夕焼けに染まる少女
私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。
しばらくして、俺はまわりに誰もいないのを確認してから、千星のところに行った。
「お兄ちゃん。聞いてたんだ」
「さすがにお見通しか」
俺は単刀直入に千星に本当かどうか尋ねた。すると、千星は迷いなく頷いた。
続けて、いつから天使が中にいることに気付いたのか聞くと、7歳の時にユリアと名乗る天使の声が聞こえた時からたそうだ。
その子は兄を捜しているそうで、優しくて心の弱い兄が、任務で人を殺そうとしていると聞き、居ても立ってもいられず、地上に降りて兄を捜してみつけ出し、側で支えて道を踏み外さないようにしたいらしい。
が、地上に来て早々ドジり、生まれたての千星の中に偶然入ってしまったそうだ。
どっかで聞いた話だなと思ってたら、ペガサスが彼女のことを思い出した。
案の定、ペガサスがユリアの兄貴だった。
そのことを伝えると、千星は驚きつつも、
「納得した。お兄ちゃんがペガサスさんの話をした時に、ユリアさんが言っていたお兄さんの使命と一致してたから」
と、合点がいったような顔をしていた。
一方の俺も、あの時の謎が解けた気がした。
「俺も納得したよ。千星がおかん達と違って距離を置かなかった理由が。千星は、同じ境遇である俺を見捨てることができなかったんだな?」
俺は確信を持って言い当てたつもりだったが、どうやら少し違ったらしく、千星は少し目をそらした。
「それ以外も、あるけど、ね……」
千星の返答の意味を俺は知りたかったが、結局はぐらかされてしまった挙げ句、帰りの集会の時間になってしまい、諦めざるを得なかった。
ただ、脳裏に深く刻まれたのは、はぐらかされる直前まで頬を夕日のように赤らめ、赤くなり始めた太陽の光を浴びて、一層かわいく、美しく見えた千星の姿だった…………
ペガサスの兄弟はユリアを除いて3人おり、それらの話は別の作品でします。