表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

オーナー現る

 早朝、ベランダのサボテンに水 (栄養剤入り)をやっていると、こんな時期だというのに、黒いスーツを身に纏った男が、通りを歩いて来るのが見えました。


「……オーナー様がおいでになられたか」

 

 彼は、このアパートのオーナーの黒闇さん。

いわば、所有者です。

今日は、例の件でおいでになられたのでしょう。

 しばらくして、私の部屋のチャイムがなりました。

じょうろをベランダの床に置いて、ドアへと急ぎます。


「黒闇様、おはようございます」


「ああ。 それより、家賃の方は集まっているか?」


 毎月この日に、先月分の家賃を黒闇様に支払う決まりになっておりますが、まだ支払っていない住民の方がおられます。


「102号室の令央さん、103号室の芋洗さんがまだ未納です」


 彼らはいつものことで、ちゃんと仕送りを貰っているのにも関わらず、遊びで浪費してしまうクセがあるみたいです。

黒闇様も、その2人に関しては十分理解されている、そう思っておりました。

ところが、


「今から24時間以内に、家賃を納めることが出来ないのなら、このアパートをとりつぶす」


 私は、耳を疑いました。


「……えっ」


「最近、とある建設会社がこの土地を欲しがっていてな。 破格の条件を突きつけられた。 すぐにでも売却したい所だが、私の独断でそれをやれば、ここに住む者の反発は免れまい。 だが、相手にも落ち度があるとなれば、話は変わってくる」


 家賃をまともに支払えないのであれば、アパートをとり潰す。

いささか、強引にも思えますが……


「……今日中に、家賃を支払えれば、問題はないかと」


「できるならな」


 フン、と鼻で笑った後、黒闇様は部屋を出て行かれました。

今日中に家賃を集める、と豪語したものの……

私は、一旦102、103号室を尋ねることにしました。






「令央さん、いますかー?」


 チャイムを鳴らしても、反応がありません。

まだ眠っているのかな? そんな風に考えていると、扉が開きました。

寝間着にボサボサの頭。

眠っている所を無理矢理起こしてしまったみたいです。


「……こんな時間に、何すか」


 私は、先ほどの件について、説明しました。


「マジ!? 金、ねーよ」


 ねーよ、と言われましても。


「ご両親に相談されてみては?」


「無理だって! 仕送り止めるって話も出てんだ。 山猫さん、立て替えといてくんね?」


「それはできません」


「……だよな。 俺だって、他人の家賃なんて払いたくねーし。 分かったよ、何とかする」


 令央さんは、そのまま部屋へと戻って行きました。

次は、芋洗さんですね。


 




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ