神話編
「あなたは半神です」
夢に現れた「自称神」は唐突に言った。
「突然現れて何言ってやがるんだ。
まあいいや、どうせ夢だし。
半神って事は神と人間のハーフって事か?
・・・って事は親父かお袋のどっちかが神って事か?」
「神に性別などはありません。
あなたが『お袋』と呼んでいる存在が神です」
「月末になるといつも『今月も赤字だ~新しいパートを探さないと~』って家計簿とにらめっこしながら頭をかかえてる、あのお袋が神ねえ・・・」
「あの神は人間の男に恋に落ち、神である身分を捨て化身となり人間界に来たのです」
「ちょっと待て。
『神に性別はない』って言ったよな。
お袋が変身した化身によっては、親父とお袋は腐女子歓喜の関係って事もあり得たのか?」
「あなたの言う『腐女子歓喜の関係』と言うのがよくわかりませんが・・・。
ハッキリしているのが好きになった男の前に好きな恰好で現れられるのに男の姿で現れる馬鹿な神はいません。
それに神が男の姿で化身として人間界に現れたなら、あなたと言う半神は誕生しなかったでしょう」
「わかった、わかった、本当はわからないけどわかんないと話が進まないし、わかったフリするしかないんだろ?
・・・で、半神である俺はなんか出来るの?
俺は何の半神なの?」
「『火の神』『水の神』『風の神』『土の神』『夜の神』『学問の神』『商売の神』『闘いの神』・・・あらゆる事柄に神性は宿ります。
なので物事の数だけ神は存在します。
あなたは『恋愛の神』です」
「うそーん。
『ここの神社、恋愛の神様が祀られてるらしいよ』って女の子達が勝手にパワースポット化してる神社の神様みたいに俺も手を合わされる存在なの?
『お前は俺に手を合わせるより、20キロダイエットしろ!
お前の恋愛のためにも、お前の健康のためにも』って言いたいのに俺はそんなデブな女に手を合わせられるしかないの?」
「嘆くポイントがズレている気がしないでもないですが・・・。
そうです。
関羽が商売の神様として崇められたかったか・・・と言うと、あなたの意思とは関係なく人々があなたを崇める、という感覚を理解出来ると思います。
この夢を見た、という事はあなたは『神性に目覚めた』と言う事です。
神性に目覚めた半神の話を・・・」
「わかった、わかった、夢のクセに理屈っぽいんだよ。
夢ならもっと、楽しい夢でないとウソだろ」
「・・・最後まで話を聞いたほうが・・・」
「う~ん・・・寝覚め最悪。
変な夢を見たからか?」
「そろそろ起きなさい。
あ!そうなのね・・・あなたも神性に目覚めたのね」
「お袋・・・何が何やら・・・」
「半神であるロキはヨルムンガンドの男親でもあるけど、スレイプニールの女親でもあるの。
あなたの今の姿は・・・」