スーパーフード編
昔から外国から作物が入ってくる事は多かった。
トマトはアンデス原産だと言うし、カボチャはカンボジアから伝わってきて「カンボジア」が訛って「カボチャ」と呼ばれるようになったらしい。
だいたい古来からある日本特有の野菜の品種などは京野菜に一部存在を認められるだけで、ほとんどないのだが。
昔から海外から野菜が入って来ているのは「その野菜の栄養素が必要だから、おいしいから」だ。
逆に「何故今まで日本に伝わらなかったのか」と言うと「腹がふくれないから」「栄養として魅力がないから」「美味しくないから」だろう。
しかし、昨今の健康ブームはかつてふるい落とされた作物にふたたびスポットライトを当てた。
「こんな栄養素がある!」
あるに決まってる。
栄養素抜きで育つ有機生物などある訳がない。
ちなみに栄養素が最も低い作物がキュウリらしい。
ほとんどが水分で、栄養素がほとんどないらしい。
それでもキュウリは消費されている。
今までならふるい落とされてきた作物は『スーパーフード』と名前を替え、高価でデパートなどの高級食料品売り場で、売られる事となった。
「体に良い」と言われてしまえば、それに健康マニアは飛び付くしかない。
かつて水素水に飛び付いた健康マニア達も「実は水素水を飲むのも水道水を飲むのも大差ない」と研究者が言うまで、水素水を有り難がっていた。
スーパーフードを売るバイヤーも「これを食べても大して健康にはなれない」と言う事実が明らかになる前に次に仕掛ける物を決めなくてはならない。
───タイ北東部
「この木がナリーポン。
タイでは昔から『美女のなる木』という言い伝えがあります」
現地ガイド兼通訳が私に言う。
「・・・本当にこの木に美女がなるのか?
それにしては緑色の木の実がなっているようにしか見えないが」
「あくまで『美女がなる木』というのは言い伝えです。
実際には緑色の実がなり、熟すと赤く色付くそうです。
現地では『美女の実』は妊婦が食べると女の子が産まれて美女に育つと信じられているようです。
彼女は子供を身籠っている時『美女の実』を食べたそうです。
『渋くて不味かった』と言ってますが・・・」
「美味しいか不味いかなどは大した問題ではないんだ。
チアシードなどは大して美味しくなくても、見た目がカエルの卵にしか見えなくても『体に良い』と言えば健康マニア達は飛びつくんだから。
あいつらは本気で『健康のためなら死んでも良い』と思っているだろうよ」
「あ、この実は女・・・妊婦が食べる物です」
「毒じゃないんだろう?
よく亜鉛の過剰摂取で男性が前立腺がんになりやすくなるって言うが・・・そんな感じか?」
「毒ではないと思います。
ナリーポンを食べた事での健康被害などは聞いた事がありません」
「じゃあ問題ないな。
『タイの知られざるスーパーフード、ナリーポン』といて売り出せばアホな健康マニアがこぞって買っていくさ。
・・・渋っ!不味っ!
この木の実の不味さはどうにかならんのかな?
乾燥させて粉末にして固めて錠剤にしてサプリメントとして売るしかないか」
───三十分後ナリーポンの木の下で
「こりゃここら辺で見た事もない美少女だな。
おい、お前どこから来たんだ?
ダメか・・・言葉が通じないらしい。
もしかしてお前、伝承で聞く『ナリーポンの木で実った美女』か!?」




