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桜人 ―― 源氏異聞  作者: 塔真 光
第8章 かぐや姫
103/160

8-11

「もっと時間をかけて聞きだしたほうが、よかったのではないですか? 源君とかいう人物のこととか、大学のキャンパスや道路でなにを探していたのかとか……」

 高田は、カフェを出ていっしょに営業所へもどる道すがら、おそるおそる三田に意見を述べた。

「悠斗くんたちは、シロって言ってましたよね。木を見あげて呼んでいたから、イヌではないと思いますが……」

 高田の問いかけに三田は、

「鳥だろ」と、

立ち止まらずに素っ気なく答えた。

「たしか四日まえ、藤原さんが飼っているブンチョウに、おまえ、出町柳駅でフンをプレゼントされたのだろ。きっと、そいつだ。一条戻橋ではサギに(がん)をつけられ、出町柳ではブンチョウ、それに今日のタカか……。おまえ、やけに鳥に好かれているな」

「そうなんですよね……。おれ、晴明神社で厄払いをしてもらおうと思っています。先輩もいっしょに行きませんか? 今回の仕事がうまくいくよう、願かけしましょうよ」

「神頼みね……」


 ますます素っ気ない三田にむかって、高田はしゃべりつづけた。

「おれ、今回の仕事をきっかけに、できる男になりたいんです。だから安倍晴明に、もうひとつ頼もうと思って……。努力するから後押ししてくださいってね。これだったら、苦しいときの神頼み、ってことにはならないでしょ」

 三田はにわかに、からかい顔を真剣な顔に変えた。

「今日の監視は、おまえに全部まかせたほうがよかったか?」

 そう問われ、高田は押し黙った。そこまでの自信はなかった。

「まぁ、今のおまえなら、まかせてもよかったのだがな……。だがな、スマートフォンもメガネも壊れたから、けどられないように悠斗くんのあとをつけるのは、おまえだけでは無理だっただろう。おれが出ていって、おまえのことを悠斗くんにしらせる良い潮時だとも思ったのだ。それに、根掘り葉掘りたずねて怪しまれると、このさき面倒になりかねない」

「かんじんなときにミスってしまい、もうしわけありません」

「なんども謝らなくていい。――悠斗くんは、ボンヤリしているようで、あんがい、頭の回転が速そうだった。だから深追いを避けたのだ。一宮って子は、少年陰陽師もコスプレという言葉も知らなさそうだったから、おまえが言うとおり、平安時代からタイムワープしてきたのだろう。それなのに悠斗くんときたら、平安貴族の服を着て肌感覚から勉強するなんて、うまい説明をすぐに思いつくもんだ」

「そうですよね。悠斗くんは先輩とおなじぐらい頭がいいし、口もうまい」

 高田がなんとはなしに言った最後の言葉に、三田はわずかに眉をひそめた。

「おまえが壊したスマートフォンは、会社からの支給品だ。弁償してもらわないとな。特注品だから、月給の半分は、かるくとぶだろう」

 ――そっ、そんなぁぁ……。


 情けない顔になった高田に、三田はさらにたたみかけた。

「しっかり仕事をするつもりなら、鹿に追いかけられるのが怖いから吉田神社には行かない、なんてもう言うなよ。こんかいは大目に見て、悠斗くんたちが吉田神社からもどってくるのを京大の正門で待った。だが、源氏物語の新帖にかかわる秘密が吉田神社に隠されているなんてことになれば、神社に足を踏みいれることになるからな。また異次元空間に入る覚悟も、しておけよ」

 高田は、ますます情けない顔で、

「はい……」と、

かぼそい声をだした。

「そ、そのときは、先輩もついてきてくれますよね……」

「ふたりとも異次元に入ってどうする! 万が一の場合を考え、おれはこの世界で待機しておく必要がある」

「万が一、って……?」

「悠斗くんたちが異次元からもどってきても、おまえがもどってこられず行ったきりになる場合だ」

 ――そっ、そんなぁぁ……。


 しおれきった高田を尻目に、三田は、立ち止まって悠然とスマートフォンを取りだし、画面に目をむけた。

「悠斗くんが店を出たようだ。出町柳駅へむかっているから、このまま鞍馬へもどるのだろう。もうすぐ日没だしな……」

 三田は、ふたたび歩きだすと言葉をついだ。

「今夜も、悠斗くんの部屋を探ってみよう。悠斗くんはリュックサックをだいじそうに膝に抱えていただろ。おまえの推測どおり、なにかを手にいれたのだろう」

「はい……」

 高田は、心ここにあらずな声で返事をした。

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