第87話:翔太の秘密
「見たまま、感じたままを、正直に言って。
嫌いになったら、それでいいんだよ。
嘘は、絶対に嫌だよ。」
翔太は、すぐに、私に抱きつき、私をベットに倒しました。
『遥を、嫌いになんてなる訳ないじゃないか。
もっとひどい傷だと思ってたし、全然平気だよ。
それどころか、遥のからだ、きれいで、魅力的だよ。』
「ありがとう。」
私は、張り詰めていた緊張から解放されて、涙を流してしまいました。
『大丈夫かい?』
「うん。うれし涙。積極的で平気そうに見えただろうけど、
結構、限界ギリギリだったんだ。」
『そんなこと、分かってるよ。
ごめんな、気を遣わせて。でも、うれしいよ。』
そして、彼は、私を愛してくれました。
自らの服を脱ぎ捨てて、私とひとつになりました。
私は、幸せを感じて、翔太となら結婚してもいいなと、思った矢先、
彼の動きが止まりました。
そう彼は、すぐに一人でいってしまいました。
私は、アレ?っと思って、彼の顔見ると、
翔太は、深刻そうな顔をしていました。
私は直感的に、彼が元気が無かった理由はこれだと解りました。
でも、私は、明るく振舞いました。
自分が、気にしていることを責められることが、どれだけ嫌な事か
身をもって判っていたし、たった今、私のからだを綺麗だと言ってくれて、
不安を取り除いてくれたのですから。
それに、胸の傷のせいでHに興味を持たない私にとっては、正直、
彼が上手いか下手かなんて、気になりませんでした。
『ごめん。』
「別に、謝らなくたっていいよ。」
彼は、そのあと、何度か続けましたが、やっぱり同じでした。
『ずーっと、好きでしかたなかった遥が、やっと許してくれたのに、
俺って本当に駄目だよな。俺のこと嫌いになっただろ?』
「何言ってるの。こんなの全然平気だよ。
私のこの胸見ても、好きでいてくれる翔太を、嫌いになるわけないじゃん。
きっと私が、魅力有り過ぎなんだよ。フフフッ。
いつもの翔太のように、元気出して。」
落ち込んでいる翔太を見ていると、このまま帰路について別れるなんて、
とても出来そうにありません。
「ねぇ。遅くなっちゃったし、このまま泊まっていかない?
あした、ズル休みしちゃえばいいじゃん。」
『いいの?』
「うん。翔太と一緒に居たいもん。」
そして、私は元気の無い彼を、包み込むようにして眠りました。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)