表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奥さまは魔王  作者: 匙足有珠
婚約者は魔王編
4/14

新婦は新郎の親御さんに挨拶をしました

------ Sara Side ---------------------


「ダーリン君との結婚、ママは許可します!」


 ママがダーリンと転移でプレイルーム(・・・・・・)消えてから三〇分ほどで戻ってきた。

 途端ママはダーリンの手を取ってそう言い放った。


「超!応援しますっ!」


 …何があった?


「本当ですかタァバサ様?」

「本当よ。ついでに正気よカルカル!私ダーリン君大変お気に入りになっちゃいました。寧ろ私が結婚したいくらい」

「わぷっ」


 ご機嫌なママはダーリンに抱く。僅か三〇分で何が起きたの?


「一体何があったの?」


 ダーリンに尋ねてみると。


「いや、ただ話をしていただけなんだけど、突然気に入られた…ぽい?」


 と言った返事しかしてくれない。ダーリン自身理由を理解してないご様子だ。


「ママも独身だし~、あと二〇年若ければ本当に私が結婚したいくらいなんだけど、愛娘に譲ってあげる~」

「はぁ…」


 上機嫌なママ。色慾の魔王(ラスト)を譲ってから重荷から解放されたとばかりに機嫌が良かったけど。正直ママを説得するのに決闘紛いな事をして二日三日快癒できないくらいたたきのめす覚悟でいたのだけれど、存外呆気なく認められてしまった。

 ややこしい事態にならなかったから良かったけれど。


「サラさん!」

「ん?何ダーリン?」

「俺、まだ童貞だから安心して!」

「ホントに何があったの?」


 結局ママもダーリンも細かい話はしてくれなかった。


----- Hitoshi Side --------------


 タァバサさんの了承を頂いたら流れ的に次は俺の両親となる。

 俺は現在両親の家に住んでいる。俺の実家は東京ではなく、学校も他県から早朝電車に小一時間揺られて登校する。

 一人暮らしの魅力もあったが馬鹿に高い学費を出してくれている身でもあり、なんとか通学も可能ということで実家暮らしである。


 結婚とかしたら今まで住んでいた我が家ともお別れしなければならない訳だけど、ちょっと現実味が湧かない。かれこれ二〇年住んでいる我が家だからなぁ。

 とは言え、どちらにしても来年の春から都内の会社勤めになる俺は近い内に家から出て行く予定である。


「ふむふむ、なるほど頭に魔力を集中させると速度あがるのかぁ…」

「…まさか生身で旅客機を真横から追い抜く日が来るとは思わなかったよ」


 色慾城と我が家はずいぶんと離れている。色慾城は東京の東側にあるのに対して我が家は西側にあるわけだ。

 

 それを「パッと行く」みたいなノリで移動しました。

 具体的に言えばサラさんが俺を抱きしめ飛行魔法で上空を高速移動した。電車だと上手く乗り換えができても二時間以上掛かってしまうのだが、一〇分くらいで着いた。時速何キロ?


「どうダーリン。カルジンのやっていたことを参考にしてダーリンの周辺に魔力の膜を作って私の魔力を遮断してみたんだけれど体調は平気?」

「う、うん。魔力的なダメージはないけど生身で空中移動したの初めてだったから…ははは」


 正直滅茶苦茶恐かった。某漫画で空を飛ぶ武術なんかあって憧れていた記憶もあるけど、実際体験してみると半端なく恐い。というか人体が耐えられないくらいの速度で移動してた気がするけど細かいこと気にしたら負けなんだろうか?


「それなら安心。で、とりあえずダーリンの住所付近に着たと思うんだけど、ここらへんわかる?」

「あぁ、わかるわかる。ここね。俺が二年前まで通ってた高校のグラウンドだわ」


 見覚えのある校舎を見て直ぐに気づいた。俺とサラさんを中心に地面が若干クレーターになってるのはこの際気にしないで置こう。

 ある意味すごいお礼参りである。時間的に授業中かと思ったけれどよくよく考えれば本日は土曜で休みだろう。グラウンドでは野球部が休日返上で練習をしていたようで、突然隕石が如く現れた俺達を凝視している。ついでに言えば結構近くに部員の子が腰を抜かして怯えてさえいる。あと数メートルズレてたらこの子死んでたな。良かった良かった。


「ここからそう遠くないよ。安全に(・・・)歩いて行こう」

「そう、また飛ばなくて良いの?」

「うん、歩いて行こう」


 放心している野球部員たちをスルーして俺達は懐かしき校舎をあとにする。

 正気に戻った顧問の先生から説教なんて聞きたくないし、説教相手の一人が新魔王だから先生の命の保証もできない。こういう場合は逃げるが勝ちなのだ。


 サラさんと他愛ない会話をしながら我が家の前に到着した。

 正直、憂鬱だ。

 本日休日ということは恐らく我が家には両親が在宅中だ。いや、サラさんが両親に挨拶するために着てるんだから在宅してないと困るんだけれど、正直帰りたくない、親父に会いたくない気持ちでいっぱいだ。


「そういえばダーリンの両親ってどんな人?」

「変な人」


 サラさんの問いに即答する。変な人、それに尽きる。


「君と変わらないって事ね。オッケー」

「えっ!?」


 大変心外な事を言われた。俺の両親、特に父親に比べれば俺なんて常人も常人だ。


「えっと、なんというかサラさんに結構失礼なことするかもしれないんですが、一応俺の親なんで…殺したりとか止めてくださいね」

「ん?大丈夫、そんなつもりもないよ。ここまで歩いてる最中すれ違ったおばあちゃんとか爆散しなかったでしょ?」

「…そうでしたね。お気遣いありがとうございます」


 二人でてこてこ帰宅路を歩いている間。歩道で数人すれ違い、車道を走る車は算えられないくらい行き交っていた。その内誰もが今朝の俺のように汚い花火にはなっていなかった。偏にサラさんが魔力を抑えている状態だからだ。

 仮に抑えていなかったら彼女の軌跡は屍で彩られる形になる。なにその天災?


 隣にいる魔族の女性はやろうと思えば周囲の人間を刹那の速さで血祭りに出来る。

 その事実は恐ろしい。今は大丈夫だが、どのタイミングで掌が返るかわからない。


 生きてるのに、生きた心地しないなぁ。


「とりあえず、入りますか?」

「うん」


 深呼吸をして玄関の戸を開ける。


「ただい――」「この親不孝者がっ!!!」「ぎゃっ!」


 ドアを開け片足を家に入れた瞬間、土間で待機していたのであろう人物が俺の顔面に強烈なパンチを放ちおった。思い切り外に吹き飛ばされる。


「あっ、顎ぅ…」

「仁志…まさか連絡もなしに朝どころか昼帰りとは。二十歳(はたち)になり就職内定が決まった途端この体たらく。私はお前をそんな息子に育てたおぼえはないぞっ!」


 玄関で(恐らく俺が帰宅するまで)待っていた俺の親父 忠野良一が仁王立ちで俺を見下ろしている。滅茶苦茶顎が痛い。恐らくガチな一発をお見舞いしてくださったご様子。

 いつも親父の暴力はほぼほぼ全力だからな。


「貴様という奴は専門学校に入ってからというものチャラチャラしだしおって、私と母さんがどれほど心配したと思っている!母さんなど心配しすぎて『今日は家事したくない』と今も布団から出てないんだぞっ!」

「ぎゃーっ!」


 怒り心頭な父は俺に乗りかかり完璧なマウントポジションを取ると両腕で容赦なくパンチを繰り返す。

 どうでもいいが、母親が布団から出ないのはただ家事が面倒なだけなのはほぼ間違いない。

 俺は父の連続パンチを両腕でなんとかガードする。


「ダーリン、その人敵?」

「うおっ!?誰だ君っ!?」


 先程から俺の後ろにいたサラさんの発言に父が声を上げて驚く。


「いえ、これが父でふ…」

「なるほど、お義父様ね。これはじゃれ合ってるの?」

「じゃれてもないし合ってはないです。一方的にボコられてるだけ。親父、どいておくれ」

「何を言う。あと一〇〇発はお前の顔面にお見舞いするつもりで玄関待機していたんだぞ?」


 知らんがな。


「で、誰だこの巨乳美人は?同伴か?」

「息子が連れてきた女性がそっちの人と決めつける父とは…えっと、婚約者です――あっ!」


 また殴られた。


「すまん、父ちょっと難聴のようだ。なんと言った?」

「くっ、だ…だからフィアンセって――なっ!ぶねぇな!」


 またストレートパンチを放たれたが流石に避ける。


「狂言も大概にしろ、目を覚ませ!お前に婚約者なんてできるわけないだろう!戯けがっ!彼女にお金支払ってるんだろう?店に行ったりしてるんだろ?」

「行ってねぇよ!どんだけ息子低評価?俺自身信じられないけど本当に婚約者なんだよっ!」

「……」


 俺が声を上げると父は押し黙る。また突然拳が飛んでくることに警戒していると、不意に父の双眸から涙がこぼれた。その眼球で矢鱈尊そうに俺を見つめている。


「えっ、ガチ泣きっ!?」

「か、母ぁさん仁志っ、仁志があっ!!」


 感極まった父は母を呼びながら家に入っていく。放置されるはボロボロな俺と鎖骨をマフラーで隠しているサラさん。


「あれが、日本人の父親か。面白いね」

「いや、ウチのはちょっと変なタイプ。とりあえず、家に入ろうか?」

「うん」


 土埃を払ってサラさんと実家に入る。正直なところ色々と疲れたので自室の布団に引きこもりたいところなのだが、サラさんを両親にしっかり紹介しなければならない。

 サラ・ラスト・リリステレス。今日から魔王になったらしい俺の婚約者を。


------------------------


「つまりそちらの女性が今日ニュースでやっている新しい魔王様で」

「ふぁ~っ…仁志くんはその方とご結婚するって?」

「うん、そうなる…らしい」

「初めましてお義父様、お義母様。【色慾】の新代魔王サラ・ラスト・リリステレスです。ダーリンの妻になります」


 リビングのテーブルを囲む俺とサラさんと両親。俺は疲れた表情をして父は怪訝な態度、母親は図太く未だに眠たそうに眼を細め婚約者だけが堂々と挨拶をする。


 母は若干緊張感が欠落しているが、父の態度は正常と言って良いだろう。目の前にいる女性が魔王だというのだ。

 真偽が定かでないにしても父が警戒をするのは当然であり、必然だ。

 こんな素敵な(鎖骨をした)女性が魔王であるなんてすぐ信じれるわけもない。

 はぁ家の中に入ったお陰でサラさんはマフラーを外し鎖骨がお見えになられた。


 嗚呼ありがたや~ありがたや~。


「ひ、仁志よ。一つ確認して良いかな?」

「ん?なに?」

「わ、私たちは…この人…いやこの御方にどう接すれば良いのかな?」


 父はサラさんをチラチラと見ながら俺に尋ねる。


「どう接すればって?」

「なんか粗相したらその時点で殺されたりしない?」

「……ダイジョウブダヨー」

「なんだその信頼性ゼロな生返事は!?殺されるのか?殺されちゃうのか?」

「大丈夫、細胞さえ残ってれば木っ端微塵に吹き飛ばしても再生させることが出来るってサラさん言ってるよ?半殺し?」

「それを大丈夫と言えるとは私たちの息子も随分図太くなった…全然大丈夫じゃねぇよ!漏れなく一回死んでるじゃねぇか」

「仁志くん、母それすんごく痛いと思うんだけど?」

「うーん、痛いとかいう概念で言い表せて良いのかな?あれ」

「「経験済みなの!?」」


 俺のあっさりとした返答に両親は驚き互いに身を寄せる。


「ど、どうする母さん。仁志の奴一生童貞じゃないかって心配していたがまさかこんなとんでもな女性を連れてこようとは。あいつ間違いなくおっぱいにつられた口だぞ…」

「そうねぇ。嫁姑問題この時点で姑完敗決定なのよねぇ…イエス姑になるしかないわ~」


 などと言った密談を二人でしているわけだが、正直俺達にも聞こえる。

 失礼な親だ。おっぱいでなく鎖骨に惹かれたというのに。


「ゴホンっ…あ、あの…、サ、ササササササラさん?」


 父、気持ちはわかるがビビりすぎである。


「なんですか?」

「な、何故息子なんでしょうか?仁志はびっくりするほど凡人の筈ですが」

「そうですねぇ~私たちが残念に思うくらい残念凡人ですよ?」

両親(あんたら)の本心はよくわかったよ」

「組の者にも言われたのですが、強さって、結婚に必要な要素なんですか?」

「「「……」」」


 サラさんの一言に俺等家族は押し黙る。


――魔王には必要なのでは?


 と、言う揚げ足は自重して、きょとんとしたサラさんの表情はどうも本心で言っているらしい。若干照れる。


「ま、まぁ良いんじゃないのかな?私は二人の意志を尊重するのが一番だと思うぞ?なぁ母さん(死にたくない)」

「ふぁ~そうねぇ~ふたりともおめでと~(死にたくない。眠い)」


 ん~不思議だなぁ~両親の副音声が聞こえてくるぞ~。

 まぁ、かりに両親だとしても我が身大事なのは仕方のない事だろう。この両親にハートフルな期待はしてはいけない。

 しかし、母せめて起きてくれ。

 

 とにもかくにも両親に挨拶をして了承を得た。

 この後如何するべきか、昼食でも一緒にすれば良いの?


 徐々に気まずさを感じていると玄関のインターホンが鳴る。


「あら、誰かしら…」


 そう呟く母がのそのそと玄関へ向かう。


「そのなんだ…サラさんは魔王ということですが、仁志はどうするんだ?」

「どうするんだって?」


 沈黙に耐えかねたのか父が話題を振ってくる。流石社会人。


「魔王の夫と言うことは普通の生活はできないんじゃないか?」

「……ん?そうなの?」

「ん?お義父さんの言う普通の生活って?一日三食?」


 親父の問いに俺はサラさんに聞き返したがサラさん本人首を傾げる。


「いや、学校行ったり…春になったら俺会社に入るんだけど?」

「あれ?ダーリンって色慾城に住むんだよね?」

「ん?」

「あれ?」


 ここに来て二人の解釈に差異があることに気づく。いや、元々気づいていたのだけれど明確化していなかった。


「色慾城に住む?…俺住んで何するの?学校とか仕事に行って良いの?」

「え?さぁ?」

「さぁって、魔族特区って気軽にお出かけしていいんだっけ?」

「特区自体外国扱いではありますが、日本の一部という扱いにも成っておりますのでパスポートなどは不要で一般市町村と変わらず行き来が可能です、ただ色慾城在住となると話は変わってきます」


 俺の疑問に答えたのは聞き覚えのない男性の声だった。


 振り帰ると玄関に向かった母と先程も会ったカルジンさんに、見知らぬスーツを着た男性が立っていた。恐らくこの男性は日本人だ。短くそろえた黒髪に社会人でない俺でもぱっと見で高そうと思える上質なスーツを着こしちゃんと直立、よくよく見れば片手に持ったアタッシュケースも高そうだ。

 この男性の第一印象を一言で言うのなら『出来る男』もしくは『エリート社蓄』と言ったところだろう。

 で、どなたじゃろ?


「サラ様、お連れしました」

「初めまして魔王リリステレス様…。そして忠野仁志様。私は外務省系列魔族交流対応機関【絆機関】所属の巻子真二郎と申します。本日付で仁志様の補佐官の任に就くこととなりました。以後よろしくお願いします」


 一歩前に出たスーツの男性。巻子さんは簡潔な自己紹介をして俺達に一礼した。


 ん?俺の補佐官?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ