電車編
今日も私鉄「城ヶ島電鉄」の投書箱には色々な投書があり、その投書に返事を書き、城ヶ島駅にその投書に対する返事を貼り出すのが「城ヶ島電鉄広報部」の仕事の一つだ。
「電車に託児所を設置して欲しい」
「電車が走っている時間が一時間を超えるのであれば、託児所も検討の余地があるのかも知れませんが、端から端まで行ったとしても45分です。
お子様はお父様、お母様とご一緒に電車に乗っていただければ幸いです」
「終電の時間を遅くして欲しい」
「出来る限り遅くまで電車を走らせる事につとめておりますが、我々も営利団体、一般企業でございます。
今より採算の取れない深夜時間に電車を走らせる訳には参りません。
また深夜時間に電車を走らせると沿線沿いに住まれている方々に多大な騒音被害を与えてしまいます。
残念ですが、その希望には応えられません」
「痴漢してくるオヤジを殺して欲しい」
「殺人罪でございます」
「中年の酔っ払いが女性専用車輌に乗ってきて『何でオメーらだけこんな空いた電車に乗れるんだよ?
俺ら男は知りもしねー親父と抱き合うように電車に乗らなきゃいけねーのによー』などと喚きながら女性専用車輌の一角を占領していました。
男性が女性専用車輌に乗った時の罰則を設けてください」
「残念ながら罰則は設けられません。
刑法に則っていない私刑は『リンチ』と見なされてしまい、一私鉄電鉄会社の立場では厳しい罰則は設けられないのが現場です。
ですが女性専用車輌の運行は我々、城ヶ島電鉄の意向であり、その運用を阻害する行為は『営業妨害』と受け取る事も出来ます。
女性専用車輌の運行を阻害する行為に我々、城ヶ島電鉄としても出来るだけ厳しい態度で望もうと思っております。
つきましては女性専用車輌のドアに女性でないと車輌の中に入れない装置をつけるつもりでいます」
「待ってくれー。
そのドアまだ閉まらないでくれー。
はぁ、何とか終電に乗れた・・・
・・・たく、俺の『終電を遅くして欲しい』っていう投書に対する答えが『それは出来ない』だからな。
急いでて女性専用車輌に乗っちまったけどしょうがないよな。
電車だったら250円の区間だけど、終電乗り逃してタクシーに乗ったら7000円はかかるからな。
何だよ、ジロジロ見やがってお前ら何か文句あるのかよ?」
酒が入っていて少し粗暴な言動をする俺に対して一人の老婦人が一喝する。
「文句?
ええ、ありますとも。
なんですか、そのだらしない服の着方は。
酔っ払っていても、ピシッと服くらい着なさい。
なんですか、その粗暴なしゃべり方は。
乙女の慎みを知りなさい!」




