一夜を共に
私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。
風呂から上がってきた俺達が、部屋でくつろいでいると、お待ちかねの晩飯が運ばれてきた。
運ばれてきたのは、伊勢海老や大トロ、旬の魚をふんだんに使った絶品海鮮御膳だった。
その豪華さと美味そうな見た目に、千星のテンションが上がっているのを見て俺は、魚好きの千星のために調べまくった甲斐があったと、内心ガッツポーズをする。
見栄えだけでなく味まで最高な晩飯を堪能し、大満足なまま完食した俺達は、余韻に浸りながら、飯も含めた宿の素晴らしさを分かち合っていた。
その話で盛り上がってる最中に、千星はあのことを思い出して話を変えた
「そういえばお兄ちゃん。さっきのことなんだけど」
「さっきの?」
「卓球勝負のこと」
その言葉に、俺の湯飲みを持つ手が止まった。罰ゲームで何をさせられるかわからない不安感からだ。
「それで、その……お願いがあるんだけど……」
「なるべくハードなのはやめてくれよ?」
俺が冷や汗をかきながらそう言うと、千星は、
「多分、お兄ちゃんが想像しているのとは違うよ」
って否定した。よく見ると、千星の顔は仕返しをしてやろうっていう悪そうなものじゃなくて、どちらかというと、恥じらう乙女のような表情だった。
そんな顔で少しモジモジしてから、千星は意を決したように、俺を混浴に誘った。
「マ、マジで!? いいのか!?」
一度断られただけに、俺は目が飛び出そうなほど驚いた。
訳を聞くと、千星は俺の下心を見抜いた上で、その願望を満たしてやりたいって気持ちと、女湯にいた時に俺と一緒に風呂から桜を見れたらと思っていたかららしい。
心細さや虚しさもあったんだろうけど、ゲスい俺の心まで汲んでくれるなんて、千星が女神に思えてくる。
「だから、お兄ちゃん。ちょっと恥ずかしいけど、混浴……しよ?」
恥じらいながらそう聞く千星の優しさに、俺は感謝しつつ快諾し、狂喜乱舞した。
そのままクールに風呂に直行できりゃ良かったんだが、テーブルに足をぶつけるっていうどんくせぇ姿を千星に見せちまった。
ま、そんなハプニングもあったが、俺達は家族風呂に入り、風呂の中で夜桜や川を眺めた。もちろん2人肩を寄せ合って、いちゃつきながら。
それでそういう気分になった俺達は、家族風呂から上がり部屋に戻ると、窓から見える桜をバックにやることをやって、ラブラブ状態のままグッスリ眠った。
邪魔者がいなくてハッスルし過ぎたせいか疲労困憊になったが、あんなに幸せな夜は後にも先にもない。