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明かした秘密

 私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。

 俺の2回目の自殺未遂から数日後、俺達兄弟が通う綱手小学校と中学校合同の文化祭が開催された。

 各学年や個人が露店や出し物、演奏をする中、俺はペガサスをイメージして、真っ白い服に身を包み、自作の新曲を歌った。


 元々は、歌ったあと盛大に爆死するつもりで、エントリーしてたんだけど、例の失敗で自殺する気がすっかり冷めてしまい、一応記念ってことでキャンセルせず、チキンのくせに、出しゃばり根性丸出しで出演することにした。

 といっても、楽器なんか弾けないから、完全なアカペラ状態。そんな状態で、大して上手くもない歌唱力で歌っても盛り上がるわけがなく、俺は大いにスベった。


 会場である中学の体育館から出た俺は、大きなため息をつく。やんなきゃ良かった。せめて俺よりずっと歌が上手い千星を誘えば良かった。そんな後悔しか出てこない。


 反省点を山ほど抱えながら制服に着替え、気を取り直して露店を見に行こうと立ち上がると、同級生や中学の後輩共が俺をみつけ、『エンジェル』と言ってからかってきた。

 『エンジェル』と言いふらしたのは大樹だ。あいつは昔から俺をバカにしていたが、俺が自分の中にペガサスがいることを明かしてすぐ、より小バカにするようになった。

 俺はムカつく奴らがいなくなったのを確認してから、舌打ちし、


「こんなことなら、ミスんなきゃ良かった!」

 と、言って、死ねなかった後悔を近くにあったドアにぶつけた。



 午後4時過ぎ。30分ぐらい前に赤っ恥をかいた俺は、気を落ち着かせようと、学区内の茶道家が開いてる野点に向かおうと歩いていた。

 すると、遠くの方でさっき俺にからんでた連中が、別の誰かを囲んでいた。知らんぷりしようかとも思ったが、よく見ると、からまれてたのは千星だった。

 俺にやるんならともかく、身内ってだけで大事な妹である千星にまで、奴らはクソみてぇな言葉でからかってくる。そんな光景を見ている内に、だんだん腹が立ってきて、一発ぶん殴ってやろうかと、拳を握りしめた。


 その時だった。千星はそれまで閉ざしていた口を開き、反論した。


「そんなにいけませんか? 人と違うのが、天使が入ってることが」


「あ?」

 千星は真っ直ぐかつ綺麗な言葉で、あいつらのやってることがいじめだと非難し、俺を弁護してくれた。

 奴らも、初めの内は小学生に説教されんのが嫌だったのか刃向かってたけど、正論を言う千星に言い負かされていく。

 それでも納得がいかないことがあるらしく、大樹の同級生は素朴な疑問をぶつけた。


「なんであんな兄貴を庇うんだ? 妹として恥ずかしいだろ? 大樹だってそう言ってたぞ」

 そう聞かれて、千星は首を横に振り、思いもしなかったことを口にした。


「……私はお兄ちゃんの苦しみが痛いほどわかるからです。だって……だって、私の中にも天使がいますから」

 妹の言葉に奴らはもちろん、俺も驚いた。まさか、千星が俺と同じだったなんて、想像すらしてなかったから。


 俺はそこで固まっちまったが、あいつらはカミングアウトした千星を指差して、


「兄貴が兄貴なら、妹も妹か」

 と、爆笑しやがった。

 もう我慢の限界。そう思い踏み出したタイミングで、うちの中学一の鬼教師が、千星の友達からの知らせを受けて、怒鳴りながら走ってきた。

 これには奴らも流石にヤバいって思ったのか、蜘蛛の子を散らすように逃げていき、先生は後を追いかけていった。

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