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クールビズ編

クールビズ法


「暦の上では秋」


年寄が七月中に40℃ある中で長袖を着て「最近の若い者は根性が足らん。


ワシが若い時分にはクーラーどころか扇風機も無かった」などと言いながら、バタバタと倒れたりポックリと逝ったりしたのが原因で「もう法律でエアコン使わせたり、薄着させたりしなきゃジジイもババアも言う事聞きやがらない」という事で作られた法律だ。


「死にたきゃ勝手に死ね。


熱中症で死んで救急隊員の手を煩わせるな」という基本理念のもとに作られた『クールビズ法』は「過激だ」と賛否両論であった。


『一日2リットルの水分を補給する事。


できなければ死刑』


確かに一日2リットルは水分は摂取するべきだろう。


しかし、糖尿病患者などで水分の摂取制限がある者もいる。


『クールビズ法』はこのように穴だらけの法律だった。


『夏場は長袖の服を着てはいけない』


クールビズ法ではこのように定めているが、日焼けが出来ずシミが出来やすく半袖が着れない者も存在する。


また反社会組織を辞めた者で刺青を隠すために長袖を着ている者もいる。


そして『クールビズ法』最大の問題となっている条文がある。








『学校のクラスの半分は夏場はミニスカートを履かなくてはならない。


尚、男子校や女子校、男子クラスや女子クラスはその限りではない』こんな無茶苦茶な条文はない。


勿論、この条件を満たすためにクラスが男女半々になるように学校側も配慮した。


で、あぶれた者は男子クラス、女子クラスに組み込まれた。


これが最も穏便な解決方法なのだ・・・と学校側も生徒側も考えていた。


なぜ『クールビズ法』が出来たのか、なぜこんなに『クールビズ法違反』の罰則が重いのかは環境問題の背景がある。


かつて環境法違反に重い罰則がなかった頃、イカの底引き網漁を行っていた中国の漁船に大した罰則はなかったという。


そのせいでスルメイカは絶滅した。


『環境法こそ厳しい罰則がないと地球が、人類が終わる。


しかも厳しい罰則がないと誰も環境法を守らない』という考え方は地球全体の国家全ての考え方であった。


なので『クールビズ法』の罰則はあり得ないほど厳しいのだ。





俺は遅刻して教室に入っていった。


夏風邪をひいていて学校を休んでいたので学校に来たのは何日ぶりだろうか?


昨日あたりはもうだいぶ良くなっていたのだが『夏場は長袖を着てはいけない』という『クールビズ法』を守ると「熱があって寒気がしても絶対に長袖は着れない」という事で、完全に良くなるまで学校に来れなかったのだ。


別に疚しい事はない。


具合が良くなって「これなら学校に行っても大丈夫」と判断したのがもう授業がはじまっている時間というだけの事で別に寝坊して遅刻した訳ではない。


教室に入って行くと、そこには二人のスーツを着た男性がいた。


何でも、クールビズ法違反で二人の女の子が連行されたとの事だ。


二人は雨に降られ、身体が冷えないようにジャージの上を羽織ってしまったらしい。


その調査に来たのが二人のスーツを着た男性だと言う。


しかしクールビズなのだろうか?


二人のスーツは半袖だ。


「だったら半袖のYシャツを着れば良いのに」とは半袖スーツを着ている本人達も思っているだろう。


「このクラス、男子の人数の方が女子の人数より2人多いですね。


一人多い場合は元々半々には分けれないんで改善を指導するだけですが二人男子の方が多い場合には半々に分けれますね。


という事は『学校のクラスの半分は夏場はミニスカートを履かなくてはならない』というクールビズ法の条文に違反している事になりますね」


担任が言い訳がましく言う。


「このクラスには二人女の子がいるのです」


「その二人は昨日、違反で連行されています。


・・・という事は昨日の段階で退学は成立しているはずです。


つまりクールビズ法の条文違反は今日から・・・という事です。


違反の責任者は担任であるあなたです」スーツの男は担任を断罪した。


「うへぇ・・・おっかねー。


まあ良い気味だけど。


アイツ手柄は自分の物にして、都合の悪い事は生徒に押し付けてばっかりだからな。


だいたい昨日の事だって『生徒達は悪くありません!指導不足の私のせいです』くらい言ってみせろよ」僕は自分の席に腰を下ろそうとした。


担任は我が身可愛さの苦し紛れで言った。


「勿論、クラスの半分はミニスカートを履かせるつもりですよ!


おい!何を座ろうとしているんだ!


座る前にさっさとミニスカートを履け!」


「本気で僕にミニスカートを履かせる気ですか?


僕は男ですよ?」


「彼はこう言ってミニスカートを履く事を拒んでいるが?」


「コイツ昨日まで高熱に(うな)されてたんですよ。


だから自分の言った事も忘れてしまったんですね。


『ミニスカートを履きたい』『女の子になりたい』って確かに言ってたんですよ。


なあ、そうだよな?」


コイツ・・・自分が助かるために僕を巻き込む事に全く躊躇がない。


見上げた「見下げ果てたクズ」だ。


しかし、半袖スーツを着ている二人組が信じたのは僕ではなく担任だった。


「女の子になりたいのであればこの薬を飲みなさい。


君に付き合っている時間はないんだ、早く!」


僕は半袖スーツの二人組の迫力に押されて思わず手渡された薬を飲んでしまった。

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