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桜舞う中で

 私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。

 そのことを察したんだろう。千星は少し先を歩いて、俺達を尊重しつつ、自分の想いを伝えてきた。


「お兄ちゃんの言いたいことはわかってる。だから、否定はしないよ。他の人達と違って、お兄ちゃん達をバカにするつもりもないし、ましてや迫害もしない。その代わりと言ってはなんだけど……お願い。命を粗末にしないで。さっき、桜は美しいって言ったけど、散れば美しいなんて、ただの思い上がり。そんな自己満足で、お兄ちゃんを失いたくない。私は……お兄ちゃんとの幸せをもっと感じていたいの」


 そう言い、振り返った瞬間、一陣の風が鴨川に吹いた。桜の花びらはその風に乗って桜吹雪となり、千星の周囲を舞う。

 桜吹雪と千星の姿と心からの言葉。その一体感に俺は心を奪われる。


「あぁ。わかってるよ。千星。告白されたあの日から決めたことだし、お前を残して死ねるかっつーの。約束する。俺はお前を絶対に幸せにする。何があっても、絶対に」


 俺にとって女神のような存在である千星に改めて誓った俺は、恋人らしく千星の左隣りに歩み寄り、仲睦まじく寄り添って歩いた。桜吹雪が舞う鴨川の土手を…………



 午後4時半頃、俺達は旅の締めくくりとして、金閣寺を訪れた。傾いていく太陽の光を浴びて輝く金閣寺は、俺達の幸せを照らす黎明のように感じた。


 それをしばらく見たあと、俺達は京都駅に向かい、帰路についた。

 初めての2人旅は一生忘れられない旅となり、俺達は帰りの電車の中で次はどこに行くかという話で盛り上がる。まぉ、そのためにはさっさと就職しねぇとな。千星を養い、一生幸せにするためにも。


 俺が桜を見て千星のことを思い出したところから気付いたかもしれないが、この旅行が俺にとって千星との最大の思い出になった。きっとこんな幸せが永遠に続くもんだと、当時は思ってた。

 なのに、まさかあんなことになるなんて、この時は夢にも思わなかった…………

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