カウント6
------ Caster Side -------------
『俺達は、捨て駒じゃない。皆日本人なんだ』
遂にこの時が着てしまったと思う。あいつのあの言葉から数年。私達【対魔王戦小隊】が結成されて数年。
我々の存在理由は日本国に存在する【魔王城《色慾城》】に対する防衛武力。日本防衛省内でも独立した【ブレイヴァーズ】と呼ばれる魔力による武力に特化した特殊部隊の一小隊だ。
小隊名とコードネームに不真面目さは見え隠れするが、気にしたら負けなのだろう。
私の小隊は普段一般人として生活し、指令が下れば普段の生活を擲って任務を行わなければならない。
普段会社勤めをしているメンバーは板挟みに会うところだろうけれど、私の生活で言えばそこまで関係はない。
「は…はい。よ、余裕ですよ。明後日までですよね?ちょろいちょろい。なはははは」
任務があろうと無かろうと、たぶん私は今回の締め切りを落とす。いや、たぶんじゃない絶対にだ!
締め切り落とし常習犯の私を警戒して担当編集者がこの日三度目の連絡をくれる。
朝一連絡してくれた時と深夜である現在の進捗がほぼほぼ進んでないのだが、そこは報告していない。
したら缶詰にあう。一時間もしない内に家のインターホンが鳴る。
いつもなら胃の痛くなる状況なのだが、今回はそうでもない。なぜなら今回は私には国を護るという任務割り込みそのせいで原稿どころではない!と自分に言い聞かせられるのだ。
実際のところ編集側には私の仕事…本業は伝えてないので、締め切りを落として良い理由にはならないのだが、ここは一つインフルエンザということにでもしておこう。再来週辺りには『休載のお詫び』が誌面上に載るだろう。ドンマイ。私ドンマイ!
真面目かつ正直な話、指令が下ったとなると仕事に時間を割くことができない。
パソコンデスクに座った私は立ち上がっているパソコンと手元にあるタブレットの画面を真剣に眺める。パソコンには今回の任務の詳細、タブレット画面にはある地域の地図が表示されている。本日原稿は広げていない。
地図は伊豆半島周辺である。
今回の任務、実施日時にはまだ数日ある。ただ、その間にも私達は事前に準備を始める。
特に私のポジションはその一番準備を必要としていた。
――海岸に面しているからやっぱりそれを利用した結界を作るべき?それとも地熱を利用した解除の難しい特殊結界…。
パソコンとタブレットの画面を忙しなく視線を移動させる。
私の役割は作戦中よりその前準備の方が重要だ。その善し悪しで任務の出来が大いに変わるといって良い。
それだけに他のことに気を回す暇も無い。
「…やっぱり明日現地に行こう…」
集中したせいで疎かになっていた息と共にそう呟く。
地図だけでは決められる物ではかった。直ぐに現地へ飛ぶための手はずを調え始める。
私がミスするわけには行かない。私の仕事は十全でなければならない。そんな念を常に抱く。
失敗したくない、誰も死んで欲しくないのだ。
私達対魔王戦小隊は一度しか任務が発令されない。
二度目は存在しない。二度目があるはずがないからだ。
魔王討伐と謳われた任務の実、私達の生存有無は考慮されていない。
対魔王戦小隊は銃弾などの消耗品に等しい存在だった。
それでも私達はあいつの言葉を信念にして行動するのだ。
「私達は…人間だ」




