表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
胸の傷と心の傷  作者: 乙女一世
99/100

第99話:結婚式

その日は、スカイブルーの空に、太陽がまぶしい朝でした。


病院の屋上ガーデンに、用意された誓いの場。


そう、ここは、親友の涼子と智子が、一生懸命に準備してくれた、


私と隆志のための手作りの結婚式場。


進行役は、自慢のおしゃべりで、涼子がしてくれています。


沢山の花が飾られて、壇上には十字架が掲げられ、智子が得意の腕を振るいエレクト


ーンを演奏しています。


神父さんが、現れて、いよいよ結婚式の始まりです。


病院の入院患者さんやスタッフの方々が、沢山の拍手で、私たちを迎えてくれました。


夢にまで見たウェディングドレスを着て、兄に支えられて歩くバァージンロード。


立っているのもやっとの私でしたが、せっかくのウェディングドレスです、車椅子から


立ち上がり、1歩1歩ゆっくりと、松葉杖を着きながら神父さんのもとへ。


車椅子の隆志と向き合い、誓いの言葉。


緊張の瞬間です。


神父さんが、口を開きました。


[中根隆志は、青山遥を生涯妻とし、幸せや喜びは共に分かち合い、


悲しみや苦しみは共に乗り越え、永遠に愛することを誓いますか?]


『誓います。』


額に汗をかき、声が微かに震えています。


[青山遥は、中根隆志を生涯夫とし、幸せや喜びは共に分かち合い、


悲しみや苦しみは共に乗り越え、永遠に愛することを誓いますか?]


「誓います。」


嬉しさのあまり、元気良く答えて、周囲の笑いを誘いました。



指輪の交換。


一緒に買いに行くことができず、インターネット販売で決めた指輪。


中央にハートが彫ってあり、周囲にはV字カットが施されている私のお気に入り。


そして、私が彼の車椅子の横に膝を着いて、人前で初めての熱いKiss。


晴れて、私たちは、結ばれました。


兄が用意してくれた台に吊るされた本物の鐘の音が、天高く響き渡り、クラッカーが


次々と音をたてて、皆が作ってくれた紙吹雪のアーチとライスシャワーをくぐり、


拍手で迎えられました。


隆志が、お礼の言葉をしっかりと述べて、私が続きました。


この時、隆志は、私の耳元でささやきました。


『待たせて、悪かったな。』


そう言うと、さっと私の手を取り、指にダイヤモンドの指輪をはめました。


『けっして、お前だけ一人に、寂しい思いはさせないよ。』


「えっ? 婚約指輪? 何やってんだよ。順番、逆だよ。」


皆から笑いと拍手が沸きあがりました。


やっと貰えた隆志からの婚約指輪。


私は、とてもうれしくて、はじけてしまいました。


そして、1週間掛けて作ったブーケを思いっきり、青空に放り上げました。


ブーケは空高く上がり、太陽と重なり、魔法がかかったように光り輝きました。


前に同じ病室だった女子高生の友香ちゃんが、受け取りはしゃいでいます。


このガーデンで、お友達になった妊婦の亜実さんも、大きなお腹を抱えて、笑顔で


迎えてくれました。


母も兄も泣いて喜んでくれています。


隆志のお父様、お母様も、心に思うことはあるのでしょうが、快く許してくれました。


こんな幸せなことはありません。


今日まで生きてこれて、良かった。


本当に良かった。



(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ