惨劇の夜
私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。
晩飯を食い終わったあと、千星はおとんらに言われて、風呂上がりの飲み物を買いに出かけていた。
時間は午後7時59分。おとんとおかんは一服し、大樹と遼河がテレビを見て爆笑する中、俺とペガサスは刻一刻と近付くその時をじっと待つ。
そうして時間を過ごしている内に、時計の針は動き、ついに約束の時を迎えた。
鼓動の音が徐々に速くなっていき、高速ドラミングのように感じた直後、俺の全身は強烈な光を放ち、ペガサスと入れ替わった。
突然の事に驚きパニックに陥るおとん達。ペガサスはそんな俺の家族に向かって、冷静に口を開いた。
「我は天使ペガサス。聖天使にして、光の神なり。そして、人類を裁く断罪者なり。我が友・翔馬君との約束により、あなた達を抹殺します」
そう言った直後、おとん達に惨劇が訪れた。
約10分後。ペガサスは我が家で飼ってるペットを避難させて、これまで俺が千星にプレゼントした物や『翔馬アニメ』のデータが書かれたノートとかを外に出し、家に火をつけた。証拠隠滅とおとんらを確実に仕留めるためらしい。
燃え盛る家を前に、そこまでするかと少し呆れていると、千星が帰ってきた。流石の千星も、この状況には動揺を隠せないようだ。
「千星ちゃん、だね?」
犯人であるペガサスを前にして、千星は怯えながらも頷いて、ペガサスとちゃんと向き合った。
「ごめんね。君の家族の命を奪っちゃって」
「どうしてこんなことを?」
「彼らのような者は世界を傷付ける最有力候補なんだ。遼河君は復讐させないためだけど。それに、翔馬君が傷付くのをこれ以上見たくなかった」
ペガサスの動機を聞いた千星は、俺のためにやったと知り、もうすぐ俺と入れ替わることを聞かされると、俺が無事なことにほっとしたのか涙を流した。
そんなあいつにペガサスは頭を下げた。家族を失った千星に対するせめてもの謝罪の気持ちだ。芯の強い千星はそれを理解すると涙を拭って、
「……確かにペガサスさんのやったことは間違ってます。理由はどうあれ、こういう手段を取ることは」
「だね……僕は愚かだ」
「でも、誰かを想うその心は正しいです。だから私は、これ以上あなたを責めたりしません。己の過ちは、自分が一番わかってるはずですから」
女神のような千星の言葉を受けて、今度はペガサスが泣き、千星にすがりつきながら、謝り続けた。『ごめん』と、何度も何度も…………




