翔馬の熟考
私小説風小説です。彼らの甘く切ない物語。最後までご覧ください。
平成21年3月初旬。来月から千星は中学生に、俺は高3になるこの年の春休みの終盤。俺は自分の部屋で独り考え込んでいた。
というのも、千星との禁断の恋が始まって早7ヶ月。デートとキスは十数回、あっちの方もやるにはやってるが、2人になれる時間があまりにも少な過ぎる。
それもそのはず、家族とかにバレないようにするには、全員出払ってる時ぐらいしかまともにできねぇが、それも長くて8時間程度。それじゃあ物足りない。『できればもっと長くイチャイチャしたい!』ってのが俺の心からの叫びだ。
そこで、1泊2日で旅行に行きたいと思った俺は、この日まで2人分の旅費を、小遣いとお年玉で貯めに貯め込んでいたんだが、肝心の怪しまれずに旅行に行く方法がみつからず、こうして、無い脳みそをフルに使って考えていた。
「あー、くそー! どうすりゃいいんだー!」
頭をかきむしりながら悩む俺がよっぽど滑稽だったのか、ペガサスがからかってくる。
(悩んでるね、かなり)
「そう思うんだったら、ちったぁ知恵貸せよ」
俺にそう言われてペガサスは了解し、知恵を貸してくれた。なんだかんだで力を貸してくれるあたり、さすがは親友って奴だ。そして、この大親友の知恵は、基本役に立つことばっかりだ。
その日の夜。晩飯後の一服の時に、俺は千星と2人で入学&早めの卒業旅行に行きたいと、おとんとおかんにストレートに伝えた。おとん達が金の心配をしたり、弟共が『連れてけ』って文句を言ったりしたけど、すんなり了承してくれた。
俺が中学の時に卒業旅行で、当時、愛知でやってた万博に1人で行こうとした時、おとんらが止めなかった前例があったことを、ペガサスが教えてくれたおかげだ。諸々の事情で取りやめになってたから、すっかり忘れてたよ。
許可が出た俺は、愛犬のはなの散歩に千星も連れて行って、旅行のことを話した。
「すまねぇな。急に決めて」
「ううん。少しびっくりしたけど、私もお兄ちゃんと2人っきりで旅行に行きたかったから。ありがとう、お兄ちゃん」
千星の嬉しそうな顔を見て、俺は頭を悩ませた甲斐があったと思い、なんとしてもこの旅行を楽しいものにしようと意気込んだ。
はなは、柴犬系のミルクティー色の毛をした雑種です。
この家には他に、猫太郎という茶色と白色の毛の猫がいます。