ダチのために
私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。
平成18年11月初旬。この頃、俺は修学旅行で歌った自作の歌とかで、自分の中に天使がいることを濁してはいるが、公表し始めていた。
とはいえ、ガキの浅知恵。それがきっかけで、嫌がらせにさらに拍車がかかるだけだった。
そんなある日の夜、俺は耳を疑った。神様から正式に任務中止命令がペガサスに下されたそうだ。
ペガサスの任務は、世界を汚す存在の抹消。つまり、人間と文明を徹底的に滅ぼし、世界を浄化することであり、人類が本当に悪い存在なのか調査するために、ペガサスは俺の中に入っていたんだ。
結論としては、ペガサスは人類を必要悪でもない巨悪と判断しており、あとは行動に移すだけ。そう思っていた矢先に、知らせが届いたんだ。
(で、それに合わせて、帰還命令も出たんだ)
「帰還ったって、お前は俺の中にいんのにどうやっ……」
そう言いかけてすぐ、俺は理解した。
ペガサスは俺の中にいる限り、基本的に光の力を使えない。俺の体が一種の封印の役割をしているから。そこから解き放つには、ペガサスを封じ込めている器を壊す必要がある。それはつまり、俺が死ななければならない、ということだ。
(……ごめん。僕のせいで)
「気にすんな。予想はしてたし、ダチの為だ。腹はくくってる」
俺はそう言ったあと、いつもの感じで微笑んで、
「まぁ、任せろ。ぱぱっと遺書を書いて、ちゃっちゃと死ぬからよ」
と、言って、本の形にした遺書を書いてから、薬局に行って必要な物を買った。
そして翌朝、まだ誰も登校していない内に学校に行き、校舎の階段裏で俺は、薬を飲んで自殺を図った。
が、結局、俺は死ねなかった。睡眠薬自殺をしようとして飲んだ肝心の薬が、睡眠導入剤という凡ミスをしたからだ。
おかげで死ねないし、ペガサスは帰れないし、教師や親からこっぴどく叱られるしと散々だった。
だけど、それだけじゃ済まなかった。家族にはこれまで、ペガサスのことを話してなかったが、親父不在の中、おかんに怒られまくったことで、逆ギレしてしまい、とうとう口を滑らせて言ってしまった。
おとんは神仏系の行事は必ずと言っていいほど行い、神棚にも手を合わせるぐらい割と信心深い性格だが、おかんと大樹は現実主義の無神論者。
おかげでこの一件以降、家族との間に溝ができることとなった。
この時、1つだけどうしても不思議に思うことがあった。まだ5歳の三男・遼河はともかくとして、なんで千星だけは、カミングアウトしたにも関わらず、今まで通り接してくれるんだろう? って…………
この時は母親の配慮で、障害者とかに差別意識を持つ翔馬の父に、自殺未遂や天使が中にいることは知らされませんでした。