕返しが原因で結衣が傷付けられる事件が起きてしまい、それ以来は反抗心がめっきり無くなってしまったのだ。

 だが、内で燃える復讐心は、消える事なく蓄積されていたりして。時折クレイジーな行動を取ることもあった。

 そんな、一見やばい娘な餝ではあるが、敢えてここで明記しておきたい。餝は馬鹿ではない、成績は学年一位だ。


「センスはともかく、その衣類が珍しいと言ってるのよ?私の知らない素材ね」


「っ!?」


 しかし、かなりの阿呆である。

 自分が今未知の世界の未知の存在を警戒しているように、向こうもまた此方を知らない。その上、知らない情報が大きくなろうものなら、益々警戒するのは当然の事だろう。

 今餝が成すべきは、対立する事ではなく、穏便にこの場を切り抜け、あわよくば人里まで連れて行ってもらうの一点に限る。


「それから、喪服という貴女の見立てはあながち間違ってないわ。だって、ここにはとある人物が眠っているのだから」


「……お墓なの?」


「そうね、それに近いわ。ま、これは仕事着であって、お墓参りに合わせた訳ではないのだけれど。それよりも、貴女はそんなことも知らずにここへ何をしに来たの?」


 黒衣の女は、話せない相手ではないらしい。存外異世界人の餝でも会話は成り立っていた。

 取り敢えず第一段階をクリア出来たとほっと息を吐くも、此処からは自己紹介タイムのパターンだ。

 お互いの状況を理解し合う事で分かり合えることもあるかもしれない。

 気合いを入れてよし、と意気込んだのは良いものの、そもそも餝自身が自分の置かれた状況を理解出来ていないのだからお笑い種である。


「わ、私は、その、気づいたらこの遺跡にいて、ですね……」


「……ふぅん?」


「あ、あの螺旋階段の上の、なんか台座?みたいなのがある部屋で目が覚めまして……」


「……天啓の間かしら?」


「だ、だから出口を探してて……」


「出口を探してたら、逆に深奥まで来ちゃったの?おっちょこちょいなのね」


「深奥!?ぐ、否定できない」


 何も嘘は言っていないのだが、異世界に来たと言う可能性が拭いきれない以上、無闇に自分の情報を晒すのは得策では無い。必要最低限の情報で相手を納得させるために、餝は言葉を選びながら女の問いに答えた。


「……それで?本心は?」


「は……?」


 しかし、どうしてこうなったのか。ありのままを語っていただけの筈なのに、いつのまにか会話がおかしな方向へと流れ始めている。

 心なしか、黒衣の女の表情も多少和らいでいたものから最初の氷点下の顔つきに戻っていた。目付きが鋭くなり、まるで心まで射抜かれているような気分にさせられる。

 何だ、何を間違えたのだ。自問自答を繰り返しても、ここ2年間は結衣と親戚、お店の店員くらいしか会話相手のいなかった餝には理解が出来なかった。

 だが、そう難しい話でもないだろう。最初から黒衣の女は、餝に気を許していなかったと言うだけの話だ。


「あのね、神徒の遺跡はたまたまで辿り着けるような所じゃないの。見たところ魔力や武威は感じられないけれど、貴女も何かしらに相当長けた人物なのでしょう?そしてこれを取りに来た」


「……剣?」


 黒衣の女が、女体の像が胸に掲げる一振りの剣を指差した。

 勇ましい女の像に掲げられるそれは、赤金色の剣身を持つ神秘性を感じる代物だった。まるで血のような真紅の鍔や柄に生える一本の牙のようなそれは、灰色の像という夜空の中で煌めく星に見えた。

 一目見ただけで、相当な価値を持つお宝であることは理解出来る。となれは、黒衣の女は、この剣を求めてやって来たトレジャーハンターあたりだろうか。そう考えると、わざわざこんな危険な場所を訪れた事も理解出来る気がした。


「悪いけれど譲るつもりはないの。だからーー死んでくれるかしら?」


「っ!?」


 言うが速いか、目にも留まらぬ速さで腰のククリナイフを引き抜くと、そのまま手を返して切り上げてきた。餝がこれに反応出来たのは、それこそ奇跡と言って良かった。

 ほんの僅かに体を逸らして刃の軌道から逃れる。側から見れば達人のそれ。しかし、実情はそれしか出来なかっただけである。


「は、はぁ!?ふざ……ふざけないでよ!危ないじゃない!」


「避けた……?なら、これは……?」


「ちょっとぉ!?」


 黒衣の女は、もう片方の手にもククリナイフを握ると、物凄い勢いでそれらを巧みに繰り出し始めた。

 その悉くを既の所で躱していく。鼻先を掠めたククリナイフが、餝の前髪の数本を攫っていった。


「貴女ねぇ!いい加減にしなさいよ!」


 上方からの切り下げに対し、手首を掴んで防ぐと、躊躇いなくもう片方のククリナイフが横薙ぎに迫った。

 その軌道から逃げるように、直ぐに腰を落とすと数回転がった。

 僅かに距離を取って立ち上がると、餝は側の木に刺さったままのククリナイフを力一杯引き抜いて、見様見真似で構えた。


「もう怒った!警察に突き出してやる!」


「あらあら、全部避けるだなんて凄い身体能力ね。もしくは……運が良いだけかしら?」


 右手に握っていたククリナイフが異様な速度で投擲される。餝は、その軌道を見極めて、進行方向上にしっかりと構えたククリナイフを置いた。

 金属のぶつかる甲高い音と共に、鋭い衝撃が手首を痛めつけた。だが、餝の狙い通りに女の放ったククリナイフはそのまま地面に落ちた。

 やった、と内心ガッツポーズの餝であったが、視線を戻すと、女は既に腰に残っていたククリナイフを引き抜いて二刀流で目前に迫っていた。


「んぇ!?絶対プロじゃん!?」


 どうにか避けようとしても間に合いそうもないため、餝はその場で思いっきり脚を蹴り上げた。すると、目の前にあった植物の葉や花が宙を舞い、僅かではあるが女の視界を塞ぐ事が出来た。

 それでも、女は躊躇う事なく二振りのククリナイフを鋭く振るって来る。餝は、片方をククリナイフで流し、もう片方はがむしゃらになんとか避けてみせた。

 しかし、避けた結果脚をもつれさせ、側にあった割と深い水路に落下した。

 この女、幸運の女神にでも愛されているのか、これ幸いにと流れに沿って泳ぎ、黒衣の女との距離をぐいぐいと離していく。


「……やるわねぇ」


 投擲に使って地面に落ちていたククリナイフを腰の帯に入れると、女は驚異的な脚力で飛ぶ。水路の脇に群生している木々の枝を次々に飛び移りながら、餝の後を追っていく。

 一方、必死にクロールで泳ぎ続ける餝はと言えば、心の中で悪態を吐いていた。


(何なのあの女!?あれが戦闘狂って奴!?話通じないとか本当に勘弁してよね!!てか今更だけど、言葉は通じるようで良かったよちくしょう!!)


 言葉は通じているのに話が通じないとは何とも嘆かわしい現状である。

 異世界に来てまだ数時間の餝にとって、殺し合いなんてものは勿論経験がない。だが、相手は相当な実力者だろう。一連の戦闘から、経験のない餝でも相手の女が相当な手練れである事は理解出来た。

 最早人里に連れて行って貰うなんて選択肢が浮かぶ筈もなく、餝の行動指針は完全に逃げることへと切り替わっている。

 何メートル泳いだのかわからないが、突如前方で水音が響いた。直ぐ様泳ぎを辞めて前を見れば、先程の女が流れの先で餝を待ち構えているではないか。


「なんでこんな事するの!?私何もしてないじゃん!?」


「仕事中の不安要素は消しておかないとね。私、完璧主義なの」


「誰かこのイカれた人に通訳してよ!」


 次の瞬間、餝の腹部を鋭い衝撃が襲った。女の放った蹴りが鳩尾にクリーンヒットし、声にならない叫びが喉から漏れた。

 生まれてこの方、暴力の伴う喧嘩なんてした事なければ、勿論誰かから殴る蹴るなんて受けた事もない。家族の命を攫っていったタンクローリーですら、餝からすれば腹に響く衝撃を受けた程度で大したダメージはなかった。

 強いて言えば、先程の怪鳥との共同ダイブが一番痛かったかもしれない。そんな餝からすると、女の蹴りはこの世の痛みとは思えなかった。

 痛みに悶絶する様に水流の中に落ちる。

 女は、餝を担ぎ上げると水路から上がり、先程の像の前まで戻って来た。


「さて、まだ試してない事があったわ。ーー生贄って奴ね」


 餝は、気を失ったわけではないが、あまりの痛みに立ち上がる事も出来ず、無様に地面に転がされていた。

 どれだけ腹をさすっても痛みが消えることはなく、これは数本持っていかれてる(・・・・・・・・)かもしれない。

 苦しさに呻きながらも、生贄という不穏なワードに焦りが隠せなかった。


「嘘、だよね……?」


「ーー嘘を吐く意味は?」


「……無いです」


 必死に起き上がろうとするも、直ぐに肩を踏みつけられて地面に縛られた。これは、本格的にやばい展開なのでは無いだろうか。

 感じたことのない程の焦りと恐怖から冷や汗が止まらない。もしかしたら、主成分はコーラかもしれない。


「試したことのない事が試せる。貴女との出会いに感謝しないといけないわね」


「……こちとら最悪の出会いですよ阿呆」


 振り上げたククリナイフが寸分違わぬ軌道で餝の胸を穿つ。流石に全てを諦めて目を閉じるも、いつまで経っても恐れた痛みはやって来なかった。

 死ぬ時は、案外呆気ないものなのだろうか。恐る恐る閉じた目を開くと、そこにはククリナイフを弾かれた女が立っていた。

 信じられないものを見る様な目で餝を見つめた後、像の方を睨んで叫び出す。


「何故だ!何故私ではなくその娘を選ぶ!?」


 異様な女を尻目に、餝は自身の胸元を見て目を見開いた。ククリナイフで貫かれたと思った胸は元のまま残っており、眩く発光する何かに護られていた。

 それは、まるで結衣の姿が搔き消え、この世界に来る直前に見た時のような優しい光。

 数回の明滅の後、発光が収まった餝の胸の上には見覚えのある剣が乗っていた。視線を像の方へ移すと、そこにあったはずの剣がなくなっている。


(……はれ?凄く嫌な予感がする)


「……答えないのね……娘、やはりその命置いていきなさい」


「やっぱり!?」


 女は、再びククリナイフを振りかぶると、餝の胸を狙って振り下ろした。

 しかし、餝は胸の上の剣を握り、迫り来る二振りのククリナイフを弾き飛ばすと、バク転を数度繰り返して女に相対した。

 赤金の剣は驚くほど軽く、剣なんて握った事もない餝の手に良く馴染んでいた。自分でも予想外な程アクロバットな動きが出来て驚きに目を見開く。


「まさか、もう適応したというの!?」


 一方、餝の動きを目にして僅かに後ずさる女。その尋常ならざる態度に対して、大分冷静になって来た餝は漸く理解が追いつき始める。

 先程女から受けた蹴りの痛みは、いつのまにか無くなっており、身体がやたらと軽い。そして、右手に握り締めたやたらと存在を主張してくる赤金の剣を一瞥して叫んだ。


「やっと来た異世界チート!残念無念こっからは餝ちゃんのターンです!さぁさぁ謎の通り魔さん!神妙にお縄に付けぇい!」


 やたらと芝居掛かった動きで剣を両手に構えた。対して女は、弾かれたククリナイフなど気にもせずこちらを見つめている。

 緊張に包まれた静かな空気の中睨み合う事数秒、深い溜息を吐き出した女が徐ろにフードを脱いだ。

 現れたのは、やはり恐ろしく美しい顔である。フードで見えなかった髪型は、後ろ手に結ばれた三つ編みのようだった。色合いといいこの女の特徴といい、まるで蠍のようだと餝は思った。

 女は、そのままコートを脱ぎ払うと適当に地面に放った。

 コートの中身は、黒で統一された軽装だった。露出が激しく、コートを着込んで隠していたこともあって、日本で見たら完全にやばい奴である。ーーいや、実際にやばい奴ではあるのだが。

 しかし、餝は本能的に理解していた。この服装は、非常に理に適った作りをしている。

 関節部を締め付けるものは何もなく、それでいて簡単に各々のパーツが外れないように互いに絡みついている。そして、所々に仕込まれている暗器の数々。動きやすさを重視したまるで暗殺者のような服装だった。


「わかるわよね?残念だけれど遊びは終わりよ」


「ほほう、覚醒した私を前に自信がおありで?」


 餝が安い挑発を口走った瞬間、女の両肩が眩く輝いた。嫌な趣味のタトゥーがあるなとは思っていたが、それがまさかLED顔負けの光量で光り出したものだから、餝は目を剥いて警戒する。

 果たして、次の瞬間には輝きは収まり、女の手には二振りの禍々しい剣が握られていた。両方共剣身は同じ黒紫だが、それぞれの鍔は赤と青で別れている。特筆すべきは、剣身に血管のように走る紋様が不気味に明滅しているところだろうか。


剣紋者(ソードマスター)との殺し合いは久し振りね。心が踊るわっ!」


「……うそやろ」


 刃を交え無くても伝わってくる尋常じゃない程の気配。それは、餝の握る赤金の剣に匹敵するものだ。そんな代物を二振りも女は顕現させて切っ先をこちらに向けて来た。

 果たして物の性能は互角で、数は向こうの方が多く、その上技術と経験の両面で劣っている相手に勝てるだろうか。


「ーー無理に決まってんでしょーが!」


 餝は、全力で駆け出した。後ろを振り返る事なく、ただひたすらと駆けて行く。

 赤金の剣を手にしてからというもの、やたらと身体が軽かった。まるで、人ではないかの様な驚異的な身体能力を駆使して飛んで走って必死に女から逃げる。

 後ろからは、狂気的な笑い声と共にとんでもない破壊音が断続的に聞こえてくる。餝は、振り返る事なく兎に角全力で逃げに徹した。

 どれくらい走っただろうか。女もやたらとしつこく、未だに後方では恐ろしい破壊音が轟いている。何とかして巻くために何度も角を曲がりながら遺跡の中を走っている時だった。通路の奥に不意に人が現れたではないか。

 その人物はといえば、餝とそれを追いかけてくる謎の崩壊を目にして凄く驚いた様子をしている。今の餝に最早相手を警戒する余裕などなく、現状に驚いている点から後ろの女とは無縁であることを理解して飛び付いた。


「うわぁっはー!たーすーけーてー!」


「へ?へ?」


「殺されちゃう!」


「ちょ、貴女は……?」


 飛び付いた相手は、可憐な女性だった。肩口で切り揃えられた白金麗(プラチナブロンド)の美しい髪から、一房だけが流星の様に背中へ流れ落ちている。幾何学的に複雑な色彩で輝く紫水晶のような瞳は、作り物のようでありながらも人の手が加えられていない自然な美しさを感じた。

 そんな麗しの女性はといえば、突然現れ明らかに厄介ごとに現在進行形で絡まれている少女に手を取られて戸惑っている。対する餝はーー


「ごめん!助けてって言ったけど、よく見たら貴女超可憐!腰に剣下げてるけど絶対私よりか弱い!」


「ぇえ!?ちょっと失礼じゃない!?」


 などと、人を完全に見た目で判断した上で手を掴んだまま走り出す。

 しかし、このままだとジリ貧だ。いつ黒衣の女に追いつかれるかもわからない。

 壁の外を見れば、そこはとんでもなく広大に広がる大瀑布だった。訳も分からないまま手を引かれて付いてきている女性を一瞥して、ごめんねと心で呟いてから餝は決断する。


「逃げるよ!」


「は!?」


「えいっ」


「い、いやぁぁぁぁぁああああ!」


 果てしない浮遊感が包む世界へと身を委ねる。餝と可憐な女性が飛び降りた直後、遺跡の壁が粉々に吹き飛び、砂煙の中から現れた黒衣の女がこちらを見下ろしている姿が目に映った。

 餝は、黒衣の女に舌を出して挑発する。そして、そのまま大瀑布の中へと消えて行ったのだったーー。








 大河の岸で仰向けに寝転がる二人の姿があった。

 片方は、気絶している餝で、もう片方は、餝のダイナミック投身自殺に巻き込まれた可憐な女性である。

 餝と違って意識のある可憐な女性は、立ち上がるとびしょびしょに濡れた自身の身体を見下ろして深い溜息を吐いた。


「全く、酷い目にあった……ほんと、何なのこの娘?置いてくわけにもいかないしなぁ……あーもう!私のお人好し!」


 こうして、二人の少女は運命的な出会いを果たすのだったーー。




GW最後の投稿です。明日から少し投稿ペース落ちるかもですけど、頑張って書いていくのでお付き合い下さい。明日から仕事の人も学校の人も頑張りましょう。

誤字脱字、不適切表現、意味間違いなどありましたら都度指摘をお願いします。感想もありましたら是非。

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