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奥さまは魔王  作者: 匙足有珠
婚約者は魔王編
2/14

新郎はプロポーズの言葉を覚えていません

 『漫画が描けないからラノベ作家目指しました!』って潔く言える人間はどれだけいるんだろう?その内の何割が『こんな作品がアニメになるなら俺の考えた物語もなるだろ』って舐めた発想によるモノなんだろう?


 なんてわけのわからん現実逃避に浸りたくなるくらい今、忠野仁志()はよくわからない展開に陥っています。


 前回のあらすじ的なノリ状況を整理するならこんな感じだ。

 昨日友人達と就職内定記念の飲み会を行った鎖骨フェチこと忠野仁志は滅茶苦茶美しい鎖骨をした美女と出逢う。

 美鎖骨の魅惑に負けた仁志はその女性と二人きりで食事をし、あわよくば酔った勢いで童貞卒業を目論んでいたが飲み過ぎがたたり意識を失う。目が覚めると二日酔いの頭痛も忘れるような強面魔族おじさんの大群に囲まれ四方八方からメンチを切られる始末。もしかしてウインクを切られるかも知れないが、逆にそっちの方が恐い。

 そして、その空間に一際派手で悪趣味な玉座に座っていたのがファー付きのマントを纏った鎖骨の君。

 彼女は愉快そうに仁志に所有物になれと告げてきた。


 この状況から言えることはただ一つ。


「なんで鎖骨隠してるの(ファー付けてるの)おおおおおおおおおおおおおお!!!?」


 俺は眼に涙を浮かべながら声を上げる。


 待って、本当に待って!どういうこと?どうしてマントなんて羽織ってるの?

 玉座に座る彼女のマントから覗かせるスカートを見るに俺が意識が飛ぶ前に着ていたドレスの上にマントを羽織っている。

 どうして羽織った?どうして鎖骨隠す!


 嗚呼、月はお隠れになった。


「ん?どうした?」


 俺の心情など知る由もない彼女は不思議そうに俺を見つめる。


「よくわからないが、あんまり奇行はとらない方が良い。ウチ(・・)の連中気が短い奴が多いから、下手したら後ろ髪じゃすまないぞ?」


 彼女の言葉と共に俺の襟足が若干涼しくなる。


「え…?」


 振り向くと眼前に刀のように鋭利な爪があり、俺の黒髪が空中に散っている。

 え、切ったの?俺の後ろ髪切ったの?


 爪の主は滅茶苦茶怒りの形相をした獣面した魔族で、その魔族を双角の美形魔族が片手で押さえている。


「落ち着きなさいラララーバラ。この御方にお嬢をどうこうできる力はありません」

「グウウウウウウッ…。退けいカルジン!我は未だこの話に納得したわけではない!!この男さえ死ねばお嬢もお心を変えてくださるだろう!」


 獣のような魔族はなにやら俺を殺そうとしているようだが、美形の魔族がそれを制止しているようだ。どうやってあんな細身で巨体の動きを止めてるんだ?


「周りにいる同胞も気持ちは同じ、よりによってこの世界の人間などをお嬢の側に置くなど正気の沙汰ではないっ!貴様とてそう思っているのだろう」

「たしかに、私の見識眼で見てもこの御方は平凡も平凡な日本人です。お嬢のモノでなければ鼻で笑い。脳みそグチャグチャにかき混ぜて遊んでもえるゴミ箱に棄てるところです」

「なればっ!」

「いけません。この御方はお嬢、サラ様が決めた御方です!」


 顔面蒼白の俺の背後で睨み合ってる二人の魔族。

 これってアレですよね?美形魔族さんが止めに入らなかったら、俺の後ろ首ぱっくり切れてたって話ですよね?殺されてたって話ですよね?


「ラララーバラ、やめて」


 そんな恐ろしい魔族だが、鎖骨の君の一声でその鋭利な爪を納める。


「お嬢。お考え直しください!こんな男と添い遂げるなど、色組(・・)になんのメリットもありません」

「はぁ…だから言ってるでしょラララーバラ?メリットとかの話じゃないの。なんとなくダーリンが良いと思ったの」

「な、なんとなくぅ~?それはっ!単なる気の迷いですっ!!貴方は今まで特区以外の世界を見てこなかった!人の思考を知らなかった故に物珍しさから惹かれているだけ、それだけでこんな矮小な生物と――」


「ラララーバラっ!」


「「「「っ!!?」」」」


 彼女の怒気を孕んだ一声の刹那、この空間の空気が()ごと変わる。

 薄暗いながら広い空間が一転し朱く染まり、空間が、空気が圧縮されている感覚。

 あんまり経験はないけれど、これに似た感覚を知っている。これは濃い魔力に中てられてるのだ。


 魔力。


 詳しくは知らないけれど、本来異世界にしか存在しない元素と対なる究極要素──魔素の集合体。


 異世界人が異世界から訪れたと同時にこの世界にも微量ながら魔力が発生したとか、基本的には魔素を取り入れ運用する器官を有した異世界人しか扱うことができない。


 その異世界の存在だけが持ち合わせていると言われる魔力は、大きくなるとその性質によって色が付き空気中が色づく。

 おまけに魔力は圧力となり体勢のない人の心身に負荷を与える場合もある。


「ぐぼっ!?」


 こんな風に。


「あ、いけない!」


 大きすぎる魔力にパンピーの俺は、広い部屋の色調が狂うほどの魔力に耐えきれず、口や耳といった穴から血を噴き出し倒れた。








----- Sara Side -------------------------


「本当に脆いんだね。人間って」


 ベッドに寝かせている私の婚約者を見つめながらそう呟く。

 場所は先程いた謁見の間から私の私室に移っている。


 ラララーバラを黙らそうとちょっと(・・・・)魔力を放っただけなのに、ダーリンの身体はその圧力にすら耐えられなかったらしい。至る所から血を噴き出して倒れてしまった。


「当然です。サラお嬢の魔力は群を抜いておられます。魔力を内蓄している異世界(我らの故郷)の人間ならまだしも、素養がない(・・・・・)この世界の住人がサラお嬢の魔力に耐えられる道理はありません」


 幼い頃から私のお目付役兼執事兼側近のカルジンが私の言葉に小言を放つ。

 今この私室にいるのは三人だけ。ラララーバラを初めとした他の幹部魔族達は一旦下がらせた。


 魔力に耐えられなかったダーリンは穴という穴、そして関節部からも鮮血を噴き出してその場に崩れ落ちた。幸い再生魔法(・・・・)が通ったので一命は取り留めたけれど正直こんなに脆いとは思っていなかった。


「先程日本政府(・・・・)に彼の身元の確認と、これからの準備を取り計らって貰っております。式などは…婚約者様とお決めになられますか?」

「ええ、そうね」


 輸血されたばかりの若干青ざめたダーリンの頬をなでる。少し伸びている髭が指を擦りこそばゆい。


「サラお嬢、どうか落ち着いてお聞きください」

「……」


「私も長年色慾城、そしてリリステレス家に御使いしておりますので、一家の事を思えばラララーバラ達の考えに共感いたします。王位継承されたばかりのサラお嬢が力を持っていない日本人を夫として迎えようなど、他の魔王たちから舐められてしまうのは必然。ただでさえ我々が領地としている日本は小さな島国。おまけにこの国は自ら戦争は起こさないと公言しています。他の大陸の魔王から見れば弱小と思われていますので」


 幼い頃からカルジンには世話になっている。理屈っぽいところもあるが、大概は正論だ。


「我々にとってお嬢の御意志は絶対です。そうお嬢がお決めになられたのなら我々に拒否することはできません。このカルジンもこちらの御仁を主人として奉仕させて頂きます」


 そしてカルジンは私を言いくるめるのも上手い。


「ただ、お考えください。この先貴方の側におられる御方が魔力に耐えられないほど脆弱な人間という事、今し方ご覧になられたでしょう。この御仁が鮮血を撒き散らし、糸の切れた人形のように醜く崩れ落ちる様を」


 一見私の味方っぽいカルジンも、ラララーバラ達と同じで私とダーリンの結婚に反対をしている。というか私とダーリンの結婚を応援している同胞なんていない。ただ私の性格をしるカルジンは、頭ごなしに反対しても納得しないとわかっている。だからカルジンは醜く崩れ落ちたダーリンという結果を見せ私に再考させようとしている。厭らしい奴だな~。


 カルジンの意見はもっともだ。実際穴という穴から鮮血を噴き出して、惨めに倒れた肉塊を見た今では彼の意見に耳を傾けずにはいられない。

 ぶっちゃけ本当に脆い。あまりの脆さに彼が倒れてから数秒間私たちは何が起きたかわからず放心してしまった程だ。

 私でなくても幹部の魔族が魔力放出するだけでやられちゃうんじゃなかな?

 

 普通に考えればこんな弱者私の横に置くべきではない。


「カルジン達の言い分はもっともだ。彼はこんなにも脆い」


 それは事実で、否定できるモノじゃない。それでも…。


「それでも…、私はこの人と結婚するわ」

「ーっ!?」


 そういう理由じゃない。そういう理由でこの男に惹かれたわけじゃない。そんな理由で日本を滅ぼす事(・・・・・・・)を止めた訳じゃない。




 昨夜、私の問いにダーリンは答えた。それは私の世界を大きく変えるほどの(言葉)だった。

 彼の生まれた育った日本を滅ぼすことを止めたくなるほどに、この人と常日頃共に過ごしたくなるほどに。


 生まれてこの方、彼処まで感情を掻き立てた言葉はなかった。

 


 

 アレはきっとプロポーズだったんだ。




 意志の堅い私は彼の顔をいじくっているとカルジンは暫く黙ってから溜息をつく。


「……それでは、旦那様(・・・)抗魔晶(ラクリマ)のアクセサリーでもお持ちになって頂きましょうか?」

「カルジン…?」


 意外なカルジンの提案に私は驚き彼の方に顔を向ける。


「言ったはずですよ。私はリリステレス家に命を捧げる身。色慾の魔王(リリス)たる貴方の堅い決意からなる意向であれば、私にこれ以上の反論はございません」


 常に澄ました顔のカルジンはスーツを整い直し入り口の方へ向かう。


「ありがとう。カルジン」

「一向に構いません」


 カルジンはドアノブに手を当てたところでその動きを止める。


「実際の所、貴方が選んだその方は幾許の高位魔族を夫に迎えるよりも質が悪い。地獄よりも地獄を味わう恐れすらあります。それは既に覚悟されているのですね?」

「えぇ、勿論」


 カルジンの問いにベッドにどっしりと構えた私は堂々と肯定する。


 最弱の夫を迎えることで恐らく予想以上に面倒な魔王生活になる。


 ちょっと考えただけでも面倒な顔が幾つも上がってくる。それでも彼に引かれた事実は変わらない。

 


「はぁ──結構です。では手始めに(先代様)を自力、いえお二人(・・・)で言いくるめてくださいませ」


 そう言い残しカルジンは私の私室から去って行く。

 やはり、それが第一も関門なのだろう。最初から難易度高いな~ホント。



「うぐぅ…」


 若干途方にくれようとしたところで、背後から呻き声が漏れる。

 どうやらダーリンがお目覚めのようだ。


 さぁ最弱な旦那様。これからのことを決めましょう?







--- Hitoshi Side -------


 目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。


 俺は寝心地が程良いベッドに仰向きで寝ており、シンプルな模様の天井が目に映る。


「お目覚め?ダーリン」


 何処だ此処?と内心思っていた矢先に聞き覚えのある声が俺の傍らで囁いてくる。


「おおぅ!?」


 視線をずらすと俺の横に鎖骨の君が寝そべっていた。

 よくわからないが俺のあごや頬を撫で繰り回している。

 流石に伸び出してきた髭が彼女のきめ細かい指と擦り合い思いの外心地良い。


「あー、えっと…んん?」


 なんだろこの嬉し恥ずかし展開。

 目が覚めたら美女が俺の傍らで添い寝していたとか、童貞の夢展開じゃねぇか!!

 よくわからないけどありがとうございますマジで!


「身体、何処か違和感ある?」

 

 鎖骨の君が艶のある声で尋ねてくる。耳元で囁くのは反則だと思います。


「え?違和感?」


 違和感?違和感…あー違和感かどうかわかりませんが、もしかして俺の右肩にあたってるベリーベリー柔らかい感触っておっぱいですか?身じろぐ振りをしてもうちょっと密着しても良いですかね?


「えと、多分平気?かな?…あぁ少し頭痛いかも…」


 アルコールが俺の脳を揺さぶっている感覚がまだ抜けていない。

 昨日思いの外飲み過ぎてしまっていたみたいだ。


「頭に痛みがあるの?ごめん。しっかり再生魔法つかった筈なのだけれど依然と違うのかな?」


 鎖骨の君はそう言うと俺の頭をなで始める。

 先程からされるがままなのですが…まぁなんというか幸せです。


 夢なら醒めないで欲しいな~……本当にね。


 いやほら、実際の話。ばっちり…記憶覚えてるんだよね。

 俺が膨大な魔力に圧殺される瞬間を。


 本当に怖気が走った。

 圧倒的な魔力に耐えきれなかった俺の身体はまず内臓が破裂し、気道へ逆流した血液で息も出来ず、さらにさらに体内にある血管が膨張し破裂。激しい痛みのあまり失神してしまった。失神と言うより一瞬にして致死量の失血してショック状態になったんだろうなぁ。


 刹那の地獄を体験してしまった。


 不思議と身体については痛みは感じないが、いわゆるトラウマ染みた痛みの記憶ができてしまった。


 さっきのヤーサン魔族に囲まれた場面を丸々カットしてくれないかなぁ。


 ①鎖骨の君と酒とお好み焼きを楽しむ→③目を覚ましたらベッドで鎖骨の君と寝ている。こんな感じ。

 ①実際は鎖骨の君と酒とお好み焼きを楽しむ→②強面魔族に囲まれて俺ボディ四散→③目覚めたら――。


 真ん中っ、②要らないよ~本当に要らないよ~。

 出来ることなら、このベッドイン展開で俺が童貞卒業したのかしてないかで悩みたかったよ~。絶対童貞のままだよ~。それどころの話じゃないよ~。


 ていうか再生魔法って何ぃ?我ながらあの状況ほぼほぼ手遅れな状態だった気がするんだけど?


「あの…正直、状況が掴み切れてないんだけど?」


 強面魔族に囲まれていた時なにやら色々言われていた気がするが全然記憶にないわ。


「ダーリンが魔力で赤いボロ雑巾になった理由?」

「いや、そのダーリンの(くだり)からかな?」


 そうだ、俺は先程目覚め(がしら)に彼女から堂々と求婚っぽい事をされていた記憶がある。

 いや、所有物になれって意味かもしれんけど、なんかダーリン言われてるしあの台詞は求婚なのだろう。


 仮に鎖骨の君から求婚なんて考えれば、幸せ以外の何物でもない…と言いたいところではあるが正直なところ引っかかっている点がある。

 彼女の名前である。

 

 彼女は…鎖骨の君は俺に求婚した際、自身をサラ・ラスト・リリステレスと名乗っていた。


 さて此処でこの世界の常識を一つ公開しよう。

 ラスト・リリステレス。この名前はあまりにも有名で、端的に言えば日本に滞在する魔王の名前です。はい。


 おかしいな。再生魔法とかいうのかけて貰ったはずなのにまた口から血を吐きたくなってきたぞ?


「君、魔王なの?」

「そうだよ」


 あっさり肯定しましたねこの子。つまり俺は魔王に求婚されたわけである。


「……夢か、寧ろ夢であれ」


 俺は身体を楽にして目を閉じる。再び目を開ければ我が家のベッドで目覚めるわけである。


 そんなわけなかった。目を開ければ見知らぬ広々ベッドで美少女(自称魔王)と添い寝という図が出来上がっている。


「…というか、日本の魔王って別の人じゃなかったっけ?」


 彼女の見た目に魅了されてずっと見ていたらふと気づく。

 俺の見たことのある魔王ラスト・リリステレスは彼女と似ているもののどこか違いを確信させる。

 日本の魔王ラスト・リリステレスは平日の昼にレギュラー番組をもつ程テレビ露出が激しい魔王だ。ついでに肌の露出も滅茶苦茶激しかった。

 故に男性層に人気があり女性層には不人気なのはもはや日本の常識でぶっちゃけ国民が彼女の存在を見間違うはずはない。


「それはその通りだよ。先代ラスト・リリステレスは私のお母さん、タァバサ・リリステレスだもの」

「あ、お母さんなの?なるほど、それは納と――…先代?」


 親子関係ということに納得しかけ、彼女喋ったある言葉にひっかかる。


「そ、今日から私がこの色慾城の主。ラスト・リリステレスになったの」

「……Today?」


 どうにも俺が酒で意識跳んでた間に世界が変わってしまったらしい。


「え、その、君のお母さん…先代さんは?」

「ん?普通に生きてるよ?今は魔王業から解放されたから『連日、ホストクラブ巡りするから』って言ってどっか行っちゃった」

「あ、そう…ですか…」


 魔王()ですか。


 そんな呆けた感想しか口から出せない。

 予想はしていたが、先代魔王は私生活でも滅茶苦茶自由人のようだった。テレビで見たときもかなりのフリーダムだった印象がある。

 

 サラ(彼女)の言葉を鵜呑みするつもりはないが、恐らく彼女が魔王というのは本当なのだろう。


 先程目覚めた場所は恐らく謁見の間的な場所みたいだったし、俺に取り巻いていた魔族共は、一見人族女性にも見える彼女をすこぶる慕っていた。

 一介の魔族ではあんなに慕われることはないんじゃないだろうか。


 納得するしかない。彼女、サラ・ラスト・リリステレスは魔王だという事実を。




 …で、俺がその魔王様に求婚されてる事実に戻るわけだが。

 

「結婚式ってのがあるでしょ?いつやろうか?」


 はっきり(心の中で)言おう。滅茶苦茶嫌だ。

 いや、嫌だとかそういう次元の話じゃないだろ。無理だ無理。実際問題不可能。


 ちょっと彼女との夫婦生活を脳内シミュレーションしてみよう。


 浮気した→俺、汚い花火。

 約束やらルールを守らなかった→俺、汚い花火。

 よくわからないけど彼女を怒らせた→汚い花火。

 俺が怒った→ボンっ!(返り討ち)

 

 汚い花火になる末路しか想像できない。夫婦になっちゃいけないパワーバランス!


 事実としてさっきだって鮮血プシャーで血みどろボロ雑巾だったわけである。

 俺の未来に死しかない。魔王様は結婚式とか言ってるけどお葬式の聞き間違いかな?

 無理だ無理、俺魔力全くないもん。下級魔族だったら友人にもいるけど、そいつ等と魔力の総量が違うって実際味わってしまった。

 彼女の魔力が空気と混ざり俺を覆った瞬間、「あ、死ぬ」って自然と死を悟れたくらいだ。


 断るべきだ。断ったら殺されるかもしれないけど、同じ事である。

 叔父が言っていた。夫婦生活なんて毎日が喧嘩みたいなモノだと。


 俺の命が『死亡なう』になるか、数日後に延期するかの違いである。


 因みに延命した場合、いつ殺されるか毎日ひやひやビクビクして、心までやられるんですよね。わかります。


 ここは男らしく。断るべきです。


 俺は君の美しい鎖骨の記憶を胸に逝かせて頂きます。


「あ、あのさ…」

「ん?」


 意を決してお断り(自殺)をしようと思った瞬間、俺の信仰する神が悪戯をしてくださいました。


 彼女が身体を捩るとマントがはだけ、おっぱい様の上には美しい美しい鎖骨様が…。


「ハネムーンとかも考えなきゃだね☆」

「おお、そうだねダーリン!」


 ふぇ~鎖骨には勝てなかったよぉ~。


 だって、どうしようもなく素敵な鎖骨なんですもん。勝てるわけがない。

 これが鎖骨神(かみ)の悪戯って奴か。なんという絶対力。

 こうなったらやることやるしかない。

 せめて汚い花火になる前に一発くらい男の花火を上げるしかない。



 そう、童貞卒業っていう花火をね! 



 なんで魔王様が俺と結婚する気になったのかとか全くわからないけれど、そんなこと考える余裕なんてない。


 しかし、夫婦と言うことは雄蘂と雌蘂を凸凹合体させても良いはずである。

 魔王なれど、これほど鎖骨の美しい女性が童貞卒業の相手となれば俺史を締めくくる出来事にしては正しく出来過ぎである。


 どうせ無い命と思えばやってやれないことは無いのではないだろうか?


 そんなことを考え出したら途端やる気がでてきました。

 

 息子よ。俺、頑張ります!


「あ、とりあえずダーリンの名前聞いて良い?」

「えー」


 いや、名乗らなかったっけ?名前も覚えてない男を夫に迎えようとするとか、新しい魔王様の器計り知れないなぁ~。

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