守護の暴風
私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。
それから時が流れて、平成18年10月8日。この日は、おとんの実家がある八尾の秋祭りの初日だった。
祭りっつっても、夜店は1つも無く、だんじりをダラダラ引っ張っては担いで、また引っ張っては酒盛りをするみたいな祭りで、おとんやその地区の連中は楽しんでたけど、俺のようによそから来た興味のない奴にとっては、ただ退屈なだけのつまらない祭りだった。
まぁ、俺もガキの頃は、おやつ目当てで楽しく参加してたけど、13、4になって、祭りに対する興味が薄れ始めた時に、おとんに言われて無理矢理だんじりを担がされ、どこの誰かもわかんねぇおっさんに『邪魔だ』って怒鳴られて、強制退場させられた苦い過去がある。
それが決定的で、以来俺は不参加を貫いて、祭りの期間中はおとんの実家で留守番することにしていた。今思い出しても、はらわたが煮えくり返りそうな気分になる。
そんな目に、今度は千星が遭おうとしていた。
大樹が祭りの青年団に入るのを了解したことに、おとんが味を占め、千星を女だけの青年団・レディースに入れようとしていんだ。けど、俺が見た限り、千星は一切乗り気ではなかった。
もちろん、千星としては断りたいし、そうするつもりだったんだろうが、相手は頑固親父とガキ大将の悪いところを足して2で割ったような性格をしているクソ親父。その上、大樹がやるってことに気を良くしてるから、下手に断れないと、二の足を踏んでいた。
そんな悩む妹を見て、俺は背中を押してやることにした。
「言ってみろよ、千星。俺も一緒に頼みこむし、いざという時は守る」
「いいの?」
「あぁ。だから、安心しろ。妹を守んのが兄貴の役目だ。任せてくれ」
俺が力になってくれるってことで勇気が湧いたのか、千星は力強く頷いた。
俺達はそう決めたあと、おとんに千星を参加させないよう直談判した。色々不安もあったけど、交渉は思ったより上手くいって、千星の不参加を認めてくれた。ま、多少気に入らなさそうにふてくされてたけど。
この一件を経たことで、俺はある決意し、心に固く誓った。
どんな時でも妹を守れる存在に、千星を守る『守護の暴風』になるんだって……なんかちょっと中二くさいだけどな。
八尾市も祭りも実在します。
この祭りをご存知で好意的に思ってる方、不快に思ったのなら申し訳ありません。あくまで作者と登場人物の個人の感想です。