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Face of the Surface

蒼炎のウィールライダー

作者: 悟飯 粒

アースクルセイドの隠れ家を見つける部隊と初めて合流したその日の夜。飯田(いいだ)狩虎(かこ)は1人でとある谷に向かっていた。


「たっく……こんなところに目当ての魔物がいるのかね?」


スカラさんに「次のステップに行くために、この谷にいる輪入道(わにゅうどう)と戦え。」と言われて来てみたのだが………何もないし、いないじゃないか。


周りには小川がチロチロと流れ、光が入ってこないせいか枯れている木々が数本あるだけ。こんな所じゃ熊だって冬眠しないね。

つーかカースクルセイドな。アースクルセイドって………エヴィーデーイアイリッスントゥマイハート………あ、ジュピターかこれ。


腰につけている剣を掴みながら、周りを見渡す。

大体、次のステップがあるということに驚きだよ。あの、魔力を膨張させるってだけでも凄いのになぁ………あれを続けてやっていくと魔力があの大きさに固定されていくらしい。つまり、使い続ければ俺の水の魔力は強化されていくのだ。………強すぎるだろ。これの上って………


ボッ

周りを見ながら進んでいくと、明かりが見えた。人工的ではない。炎のような………焚火か?

ボォオ

焚火にしては炎が大きい。

おっと………まさか輪入道か?確かあいつは輪木に火がついている妖怪だもんな。


俺は魔剣を引き抜き警戒を強める。


ボォオオオ

近づけば近づくほど荒々しく燃え上がる音が大きくなっていく。キャンプファイアーの火力なんてとっくに超えいる。


ボォォオオンボォォオオオオン!!!


そして完璧に視界に捉えた敵のフォルム。

炎で燃え上がる2つの車輪。

黒光りするフロントフォーク。

赤と黒と白によってデザインづけられたフレーム。

空気を完璧に流すことができるであろう、シャープなスクリーン。


「…………」


そしてそれに跨る、漆黒のスーツを着た男。顔はヘルメットをつけているせいで見ることはできないが………ゲレンデマジックと同じ現象だ。勝手にイケメンだと想像してしまう。


………ゴーストライダーじゃねぇかぁあ!!!


ブルルルンン!!!ブルルルンン!!!………ブゥゥウウウウンン!!!


輪入道だと思われるライダーが、炎に身を包んだバイクのトルクを跳ね上げエンジンをふかしていく!!

マフラーから吹き出る炎とスス!!それに触れた草木が枯れていく!!


「…………」


ブォォオンン!!!

跳ね上げた回転数の元、敵は急発進し俺に向かって突っ込んできた!!


「やっぱこいつが!!」


俺は思いっきり地面を蹴って右に避ける!!

……ダメだ!!相手の動きが速いからこのままじゃ当たる!!


ビチャッ!!

顔面に攻撃が来ることを予測し、顔面を水で覆った!!そうすることで俺の顔を掴もうとしていた敵の手を少しだけ弾き、なんとか避けた!!


ギャルルルル!!!

俺を掴み損ねた敵は、左足を軸に車体を回転させ再度こっちに正面を向けて来る!!


この世界は西洋かぶれだと分かってはいたが……お前まで、お前までか輪入道!!お前車輪ごときで良いのかよぉお!!


「「回ることこそ我が宿命。恥などない。」」


バイクの車輪から2つの声がハモって聞こえた。

お前ら喋れんのかよぉお!!九尾の時といい、これもう、かぶれているとかそういうレベルじゃなくて、妖怪が隷属させられてんじゃねーかよ!!


ズズズズ…………

輪入道に跨っているライダー(これからはウィールライダーと呼ぶ)の腕から水が溢れ出した。

水?……輪入道なのに?


ブシャァアアア!!!

フィールライダーの右手から、レーザービームのように発射された水の束!!


やっ……べぇ!!!


サッ

ズシャアアア!!!

自分の体に潜り込むように頭を伏せることでかろうじてかわした水のレーザーは、壁を勢いよく貫いていった!!


バシャバシャバシャ!!!

そしてその隙をついてウィールライダーは輪入道を走らせ、水を跳ね上げながら突っ込んで来る!!


二度も………

俺は伏せた勢いをそのまま利用し、右手で剣を引き抜きながら体を回転させた。


同じ手をくらうかよ!!!

ブン!!

回転させることで上段に来た右手を思いっきり振り下ろす!!!


バシャン!!!

すると、敵の前に水の盾が出現し、それによって剣の動きが鈍った!!


「やっ……」


ドゴォン!!!

敵はぶつかる瞬間に車体を上げたようだ。下から打ち上げられるように攻撃をくらい、俺は空高く吹っ飛ばされた!!


ガガガガ!!!

俺は吹っ飛ばされ、この深い谷の側面に叩きつけられたが、その崖を手で掴み静止した。その時に結構指が削れてしまった。しみていてぇ!!


ボォオオオオ!!!!

下にいるウィールライダーが纏っていた炎が青色へと変貌した。

………あいつまさか、俺の魔力を取り込んでいるのか?ちょっと待て………もしそうなら………なんて奴を戦わせてんだあの人は!!


バン!!

俺は急いで崖を蹴って、敵の元に突っ込んだ!!

水の魔力はまだ発達していないからそこまでの障害にはならない!だが、炎の方はダメだ!!マジでダメだ!!急いで倒さないと!!


風をきるように急降下する中、俺は魔剣に炎を纏わせウィールライダーの胴体めがけて突き刺した!!


ドォオオオン!!!

今の攻撃の一撃で地面が吹っ飛んだ!!

………いや、違う。突き刺しで地面が吹っ飛ぶなんてありえない。今のは、敵の、車輪の回転の衝撃だ!!


ギュルルルル!!!ギュァアンン!!!

俺の攻撃を瞬間でかわした敵は、すぐさま方向を変えて、タイヤで踏み込む地面を吹き飛ばし巻き上げながら俺に突っ込んで来る!!速さがさっきの比じゃない!!俺の炎を燃料にしているのか!!


「フン!!!」


ビュっ!!!

俺は魔剣を振って敵に斬撃を飛ばした!!


ギュギュッ!!ギャリン!!!

しかし敵は巧みなハンドルさばきと重心移動により細かに方向を変え、体を傾け斬撃をかわしきる!!


かわされたが、狙い通りだ!!これによって敵の体勢は倒れた!!ここからはもう、かわせな……


ギャラルルル!!!

バギィン!!!


敵に向かって剣を振り下ろした瞬間、敵はエンジンを最大出力でまわし、後輪を前に出した!!前マフラーから吹き出る青い炎が渦を巻くように、前輪を軸にしてバイクが廻る廻る!!

その後輪を右手にモロに受け、俺は剣を手放してしまった!!

いっだぁあ!!!………ああ!!手首が変な方向に曲がってんじゃねーかよクソォ!!!


ボォオンン!!!

そして、バイクが前輪を地面に叩きつけた瞬間、青い炎が爆発して周りにいる俺や枯れた植物達を吹き飛ばす!!


ガン!!!

そしてまたまた壁に激突し、今度はめり込んでしまった。


………やべーな。相手の魔力は[相手の魔力の性質を奪い取る]というものだ。水の魔力を奪った状態で俺の炎の魔力を奪ったということだから、[自分の奪う魔力は上書きされない]らしい。………なるほど、次のステップが少しだけ見えてきたな。


ゴォオオオオ…………

俺は体を青色の炎で燃やしながら、壁から抜け出た。


ドゥルルルン!!ドゥルン!!ドゥルン!!


「……………」


真っ青なエンジンをふかし、無言でこっちを見つめてくるウィールライダー。青色の光の中で輝き続ける真っ黒に光り続けるボディー。………カッコいいな本当。


「………かかってこいよ。火力対決といこうじゃないか。」


ダッ!!!

俺は駆け出した!!奴をスピードに乗せたらいけない!!加速のための距離を縮めなくては!!


ギャルルルル!!!バキバキバキバキ!!!

敵もまた、タイヤで炎を上げながら俺に向かって突っ込んできた!!青色の炎を置き去りにするかのように、バイクから溢れ出る炎がスピードに負けて後ろに流されていく。青い炎の弾丸………これじゃあ完璧に加速しようがしまいが大して変わらないじゃないか!!


「吹っ飛べ!!!」


ゴォォオアアア!!!

俺の手から放たれた真っ青な炎の塊が、敵を飲み込んだ!!!その巨大な炎は周辺の崖やら山やらの側面を消しながら上空へと巻き上がるように登っていく!!!


ボッ!!!!

しかし、敵はその炎の塊を突っ切ってきた。からめとろうと必死にしがみつく炎達を、自慢の速さで置き去りにして、その食指を引きちぎる。


ゴリュッッ!!!


前輪が顔面にどストライクした。


ズガガガガガガガガ!!!!

ドォオオオン!!!


そのぶつかった衝撃で、俺は吹っ飛ばされ、山を貫通し突き抜けた。


「…………」


ウィールライダーは、敵が倒れたことを視認し、この広い世界をひとっ走りしようとバイクの向きを変えた。今回の戦いで得た上質な魔力は何物にも代え難い力を生み出すからだ。この速度で走れば、どれほど心地よいだろうか。誰にも囚われず、誰もが追いつかないこの速度で走れたなら…………


プルンッブルンブルン!

内心ホクホクしながらウィールライダーはエンジンをふかした。しかし、出るのは赤色の炎だけ。


「………?」


訳が分からなくなって額に手を当てると、ビチャッとした音が。


「…………?」


不思議に思って、その手のひらを見てみると………真っ赤な液体がベチャッと、手のひらに満遍なくついていた。


「!!!」

「どう、ビックリした?」

「っ!!!」


ボォォオオオンンン!!!

狩虎は敵の体を掴み、そのまま炎を放出した!!

その威力によってウィールライダーと山1つが跡形もなく消し飛んだ。


「意識しないと触れたものを自動で奪ってしまうっていうのはネックだよな。」


最初にあいつが水の魔力を奪ったのは、水の魔力に触れたからだ。その後俺の体に触れて、炎の魔力を得ていた。魔力を奪うのには優先順位が決められていたのだろう。

それを利用し、ペイントの魔法を作り出して敵に触った。そうすることで敵の奪った魔力はペイントに変わったのさ。あの額の赤い液体はただの絵の具。


俺は顔面を回復の魔法で回復させながら、近くに落ちていた剣を拾った。

魔力の膨張で階級を高めたとはいえ………やっぱすげー痛いな。確実に仕留めるためとはいえ、無理しすぎたか。


だがしかし、少しだけ何かを掴めたような気がした。………変わらなくてはいけないのだ俺は。殺すだけじゃない、守ることができる力を得なくては………


ポツ……ポツポツ………ザアアアア………

戦いのせいで降った雨の中、俺は1人、ウィールライダーの単車を押しながら帰っていった。

この場をお借りしてウィールライダーの説明をば。

・輪入道を車輪としたバイクに乗っている魔物がウィールライダー。ちなみに車輪の輪入道は喋れる。

・車体は黒を基調としたものだが、所々赤と白の線が流動的に描き込まれており、スピード感を演出している。また、輪入道がコンセプトであるため、車体は赤い炎で燃え上がっている。総合的に見てかっこいい。

・ウィールライダーの魔力は[奪取]。バイクや体で触れた相手の魔力の性質を奪い取るというもの。

・しかしこの魔力の発動には優先順位があり、

①触れた魔力を自動的に取得する。

②触れた相手の魔力を選択して1つだけを取得する。

の順番で自動で発動してしまう。ただし意識すると順番を無視できる。

・その為本編では、狩虎はペイントの魔法を気付かれないように相手に触れさせ、魔力を上書きした。

・本当は小細工など使わずに、力でねじ伏せることが出来たのだが、そうすればあの地域一帯が消し飛んでいたので自重した。

・その後、あの単車は狩虎の所有物となり、時たま快活なエンジン音が夜の埠頭で聞こえる。


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