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白へ飛ぶ

作者: 西おき

お題:戦争とにおい 制限時間:1時間

 灼熱の空を滑空する。はばたく翼は煤汚れ、今は無残に黒かった。

 下方では大砲と銃声。獣の足音、唸り声。黒の爆炎。人間と獣の断末魔が大地を満たしている。

 鼻が効かなくなるほどの死のにおいに目眩を覚えた。


 悲しい。


 焼け焦げて見る影もない草原を見下ろす。

 耳に入る音も目に映る景色もすべてが黒々として汚らしい有り様だ。

 私が愛した大地は争う生き物よりも一足はやく死を迎えようとしているのかもしれない。

 ただ豊潤なこの大地で、生き、育み、繋いでいきたいだけであったのに、それを望む種族があまりにも多すぎた。狭い器に溢れかえった者たちで、今や世界は器ごと崩壊しようとしている。

 涙があふれた。感情は混迷して整理がつかない。だから空へ流れていくのは、ただ焼けるように熱い腹部に反応して流れる生理的な涙でしかないのだった。


 萎える翼を必死で動かし、とめどなく流れる鮮血を振りまきながら私は逃げた。

 死に向かう喧騒と臭気が充満する戦地から、音のない白地へと。

 耳鳴りと共に白く染まる世界は懐かしい情景を連想させた。

 今や夢にしか思い出せない世界。瑞々しく香る草原の風を感じ、晴れ渡る空を太陽へ向かって飛んでいくかつての自分。


 目の眩むような自由を感じながら、私は白の世界へと飛び立った。

 

 

 




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