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胸の傷と心の傷  作者: 乙女一世
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第92話:二度の手術

点滴を始めて3日が経ち、針が抜かれて、ホッとしたのも束の間、その効果を見るために


3日後に、また検査です。


検査ばかりで、もう、うんざり。


でも、逃げ出すことも出来ずに、もしかしたら、少しは良くなっているかもしれない


なんて、甘い期待もほんの少しいだきながら検査の日を迎えました。


嫌な検査も我慢して、何とか1日が終わりました。



そして3日後、先生から説明があり、残念なことに点滴の効果は無い事が分かりました。


『手術をしましょう。


カメラを入れて患部を見ながら、直接細胞を取って検査した方がいいでしょう。』


チューブを入れる為の穴を開けるだけなので、傷は痕にはならずに治るそうですが、


私は、手術をすることが、先生の口から告げられるとさすがにショックでした。



手術の日がやって来ました。


手術着に着替えて、麻酔を掛けられると、全ての思いは闇の中へと消えてゆきました。



麻酔から覚めると、切った所が痛くなって、じっとしていられなくなりました。


思わず手をお腹に当てようとしたところ、私の手を誰かが握っていることに気が付きました。


目を開いて、横を見ると、翔太でした。


『痛むのかい? 今、看護師さんを呼ぶから。』


彼はそう言うと、コールボタンを押しました。


『頑張ったな。きっと良くなるからな。』


「うん。」 つい、私は、素直にうなずいていました。



5日後、母と兄を交えて、先生から説明が有りました。


『見たところ、全体がかなり腫れて、硬くなっていました。


数箇所から細胞を採って検査をしたところ、膵炎と判断しました。


今後の治療ですが、点滴を続けて体力の回復を待って、再度手術を行います。


炎症のひどいところを切除して、それにともなう十二指腸の障害を回避するための、


バイパス手術と、胆嚢と腸をつなぐ胆管のバイパス手術を行います。』



「えっ? また、手術するんですか?」


手術をすることになるとは思っていましたが、つい言ってしまいました。


『傷は、なるべく目立たないようにします。どうしても、やらなければならない


手術なので、我慢してください。』


私は、この時の母と兄貴が、ほとんど発言しなかったのと、2人の表情が終始浮かな


いままだったことに、違和感を覚えていました。



2度目の手術は、前回と違って、大変そうな手術です。


「胸の他に、傷が出来てしまう。」そう思うと憂鬱な日が続きました。



そして、1週間後に、手術を行いました。


私自身は、眠っていたので、分からなかったのですが、


前回の検査のためのような手術と違い、長い時間の手術となりました。


目が覚めると、前回よりも激しい痛みが襲ってきました。


手を動かそうとした時に、前と同じく翔太が、手を繋いでいました。


『痛むかい? 代わってあげたいけど、俺には何も出来なくて、ごめんな。』


「ん〜ん。」


あまりの痛さのため、それ以上は、言葉になりませんでした。



(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)



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