千の星の少女
私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。
平成8年6月13日。当時4歳だった俺は、おとんと次男の大樹と一緒に、生まれ育った大阪府東大阪市にある病院に来ていた。時間はあんま覚えてねぇけど、爽やかな朝だったことは覚えてる。
ここに来たのは、おかんの陣痛が始まったと知らされたからで、おとんに連れられて分娩室の外で待っていた。ま、さすがにガキだったから、じっと大人しくはしてなかっただろうし、2つ下の大樹の面倒も見てなかったと思う。
そうこうしている内に、分娩室から元気な産声が聞こえてきた。
「ご家族の方、おめでとうございます。元気な女の子です」
出てきた助産師にそう言われて、俺達は喜び、その人の案内で出産直後のおかんと赤ん坊と対面した。
待望の娘だっただけに、おとんは特に大喜びで、おかんをベタ褒めしていた。もうわかると思うけど、この赤ん坊が俺の大事な妹、千星だ。
千星の名前が決まったのは、それから3日後のこと。
おとんとおかんが話し合って、次に男が生まれたら水を連想する名前を付け、陸海空で揃えようってことになり、残った宇宙をイメージする名ってことで千星と名付けたらしい。我が親ながら安直な決め方だ。
兎にも角にも、千星の誕生を喜んだのは俺も一緒で、それは日に日に増大していった。
俺がそれを実感したのは、千星が4、5歳の頃だった…………