クイズ編
「『クイズ崖っぷち』今週も三人目、最後の挑戦者となりました。
もう一度、ルールを説明いたします。
なんでも賭けられます。
・・・と言っても賭けられない物が三つございます。
一つ目が『命』でございます。
『誰もテメーの命なんて欲しくねーよ』と言う事でございます。
親族や近しい者の『命』でもそれは同様でございます。
二つ目が『臓器』でございます。
当番組では一切、臓器売買は行っておりません。
というか『テメーの汚ねー臓器なんか見たくねーんだよ』と言う事でございます。
そして三つ目が、免許証やパスポートや銀行通帳です。
『そんなモン、犯罪者や詐欺師にしか売れねーじゃねーか!
この番組を外国人犯罪集団と一緒にするな!』と言う事でございます。
この番組はそれ以外の何か手持ちの物を賭けて、クイズに正解すると借金が帳消しになるという素晴らしいルールでございます。
価値の高い物を賭けるほど、答えなくてはいけないクイズの問題数が少なくなります。
クイズは問題数が増えるに従って、後半ほど問題の難易度が上がっていきます。
借金金額によっても問題数、賭ける物の必要な価値は変わっていきます。
見事借金帳消しに必要なクイズに全て正解すると賭けた物も自分の物になりますし、借金も帳消しになります。
しかしクイズに不正解してしまうと借金帳消しはなし、そして賭けた物は没収となってしまいます。
それでは再び三人目の挑戦者に目を戻しましょう。
彼、山本さんは脱サラして蕎麦屋を開業いたしました。
しかし経営は上手くいかず借金は雪だるま式に増えていきました。
そこで山本さんは借金の棒引きを賭けて、今回番組に乗り込んで来たのです。
しかしもう山本さんには賭ける物がないはずです。
先ほど一問目で山本さんは唯一残った金目の物であるサラリーマン時代からの10年落ちの愛車を失ったばかりです。
山本さんの借金金額は3000万円、20代の山本さんならまだ返済可能です。
傷口が広がる前に夢を諦めて、現実的にコツコツと借金を返済する・・・という選択肢もございます。
・・・というか山本さんには全く商才を感じません。
蕎麦の味も可もなく不可もなく・・・といった感じでございます。
私はこれ以上の山本さんの挑戦は勧めません。
山本さん、もうやめておきませんか?」
「い、いや・・・ま、まだ挑戦します」
「挑戦する・・・と言ってももう山本さんには賭ける物がないように思いますが・・・」
「か、賭けるものはあります!そ、それは・・・男のプライド・・・です」
「苦し紛れに何を言ってるんですか・・・そんな犬も食わない物を・・・
え?賭けに応じる?
今、番組プロデューサーより連絡が入りました。
山本さんの賭けは成立です!
賭けた物は『男のプライド』です。
借金返済に必要なクイズの正解問題数は・・・何と一問です!
クイズに一問正解すれば山本さんの借金は帳消しになります!
しかしクイズに不正解の場合、山本さんは『男のプライド』を失います」
「では問題です。
オーストラリアの首都はどこでしょう?4択です
①シドニー
②メルボルン
③キャンベラ
④ケアンズ」
「①のシドニーだ!」
「不正解、正解は③のキャンベラです。
では山本さんは『男のプライド』を失います。
この薬を飲んで下さい。
・・・では、次の問題に挑戦しますか?
もう賭ける物は御両親の住んでいる自宅の一軒家しかありません。
先ほどまで山本さんが挑戦する事に私は反対でしたけど、状況が変わりました。
もしかしたら商売は上手くいくかも知れません。
何て言ったって人を雇わなくても、山本さん本人が看板娘になれるのですから」