チート編
FPSと言っても、基本的に銃でシューティングする事がほとんどで、ナイフや刃物を持って暴れる事もあり、『FPS視点』などと言ったらシューティングゲームではなくRPGである事もあった。
つまり、ほとんどの3Dゲームが、『FPS視点』か『TPS視点』なのである。
『FPS視点』などと言うが、普段の生活が『FPS視点』とほぼ同じなのである。
「普段の生活で銃撃たないじゃん」・・・当たり前である。
普段の生活で銃を乱射したら、危ない人どころの騒ぎではない。
凶悪犯の殺人鬼だ。
銃を撃とうが撃つまいが『FPS視点』は変わらない。
俺は異世界に転生するらしい。
目の前の女神が言っている。
「貴方を異世界へ送り出すのに、餞別として神の加護を与えたいと思っています。
何か貴方に一つ能力を与えたいと思っております」
よく言うぜ。
異世界に転生して戦ったってどうせ生き返れないんだろう?
生き返れたら、こうやって異世界から戦士を補充する必要ないし。
FPSだって5~10回当たり前に死ぬし、5回死んで普通に優勝したりする。
デスゲームだって100人の中で生き残れるのはたった一人だったりする。
いくらデスゲームでは生き返れない・・・って言ったって、最初からゲームはやり直せる。
「ゲームが続きから出来ない」というだけの事だ。
だが異世界に転生して死んでしまえば全てが終わりだ。
まるで女神は「特別に貴方を異世界へ転生させる」と言うような態度だが、何も特別ではない。
戦える年齢の者が死んだら、漏れなく異世界へ転生させ戦わされるのだ。
でなければ、俺のような筋力も反射神経も運動神経も平均を大きく下回ってる男が戦士として選ばれた理由が説明出来ない。
聞いた事がある。
現世で戦士だった者を、エインフェリアと称して戦わせる女神がいる事を。
しかし俺は戦士ではない。
この女神の陣営は戦士でない者にも戦わせなくてはならない程、追い詰められているという事だ。
「そんなバカな」と思うかも知れないが、実際日本でも追い詰められれば女性に竹槍を持たせて「戦闘機を落とせ」なんて事を真顔で言うようになったのだ。
使い捨て、その場しのぎにも程がある。
何百人こんな女神がいるのだろう?
何百万人、こんな女神が異世界へ一般人を送り込んだのだろう?
どれだけの一般人が異世界に送り込まれると同時に、戦闘に巻き込まれて命を落としたのだろう?
俺は使い捨てにはされない。
考えろ、生き残れる方法を。
あ、俺はガンシューティングネットゲーム好きの友人が言っていた事を思い出した。
「畜生!茂みの中に伏兵が隠れてるとは思わなかったぜ!
TPSなら隠れてる敵も見えたのに!」
第三者視点なら、伏兵も相手の策略も見えると言う。
策略がわかる・・・つまり生存率が上がる、と言う事だ。
しかも相手の策略を見破る、という事は軍師として重宝される可能性が高い。
つまり戦士として戦わなくても良いのだ。
一つくらい戦士として役に立つスキルを手に入れても、ド素人である俺は戦士としては平均以下だろう。
自慢じゃないが、戦士として戦えば瞬殺される自信がある。
「どんな能力でも貰えるのか?」
「そうですね、基本的には。
でも『不死身』とか『神の体』って能力はあんまり意味がありませんよ?
相手が『不死身殺し』『神殺し』のスキル持ってたら普通に殺されますからね。
・・・でそんなヤツはゴロゴロいます。
『死なない系』のスキルはもう全部対策されてて『死なない系を殺す系』のスキルは敵も持ってて当たり前だから、折角女神からスキル貰えるチャンスがもらえたなら別のスキルをもらった方が良いと思いますよ?」
「そんなモンはいらん。
不死身と言われた者は必ず神話の中で倒されてるんだ。
不死身なんてのは死亡フラグとかわらん。
俺が欲しいのは『TPS視点』だ。
別に難しい事を言ってるんじゃない。
アンタ、俯瞰で召喚したヤツらを眺めてるんだろ?
『その視点を俺にもよこせ』って言ってるんだよ。
別に無いものねだりしてる訳じゃないんだよ。
『女神なら漏れなく持ってるそのスキルを俺にもくれ』って言ってるんだよ。
どんなスキルでもくれるんだろ?」
「あのスキルは戦闘スキルではありません。
しかも女神以外でスキルを獲得した者はおりません」
「スキルを戦闘に使うのは俺の勝手だろう?
それに最初にアンタは『好きなスキルをやるから選べ』と言ったんだぜ?
まさか『そのスキルはやらない』なんて言わないよな?」
「・・・わかりました。
貴方に私の持つスキル『千里眼』をレンタルします。
それでスキルを使ってみて下さい。
もしスキルが役に立つようなら、改めてスキルの授与を行います」
よく言うぜ。
スキルの授与には、そこそこ労力を使うんだろ?
だから俺にスキルを授与せずに自分のスキルをレンタルした訳だ。
何の役にも立たず死ぬヤツにスキルの授与なんて労力の無駄だからな。
・・・で、俺が死んだらレンタルされたスキルは女神の元へ戻る。
俺に改めてスキルを授与する気なんかないんだろう?
俺は戦闘で死ぬと思ってるんだから。
まあいいや、思った通りになると思うなよ?
俺は一兵卒として、戦闘に参加させられた。
ホラ見ろ。
英雄として召喚された訳じゃない。
この軍勢の何割くらいが地球から召喚された者なんだろうか?
いかんいかん。
こんな事をしている暇はない。
俺はスキル『千里眼』を使って、戦場周辺を俯瞰で眺めた。
森で敵の伏兵が見える。
森を通ったら、矢を射かけて我々の軍勢の横腹に奇襲を仕掛ける気だろう。
しかし俯瞰の視点というのは便利すぎる。
敵の大将がどこに隠れているかすらわかるのだから。
俺は部隊長に「森を焼いて下さい。
森の中から一人も生きて敵を出さないで下さい。
俺は目は良いんです。
森の中に敵の大軍が隠れています」と進言した。
俺が所属している軍勢はほとんどの損耗はなく、敵の大軍を全滅させた。
俺は軍勢を率いていた将軍より「何でもお前が望む褒美を授けよう」と言われた。
「私は仕官先を探しておりました。
私を軍師として雇って下さい」
こうして俺は一兵卒として死ぬ事はなくなった。
夢にあらわれた女神が言う。
「『千里眼』のスキルにそんな使い道があったんですね。
約束通り、あなたに『千里眼』のスキルを授与しましょう。
・・・『千里眼』のスキルは女神でなくては持てないのではなかったのですね。
『千里眼』のスキルは女であれば、誰でも持てたのです」




