VR編
「※キャラクリエイトし、アバターを作成する時、絶対にあなたのパーソナルデータを使用して下さい。
決して他の人のデータを使用しないで下さい。
もし他人のパーソナルデータを使ってトラブルが発生しても『日常オンライン』の運営は決して責任を負いません」
『日常オンライン』仮想現実空間で普通に生活していくだけのフルダイブ式のVRゲーム。
ダイブしている状態では五感、嗅覚や味覚すらも疑似的に感じる事が出来るのだ。
痛覚も感じるが、安全のためにあまりに強い痛覚を感じると、痛みを感じる前に強制的にログアウトする仕組みになっていた。
「果たしてこれはゲームなのか?」という人もいるがゲームだから出来る事、豪遊やイチかバチかのギャンブルなどもある。
「人生一度きり」と言うがこのゲームに参加するという事は二度目の人生を楽しむ、そして『人生のif』を体験する、という事で『日常オンライン』は地味に人気を博した。
でも「実体験ではない」「運営に対する営業妨害ではあるが、実際の犯罪よりも遥かに罪は軽い」という事でゲームの中で強盗やテロ行為や殺人をする者が多発した。
あまり何度も荒らし行為を繰り返す人物には運営が賠償を求める事もあったが、あまり裁判を抱えるという事は運営にとってプラスではなく運営はアカウントの停止をし、アカウントを停止された者は新たにアカウントを発行し、さらに荒らし行為をした。
そして荒らし行為を行う者は恨みを抱いている嫌いな者に似せたアバターをキャラクリエイトし、悪い事をして時に裸で外を出歩いた。
その対策として登場したのが、先述の「本人のパーソナルデータを用いたキャラクリエイト」である。
というか本人の顔をカメラで取り込んで、そして本物と寸分違わぬ顔がゲームの中でも再現されたのだ。
「誰がしたかわからないから」「顔が見えないから」いたずらや悪い事をする者も多く、自分の顔が表示されるようになると、途端に荒らしは減った。
だが荒らし自体を楽しんでいた者もいたのだ。
俺もその中の一人であった。
本人の顔がゲームの中で表示されるようになってから本当に悪戯がしにくくなった。
「どこかに『日常オンライン』の顔が作れるチートツール無いかな?」俺は呟きながらゲームの中の街角を歩いていた。
「チートツール、俺知ってるよ。しかも運営にまだ対策されてない安全なヤツ」耳ざとく俺の呟きを聞いていた男が言った。
チートツールと運営の対策はいたちごっこで、チートツールが生まれたと思ったら運営が対策し、運営が対策したと思ったら改造した新しいチートツールが生まれる。
俺はその男にチートツールが置いてあるネットアドレスを聞いた。
ツールにアクセスすると、電子音声が流れてきた。
「只今より『日常オンライン』の中で使用するアバターを作成します。
キャラクリエイトの元になる写真・画像データなどございましたら提示してください」
そんなモン事前に用意しなくちゃいけないのか。
何か使える画像データとか持ってたかな?
俺は手持ちの画像データを漁る。
画像は『笑える画像』『コラ画像』『変な画像』ばかりだ。
こうやって改めて考えると俺ってロクなモンじゃないな・・・。
いかんいかん、「これからアバターを作成して『日常オンライン』を荒らそうとしているヤツが荒らす前に自分のネットライフを反省してどうする?
俺は画像フォルダにあった売れないグラビアアイドルの画像データを提示した。
「何で?」と言われても使えそうな顔データがそれしかなかったのだ。
そのグラビアアイドルの画像データも「お、この子すごく俺の好み!」と延髄反射的にPCの画像フォルダに保存したモノで今の今まで保存した事すら忘れていた。
「では画像データを元にアバターを作成します。
このアバターは『日常オンライン』内であなた本人のアバターとして使用出来ます」電子音声は言った。
これは良い。
見た目グラビアアイドルの女の子が荒らし行為を行う・・・俺は想像して下衆に笑った。
俺はチートツールで作成したアバターで『日常オンライン』にアクセスした。
予想外だった・・・。
荒らしどころではない。
ここまで美女というのはブサイクな男にたかられるものだろうか?
そりゃアイドルが商売になるはずである。
これだけ人が集まってきて、人の目があるところで荒らし行為は出来ない。
悪い事をしたらすぐ捕まってしまう上に、証人も3ケタ以上いる。
・・・しょうがない。
路線転換しよう。
俺がこれから行うのは『荒らし行為』ではなく『姫プレイ』だ。
俺はこれからここにいるヤツらに貢がせて『美人がどれだけ人生イージーモードなのか?』を体感する。
※『日常オンライン』運営よりお知らせ
以前より皆さまの要望が高かった『アバターを変更するチートツール』への対応が完了しました。
現時点より、性別を偽る事は不可能になります。
角膜より染色体を判断し、X染色体の多さが確認された個体を女性、Y染色体が多く確認された個体を男性と判断し決して性別が偽れないシステムになります。
なお、現時点でアバターの性別と染色体の判断による性別に矛盾が出た場合、システムによる簡単な遺伝子操作が行われますが、それは遺伝子治療の域を出る物ではなく不確定な性別を固定させるための行為であり体に一切の害はありません。




