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製薬会社編

  俺は偏頭痛持ちだ。


  製薬会社勤務でありながら、偏頭痛持ちというのは少し言いにくい。


  デブに「この薬を飲めば痩せます」


  ハゲに「この薬を塗れば髪の毛が生えてきます」


  そう言われて説得力を感じるだろうか?


  同様に、製薬会社勤務のヤツが「偏頭痛だ」などと言うと「おい、あそこの会社の薬大丈夫かよ?効かないのかよ?」と思われるようだ。


  本当は関係ない。


  頭痛薬は起きた頭痛の痛みを抑えるもので頭痛の原因を治療する薬ではない。


  本当は関係ないのにまるで「医者の不養生」「紺屋の白袴」のように言われてしまう。


  それを薬品開発の同期に話したところ・・・


  「実は頭痛の原因を無くす薬はあるんだ」との事。


  「何でそんな良い物があるなら、販売しないんだよ?」と俺。


  「製薬会社にとって頭痛薬はドル箱なんだ。


  頭痛の原因がなくなった人はもう数年間は頭痛薬は買わないぞ?


  お前だって金のなる木を切って、それを売ってはした金を得ないだろう?」と同期は言った。


  「まあ気持ちはわからないでもないけど、頭痛持ちにとって頭痛は本当に深刻なんだ。


  その薬を売り出して欲しいとは言わない。


  俺だって製薬会社勤務なんだ。


  飯のタネがなくなるのは困ってしまう。


  だからその薬、こっそり俺だけに処方してもらえないか?」俺は同期に頼んだ。


  同期は困った顔をしたが、俺に赤と白のカプセルを一粒くれた。


  このカプセルを飲めば、俺は長年悩んできた頭痛ともおさらば出来る。


  俺は取る物もとりあえず同期の研究室を飛び出し、給水室でカプセルを飲んだ。


  



  「おい、もういないのかよ?


  まったく・・・どこいっちまったんだよ?


  はしゃぎすぎだろ、しょうがないか。


  あいつからしたら長年悩まされ続けた文字通り『頭痛のタネ』から解放されるんだから。


  副作用について説明しようと思ったのに・・・。


  ま、大丈夫か。


  副作用が出るのは百万人に一人って話だし、それに副作用が出たからって死ぬわけじゃないし」







  頭痛が収まった。


  薬でごまかしているんではなく、数年ぶりに頭痛が消えたのだ。


  こんなスッキリした気持ちはいつ以来だろうか?





  しかし、こんなにズボンが緩くて背広がブカブカだったか?


  そして、給湯室の鏡に映る、この小柄な女の子は誰だ?  

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