表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お題掌編

掌編――蝉

作者: と〜や

 蝉が鳴いている。網戸にしがみついて。

 すぐ近くにクスノキがあるんだから、そっちに行けばいいのに。

 網戸をはじいてみた。

 蝉は短く鳴いて飛び去った。

 やれやれ、これでおちついて昼寝ができる。

 そう思っていたのに、うとうととし始めた頃、また至近距離で聞こえた。

 枕から顔を上げると、二匹に増えている。

 もう一度はじいてみた。

 二匹の蝉はやはり短く鳴いて飛び去った。

 なんでわざわざうちのマンションの俺の部屋の網戸を選ぶんだよ。

 庭の木で十分だろ?

 網戸になんか樹液はないんだからさ。

 仕方がないから窓を閉めてエアコンをつけることにする。つけっぱなしで寝たら寒くなりすぎるからあんまり好きじゃないんだけど仕方がない。タイマーかけて、扇風機も回して、ようやく横になる。

 夢の中でも蝉が鳴いている。夏だから仕方がない。と思ったら目が覚めた。やっぱりすぐ近くでみんみんと鳴いている。窓は閉めたから聞こえてくるはずがないし、どこにいるんだ。あまりに近すぎて、どこから声が聞こえるのか分からない。でも、部屋の中にいるのは間違いない。

 念のために殺虫剤を手にすると、その瞬間だけ蝉の声が途切れた。

 じじ、とこすり合わせるような声が聞こえた方角を見上げ、俺は言葉を失った。

 天井が、透ける羽で覆われていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ