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何か打開策はあるはずだ。


異星人に押されている理由は敵の数の多さと、決して後退しないタフさと、そして怪我をした仲間を放っておき、死んだ仲間を容赦なく踏んで前進する倫理観の低さにある。


対して我々人間は味方が傷つくと助けに行き、味方の死骸を踏む事は出来ない。


味方に「倫理観を低くしろ」とは言えない。


善悪の感情を邪魔なものと廃し、麻薬で感情を麻痺させ敵に立ち向かうのは過去にもあったし、今回もある程度は国によっては導入している作戦だ。


麻薬である程度善悪の感情は捨てれても、『死の恐怖』が完全に消える訳ではない。


エイリアン達は異星人に完全に行動をコントロールされており、『死ぬ』と解りきった運命にも関わらず真っ直ぐこちらに向かって進軍してきた。


その進軍ペースはこちらの火器が弾切れになり途切れるほど、ひっきり無しであった。


こちらの攻撃力は圧倒的で、弾切れにならなければ敵を蹂躙出来る。


しかし、敵の数量は圧倒的で兵器も持っていない。


敵の攻撃手段と言えばエイリアン達が口から吐く溶解液や、人間と比べて圧倒的に強い打撃力だ。


しかし「武器を持っていない」と言う事は「兵がいる限り無限に攻撃手段がある」と言う事だ。


それに対して我々人間は武器が尽きつつある。


特に重火器は、最初の頃は相手を蹂躙、爆破するのに使われていたが、もうミサイルもランチャーも地雷もそれほど残ってはいない。


戦闘機も戦闘ヘリも戦車も弾と燃料が無ければただの鉄の塊だ。


異星人に知力がある、というのは弾や燃料を備蓄し、修理も行う兵器の工場や軍の施設を優先的に攻め占領していった事でも明らかだ。


「もう人類に突破口はないのか?」絶望的な空気が流れていた。


突破口は突然現れた。


軍設備をエイリアン達は執拗に攻撃した。


その軍設備は大規模で「人類の反攻」を担う大きな役割りがあった。


「この軍設備は落とさせてはいけない」激しい戦闘が繰り広げられた。


しかし多勢に無勢・・・人類は次第に劣勢になり、重火器が尽きた頃、軍設備から撤退の命令が下された。


そこで撤退し遅れた女性整備兵士とエイリアンが鉢合わせてしまった。


目の前に迫ったエイリアンを前に女性整備兵士は頭の中で「止めて!」と強く念じたと言う。


するとエイリアン達は女性整備兵士に攻撃するのは止めて撤退していったという。


その戦闘では人類は大敗したがエイリアン達を手懐ける「何か」の手懸りは手に入れた。


捕獲したエイリアンに命令してみる。


命令は全く通じないしエイリアンと全くコミュニケーションが取れない。


エイリアンに攻撃されなかった女性整備兵士に命令させる。


命令は全く通じず、拘束されているエイリアンは暴れている。


色んな人に命令させたが、男女は問わず命令をエイリアンは一切受け付けずに暴れている。


「どうやってエイリアンに言う事を聞かせたんですか?」と研究者は女性整備兵士に聞いた。


「言う事を聞かせようとなんてしてません。


ただ頭の中で『止めて!どこかへ消えて!』と叫んだら本当に止めてどこかへ消えてくれたんです」と女性整備兵士。


「ではその時と同じように頭の中でエイリアンに命じてもらえますか?」


「わかりました」


女性整備兵士は一瞬思い出そうと逡巡したが、研究者の言う通り頭の中でエイリアンに話しかけた。


すると暴れていたエイリアンが動きを止めて大人しくなった。


「何て命令したんですか?」と研究者。


「『うるさい。


暴れないで少し大人しくして』と命令しました」と女性整備兵士。


その後女性整備兵士がやったように他の者が頭の中でエイリアンに命令したのだが、何度やっても性別を問わず女性整備兵士の言う命令しかエイリアンは聞かなかった。


連日女性整備兵士の命令の仕組みが研究された。


ある日女性整備兵士の頭にヘッドギアを装着して仕組みを解析していた時、若い研究者が気付き口にした。


「女性整備兵士がエイリアンに命令している時、微弱ですが電磁波が観測されています」


「あ、そういえば・・・私が頭の中で思い浮かべた事を子供の頃友人達が見えた、と言った事がありました」と女性整備兵士。


「テレパシーの一種か。


異星人はテレパシーでエイリアン達に命令していたんだ!」


光明は見えた。


異星人からエイリアンの命令権を取り上げてしまえばエイリアンは地球を攻めなくなるどころか、エイリアンに逆に異星人を攻めさせる事も出来るかもしれない。


その後異星人の使っているテレパシーの研究が行われた。


光明は見えた・・・かに思われたが、その後の研究は暗礁に乗り上げた。


先ず『テレパシー能力者がほとんどいない』という問題が出て来た。


しかし全国を探したら、4名ほど適格者が出て来た。


女性整備兵士の命令をエイリアンは長く聞かない。


力が弱すぎるのだろうか?


女性整備兵士よりもテレパシーの力が明らかに強い2名がエイリアンを操る候補に選ばれた。


2名は一人は男であり、一人は女だった。


エイリアンは男の命令を一切聞かなかった。


女の命令は聞くが女性整備兵士と命令を聞く時間はほとんど同じであった。


「どういう事だ?


テレパシーの力はこちらの方が強いはずだ。


やはりこの方法ではエイリアンを操れないのか?」人々は頭を抱えた。


このカラクリを見破ったのは専門家ではなく生物学者だった。


「蟻も蜂も女王の命令を聞き行動します。


女王蟻も女王蜂も産まれた時から女王なのです。


今まで働き蟻だった蟻を『今からコイツが女王だ』と言われても、それに従う働き蟻達はいないでしょう。


それと同じです、エイリアンに『こちらが本当の女王だ、こちらの言う事を聞け』と言うのであれば生まれた時からの女王をこちらでも用意しておく必要があります」と生物学者。


「そんな事を言ってもそんな人物を今から準備していられる訳がないだろう?」


「女王蟻が死んで代打で他の蟻が女王蟻になるのはよくある事です。


女王蟻は頻繁に変わるものなのです。


それに別に今から新しく女王蟻を探す必要はありません。


ただいくらテレパシーの力は強くても今まで普通に生活してきた女性に女王蟻はつとまらない。


だったら・・・」




「失礼します」


「よく来たね」


「この間のテレパシーの実験、何の力にもなれなくて申し訳ありませんでした」


「いや、君に力がない訳じゃない。


エイリアンは男性の命令を一切聞かないんだ」


「この地球の一大事に何の力にもなれずに申し訳ありません。


協力できる事があれば、どんな事だってするのに・・・」


「ほう?


『どんな事だってする』?


本当かね?」


「あ、当たり前じゃないですか!


今報道はされてないけど、地球はエイリアンに攻められてかなり追い詰められているんですよね?」


「その通りだ。


君に一つ頼み事をしようと思って今日は呼んだんだが、君に『どんな事だってする』という覚悟があるのなら説明は後で構わないな。


早速、この注射を受けてくれ」


自分の軽口を後悔したがもう遅い。


俺は注射を受け横になった。


身体の中で何かが起こっている。


身体を引きちぎられるような痛みを感じる。


俺は痛みで気を失った。



俺は意識を取り戻した。


ここはどこだ?


いや、過去に俺はここに来た事がある。


ここは俺が気を失った部屋ではなく、捕らえられたエイリアンがいる部屋だ。


「目を醒ましたかね?」と研究者。


「お陰様で」皮肉たっぷりに研究者を睨みながら言ってもよかったが、『どんな事だってする』と迂闊な事を言ってしまったのは自分だ。


恨むのであれ先ずば自分の考え足らずを恨むべきだろう。


俺は寝っ転がったまま首肯した。


俺の憮然とした態度を見て研究者は苦笑しながら「早速で悪いんだがエイリアンに命令してみてくれないか?」と言った。


「そんなものは何回やっても同じだろう。


何でそんな事を今更させるんだ?」と思いながら、エイリアンに頭の中で『お座り』と命じた。


すると今まで暴れていたエイリアンが大人しくなり、しゃがみ込んだ。


ここまでなら何度も見た光景だ。


と言ってもエイリアンは全く俺の命令を聞かなかったので、他人が命令しているのを見ていただけだが。


命令の効力はそう長続きせず、エイリアンはすぐに暴れ出す・・・はずだった。


エイリアンはいつまでも大人しく『お座り』している。


研究者が感嘆の声を上げる。


「おぉ!成功だ!新しい女王の誕生だ!


君は女性として今、生まれ変わったんだ!


さあ!人類の反攻の始まりだ!」







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