魔法少女編
「もちろん魔法少女の装備と言えば決まってるよな。
ヒラヒラしたミニスカートのドレスだよ!」
「・・・いや、別にボクが必要としてるのは『魔法使い』であって『魔法少女』ではないんだよ?」
「うるせーな。
お前みたいな使い魔の小動物は魔法少女の相棒と相場が決まってるんだよ。
いや『ボクと契約して魔法少女になってよ』っていう本当は悪の黒幕ってパターンもあるな」
「だから人聞きが悪い事言わないでよ!別に僕が探しているのは正義の味方で別に剣士でも狩人でも男でも女でもかまわないんだよ!
ただ今回、水晶のお告げでここに紫の光が見えたんだ。
だからここら辺で魔法使いを探していただけで、その魔法使いが男の人でも女の人でも若くても老人でもかまわないんだ。
だから早く自分の装備をイメージしてよ!
時間がなくなっちゃうよ!
そんないるかいないかもわからない魔法少女の恰好の妄想を大学ノートに書いてないでさー!
その装備は君の戦闘装備になるんだ。
もし制限時間以内に君が自分の装備を決めなかったら、君は装備なしで異界の魔物と戦わなくちゃいけなくなるんだ。
そんなの自殺行為だよ!
君は戦う手段がない人達を守るためにボクと契約をするんだ。
君が戦う手段、バトルコスチュームを放棄してどうするつもりなんだい!?」
「うるせーなー。
異界の魔物と戦うのは魔法少女の使命だろ?
んなモン、俺の魔法使い姿を誰が見たいんだよ?
見たくねーだろ?」
「だから!
『誰も俺の魔法使い姿を見たくない』じゃなくて君は誰にも姿を見せちゃダメなんだってば!
僕たちの活動は世間の人たちには内緒なんだよ!」
「正体を知られちゃダメだって?
余計にエロゲの魔法少女っぽいじゃねーか。
だったら攻撃を受けた時、衣装が破れなきゃいけないな。
破れない衣装は色っぽさが足りないもんな」
「僕は『君の衣装を作れ』と言ってるのに、君は魔法少女が負けた時の設定作りにしか興味がないんだね・・・。
・・・タイムアップだ。
僕は君が作ったこの無駄に設定が練られた魔法少女のコスチュームを具現化するよ。
僕に出来るのはコスチュームを君が着れるようにカスタマイズする事だけだ。
ホラ、好き勝手に作られた設定では着れない装備である事も珍しくないんだ。
だから僕は水晶の力を借りて、コスチュームをカスタマイズするんだ。
どのようにカスタマイズするかは水晶が『どうカスタマイズすればコスチュームの最小の変更で済むか』を決めるんだ。
この魔法少女のコスチュームをどう最小限カスタマイズしたら君が着れるようになるか・・・水晶は考えているみたいだね。
いつもの何倍もの時間がかかっているよ。
基本的に『カスタマイズは最小限に。
コスチュームの作者の案は最大限活かす。
変更は無理がある部分だけ』という事になっているんだ。
だからコスチュームの再現度は97%、顧客満足度は99%という事になっているんだ。
水晶は『君が着て99%以上の満足度を得て、なおかつ97%以上の再現度を誇る魔法少女の衣装』を作ろうとしているようだ。
今日初めて水晶の『無理です、ごめんなさい』が見れるかも知れないね」犬か猫かはっきりしない使い魔は淡く光る水晶玉を見つめながら言った。
淡い光を放っていた水晶玉が突然活動を止めガラス玉のようになった。
しかしそれも一瞬の事で水晶玉はビームを俺に向かって放った。
痛みなどは全くない。
あるのは倦怠感のみだ。
使い魔は何があったのか理解したように「そっか・・・そちらを変化させればコスチュームは全くカスタマイズしないで済むのか・・・」などと言っている。
「説明しろや。
俺の使い魔なんだろ?
俺への状況説明は義務みたいなモンだろ?」
俺は使い魔の話は全く無視した癖に、「俺の使い魔なら俺に何でも話せ」とまるでジャイアンのような自分勝手な事を言った。
「だから戦闘衣装は全くカスタマイズされていないよ?
カスタマイズ0っていうのも珍しい・・・っていうか初めてじゃないかな?
君が無理難題を言ったから、水晶玉もそこはムキになって守ったのかもね。
でもカスタマイズされた箇所がないわけじゃないんだ。
カスタマイズされたのは・・・
君の性別だ」