学校の怪談編
学校にはこの時代には不似合いな蔵がある。
蔵は長い事使われておらず、物置のようになっている。
だが長い事放置されていた蔵の物を動かす者はおらず、いつしか蔵に近づく者はいなくなっていた。
蔵は奥に進むとそこには地下に進む扉がついているという。
だが扉には札が張ってありその扉は長いこと開けた者はいない、との事だ。
「この札は決してはがしてはいけない。
そして決してこの札が貼られている蔵の奥の扉を開けてはいけない」
それは僕が小さいころから母親に言われていた事だ。
母親から聞いたのではないが、有名な怪談話で
その昔、蔵の奥の扉を開けて中に入って行った男の子がいたと言う。
だが、男の子が扉に入って行って以来、男の子は忽然と姿を消してしまったという。
村全体で男の子を何日も捜したが、それ以降男の子を見た者は現れなかったという話だ。
男の子は「神隠しにあった」と言われた。
母親は現実的でオカルト的な事が嫌いなのか「神隠しの訳がない」と強く否定していた。
母親はオカルト的な事は嫌いのはずなのに、「蔵には入るな、札ははがすな」と強く言っていた。
ある日、僕は学校の同級生と肝試しをする事になった。
肝試しの内容は「放課後に蔵の奥まで入って、扉に張ってあるお札を持ってくる事」だった。
女の子達は「そんな趣味の悪い事はやめなよー」と言ったが、僕は引くに引けない状態だった。
「やめる」と言ったら男友達に「根性なし」と言われそうだったのだ。
小学生男子にとって「根性なし」扱いされるのは一大事なのだ。
「私おばさんに言ってくるね」女子の一人が僕の母親にチクりに行った。
もう猶予はない。
あまり時間がたつと母親が学校へ来てしまう。
家と学校は隣同士だ。
母親はすぐに来てしまう。
母親は「蔵には入るな、札をはがすな」と普段から厳しく言っていた。
急いで札を持ってこないと僕は「根性なし」扱いされてしまう。
僕は急いで蔵に入ると奥にある扉に貼ってある札を剥がした。
するとひとりでに小さく扉が開き、中から黒い霧が噴出した。
黒い霧は集まり形を作った。
霧の形は動物・・・キツネの形だろうか?
黒い霧の動物は目の部分だけ赤く鋭く光らせながら「我を眠りから目覚めさせたのはうぬか?」と質問してきた。
そこに女子児童に話を聞かされた母親が血相を変えて蔵の中に駆け込んで来た。
動物は母親を見ると語りかけた。
「おぉ、小僧久しぶりじゃのう。
この小童は小僧の子供か?
血は争えぬ、という事じゃな」