終わりの鼓動
私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。
平成21年12月23日の午後3時半頃。クリスマスイブを目前に控えたこの日、千星に手編みのマフラーをリクエストした俺は、空想の集大成であり、アニメやゲームの原作者になる夢の素材でもある創作物、通称『翔馬アニメ』のデータをノートに記す作業をしてから、千星のクリスマスプレゼントを買いに出かけた。
ベタにスイーツとか花束とかをプレゼントするって手もあったけど、手作りの方がいいかなと思い、同じくプレゼントする予定のCDを片手に、材料を求めて百均に来ていた。
探し始めること数分、俺は園芸コーナーにあった女の形をした白い陶器の置物をみつけ、手に取る。
(そののっぺらぼうの置物がお探しの物?)
(あぁ。この顔んとこに、千星の顔を書いて渡そうと思ってな)
そう心の中で言うと、ペガサスは鼻で笑った。
(絵心の無い君が?)
(うっせーやい。確かに絵心があったら、今頃『翔馬アニメ』をマンガ化して世に出してるよ。けど、いいだろ? 絵心が無くったって気持ちさえ伝われば)
その考えにペガサスが同感してくれたところで、俺はレジに行って金を払った。
あとは家に帰って仕上げをするだけ。そう思い、一歩踏み出したその時、ドクンという鼓動のような音が頭に響き、一瞬、目に違和感を感じた。
(何だ? 今の……)
戸惑う俺に、ペガサスは深刻そうな口調で謝り、鼓動の原因について説明しだした。
実は俺の魂は、ペガサスが入った時から奴の魂に侵食されてて、日に日にペガサスの思想が俺の思考やらそういうのに影響を与えている。
そして、魂を侵食してるってことは俺の魂を削ってることだから、魂はもちろん、最終的には肉体まで消滅しちまう。
さっきの鼓動や違和感はその前兆らしく、4時間半後には肉体にまで影響が出るほど侵食されるそうだ。
それを聞いた俺は絶望しかかったが、ペガサスは俺達のために最善を尽くすつもりだった。
ペガサスのプランはこうだ。
まず、肉体に影響が出始める午後8時に俺達が入れ替わる。無事成功したら、光の力を浪費し自身の思念を抑えるために、存在意義である殺人をして、再び入れ替わる。
これを1時間以内にやった上で、俺の中でペガサスが瞑想することによって、魂の侵食を減退させることができるらしい。
自分だって早く俺の体から解放されたいだろうに、そうまでして俺と千星のために尽くしてくれる親友に、俺は礼を言い、汚れ仕事をさせることを詫びた。
その後、ペガサスはどうせなら、俺を苦しめ続けた奴を殺したいと言い、そいつらの名を出した。18年も一緒にいた俺達の意思疎通は完璧で、それで間違いないと強く頷いた俺は、千星へのプレゼントを完成させるために家に帰った。
たとえ、その前に惨劇が起こることがわかっていても…………